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メキシコ #4 / 大人の秘密基地m


風が随分と強い日で、ビーチ日和ではなかったけど、とても綺麗だった。

パッと左側を見ると、少し離れたところでデザイナーのマークジェイコブス風の男性がものすごくカジュアルに全裸で雑誌を読んでいる。まだ免疫のなかった私はここがヌーディストビーチであることを理解するのに、一瞬考える必要があった。

よくよく見たらあっちの女性もこっちの女性も、荒れた波に打たれている正面の女性も、トップレスだ。人生初のヌーディストビーチ。

おおー。

全然否定はしないしないけど、先ほどの男性がウェイターに何かをオーダーしている姿を見て、2人のコントラストの激しさが滑稽に見えた(笑)

しばらくすると部屋の準備が出来たということでエンジェルが迎えに来た。またあのツリーハウスのような廊下を通って敷地の奥に進んでいく。

部屋はヴィラになっているため、部屋というよりは家のようで、例えるなら超ゴージャス大人バージョンの秘密基地。それをいくつか超えて、私たちの部屋に着いた。

それはほぼガラスでできていて、ざっくりしたすだれのようなものがかかっているけど、外から中は十分見えるし、なんなら隣のヴィラの人と目があってお互いニコッとしたくらい。

ガラスの扉を開けて一番最初に目に入ったのは、部屋と同じくらい広さのあるバルコニーの先に見える海。(というか扉を開ける前から見えてた) Sea Villaという名の部屋は、文字通り海の目の前で、部屋のどこにいても海が見える。

外階段を使うと部屋からそのまま海に入れるようになっていて、波の音が部屋の中にいてもしっかり聞こえた。

普通のホテルとは違う仕様になっているため、エンジェルが一通り説明してくれる。「まず部屋には電気がないの、夜はロウソクの火を私たちが着けに来るから、それでロマンチックな夜を過ごしてね。テレビはもちろんWi-Fiもないから、この自然と会話を楽しんでちょうだい。

エアコンもないけどベットの上には扇風機があるから暑かったらこれをつけるといいわ。コンセントはこの2つだけ。シャワーはないからこのバスタブにお湯をためて、この半分に切ったココナッツで湯浴びしてね。

ルームサービスは24時間あるけど、部屋に電話はないから紙にオーダーを書いて、この木のボールに詰めて外にあるダストに入れてくれたら私たちに届くようになっているから。

一通り説明は終わったけど、なに分からないことはある?」

ここに泊まったことのある友達からある程度前情報をもらってたからそこまで驚かなかったけど、こういうホテルだってことを知らないで来た人は相当びっくりするはず。私たちは逆にその不便さを楽しみにしているところもあったから夜が楽しみだった。

なにがともあれ早くあのバルコニーで海が見たかった。エンジェルが部屋を出て行くと、真っ先にバルコニーへ。荒々しくても海はキラキラしていて本当に美しかった。風がワンピースを揺らし、太陽は優しく体を温めてくれる。

どこまでも平和で、このままずっとここに居れたらいいのにと思った。

荷物が来るのを待って敷地内を散策に出た。この不思議な場所に、ただ歩いているだけなのにまるで映画の主人公になったみたいな気分になる。“ワクワクする”という言葉がピッタリだ。

歩いていると従業員が何人か上を見上げていて、私達に木の上を指差すと見たことのない動物がこっちを見ている。(今調べたらあれは多分スローロリスだったと思う)

敷地内は意外と複雑で、私達はすぐ迷子になり、それを何度か繰り返した。エンジェルの最初の説明で「迷子になったらここを目指すといいわ」と言っていたエンジェルたちが常在するベースすら見つけられなくて、「迷ったのかい?」と何度もホテルの人に助けてもらった。

宿泊の初日は私たちからウェルカムドリンクのプレゼントがあるから、6時にレストランに来てねと言われ、それまで少し時間があったから外に出てみることに。

カンクンではずっとホテルの敷地内で過ごしたし、トゥルムまでの道のりでも街を見ることはほとんど出来なかったから、その土地のカルチャーや街並みを欲していた。


続く。

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