時間切れ!倫理 40 ストア派
(ア) 禁欲主義
こういう傾向のなかで、ヘレニズム時代からローマ帝国時代の代表的な哲学となったのが、ストア派です。ストア派の創始者はゼノン(前334生?)。以前に出てきたパルメニデスの弟子とは同名ですが、別人ですから注意してください。
ゼノンは、哲学の勉強のためにアテネにやってきて、犬のディオゲネスの哲学にも影響を受けたようです。が、彼ほど極端にはなりきれなかった。しかし、発想は近いと思います。
ストア派は禁欲主義とされます。特徴としては「不動心(アパテイア)」が挙げられる。心を動かさないことです。これが禁欲ということなんだ。
このグループは幸せのために欲望を抑える。なぜか。心が惑うことが不幸だと思っているからです。だから心が惑わないようにグッと自分の欲望を抑える。そうすると心が動かなくなる。アパテイアは「情念がないこと」と書いてあります。なにか非情な感じがしますが、正直私はそれに近いと思います。なにか心が凍りついたようなイメージがある。
(イ) 自然にしたがって生きる
それからスローガンみたいなものですが、「自然にしたがって生きる」「理性(ロゴス)の法則」。アリストテレスの時代までは、ポリスが世界のすべてだったけれど、アレクサンドロス以降は世界が広がる。世界が拡張する。ポリスが世界のすべてでなくなる。ローマ帝国の時代もそうです。すごく大きな領土の一部。世界はこんなに広いんだということを知る。
すると、世界の法則に従って生きる、という方向に思考が向かうのです。「自然に従って生きる」というのはスローガン的なものと思ってください。自然とはなにかというと、自然のなかを貫く法則をさすようです。俗な解釈だけれど、人は世界のなかにいて、世界は法則で動いている。その法則に一致して生きるのだ。それがイコール自然に従って生きる。そのような意味です。
(ウ) 世界市民主義
この広い世界の中で、自分達はただの人に過ぎない。それまでは、自分たちのポリスが世界の中心で、自分たちだけが人間と思っていたけれど、ローマ人がいたり、エジプト人がいたり、ペルシア人がいたり、たくさんの人々の中の自分なわけです。そういうなかで世界市民主義という考え方が出てきます。コスモポリタニズムです。
つまり、自分たちだけが特別ではない。すべての人々が世界の法則の中で生きている、と彼ら考えた。ある意味すごく平等な感じがある。ロゴスのもと、世界の法則の中では、どこに住んでいる人も皆平等だという発想がでてくる。
これが世界市民主義の考え方の基本なのですが、これが17世紀18世紀ぐらいの西欧で出てくるホッブスなどの自然法思想に影響をあたえたといわれています。人は生まれながらにして自然権を持つという発想につながっていきます。