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見てるのに見えてなかったこと

最近、とても「福祉」に惹かれています。
今日は、少し前に目の見えないご夫婦が見せてくれた心の景色のお話。

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2020年3月下旬、私と旦那は旦那が数日後にオープンする美容室の近所のカフェに足を運びました。

独立して初めて持つお店の準備は考えることがとても多く、不安でいっぱいでした。店主である旦那よりも、側でお手伝いしている私の方がなんだかソワソワしてしまいその頃「あれやったの!?これやったの!?こうなったらどうするの!?」と口うるさい小姑化した私は旦那から煙たがられ、口げんかが絶えませんでした。

その日も、お店準備の休憩がてら近くのお洒落なコーヒー専門店に行ったのですが、ギクシャクしたまま入店したので口を開くと小競り合いになるため、2人ともだんまりを決め込んでいました。
せっかく素敵なこだわりの詰まったお店で、話題もたくさんあるのになんともったいない。。


しばらくすると、視覚障害者のご夫婦来店され、私たちの隣の席に座りました。歳は多分私と同世代くらい。お二人で白杖をついて入店され、どうやらとてもコーヒーに詳しいようでした。

会話を盗み聞くつもりではなかったのですが、我々に会話がなかったので自然に言葉が耳に入ってきました。

夫婦はコーヒーとバニラアイス付きのフレンチトーストを一つずつ注文。


旦那さん「僕はフレンチトーストの温かさを感じてから冷たいアイスクリームを食べたよ」

奥さん「そうなの!私はアイスクリームを食べてから温かいフレンチトーストを食べた。違う楽しみ方をしたんだね。」

見えていたら、わざわざ確認し合わないような会話。でも、そこにはとても温かい愛があった。お互いの「見えない」を描写した言葉が見えていた以上の景色を生み出していて、その場にいた私は心がぽかぽかにときめいていました。

私が注文していたのはピザトーストだったのに、フレンチトーストの甘さとアイスクリームの冷たさをご夫婦と一緒に感じている気分でした。


その後お二人は店員さんに「手元で確認できる持ち帰り用のコーヒー豆のメニューはありますか?」と尋ねて旦那さんが鞄からライト取り出すとメニューに当てて、さらにメニューギリギリまで顔を近づけて、奥さんに豆の種類を細かく説明していました。

この時、私は初めて視覚障害者の方の生活を垣間見たように思います。「手元で確認できる」という言葉が添えられていたのはそういう意図があったのか。

私だったらきっと「持ち帰り用のコーヒー豆のメニューはありますか?」しか言わない。もしかしたらそのお店には壁掛けメニューしかないかもしれない、ということを踏まえてちゃんと分かりやすく「手元で」とあえて付け加えていたんだと思うと感動してしまった。

私はいつも、こういう大切な言葉がすっぽ抜けるので周りに迷惑をかけてしまう。

その方はほんの一言で、店員さんに何を求めているか一発で伝えていて、気持ちを描写することがとても上手でした。こんな風に言葉を選べるようになりたいなと思った。

声が大きいわけではないのだけど、伝えようっていう意思が言葉にこもっているからしっかり伝わってくる。奥さんもコーヒー豆の説明を聞きながら「いいね、いいね」と言い、笑顔で選んでいたのでした。


そんな風景を眺めて、ものすごく「優しい」気持ちを感じました。今まで知らなかった世界。愛が深い世界。人ってこんなにも相手を思いやれるんだ、とその数分でたくさんのことを教えてもらいました。


思いやりが足りず、小さなことですぐに旦那とギクシャクしてしまう自分がとても恥ずかしく、ふと我に返って赤面してしまいました。

カフェを後にして美容室に戻る途中旦那から「俺はあんなに優しくしねーよ」と言われましたが、あの景色をあなたも見てたのね。

その後、ちょっとだけ私は小姑化を食い止めることができました。

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そんな素敵な出来事があったカフェはこちら💁‍♀️