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WBTアンバサダープログラム活動レポート1

※この記事は、日本科学未来館で科学コミュニケーターとして活動しているときに執筆したブログ記事です。【2015年4月20日の投稿】を編集・追記。当時の活動を振り返る”編集後記”を載せて再掲載しています。

2015年4月5日(日)、5人の高校生・大学生が未来館に集結しました。

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彼らは、未来館のWBTアンバサダーに認定された高校生と大学生です!

WBT?

アンバサダー?!

順を追って説明します。

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WBT(World Biotech Tour)は、製薬企業Biogen(バイオジェン)社が母体となる財団Biogen Foundationと北米南米の科学館連合であるAssociation of Science-Technology Centers(ASTC)が協力し、バイオテクノロジーと社会の関係について理解を深めるために、世界中の科学館が実践する新しい取り組みです。

バイオテクノロジーは生物の持っている能力を人間の生活に役立てる技術です。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、味噌やお酒を作るときの発酵技術、遺伝子組み換え食品、医薬品製造、排水処理にもバイオテクノロジーがすでに使われています。

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(科学コミュニケーター志水画伯提供)
 

そして、バイオテクノロジーは、食糧問題、環境汚染、エネルギー資源不足などの地球規模課題の解決に大きく貢献できると期待されています。

しかし、安全性やコスト、生態系への影響など考えないといけないことは山積みです。 

「バイオテクノロジーはどんな風に私たちと関わっているの?」
「一体どんな問題があるの?私と直接関係あるの?」
「私たちは今後バイオテクノロジーとどうやってつきあったらいいの?」

そんなことを思わず考えてしまう、おもしろいイベントを世界中の科学館が次々と仕掛けていく、それがWBT(World Biotech Tour)です。 

初年度となる2015年の開催館は、ベルギーとポルトガルの科学館、そして日本科学未来館が選出されました。

そして、アンバサダー・プログラムはWBTの目玉企画の一つです!

アンバサダーに選出された高校生・大学生が約半年間、研究や調査を通じてバイオテクノロジーの理解を深めます。そして、研究した内容をまとめて、発表します。

ポイントは、研究内容を発表するだけではなく、"研究内容がどのように社会とつながるのか、私たちとどう関わるのか"も合わせて発表することです。 

つまり、このプログラムの目的は、

「アンバサダー自身が研究し、社会に発信する経験を通して、科学コミュニケーションスキルを高める」ことなのです!

そして未来館の科学コミュニケーターである私、新山と志水がメンターとなり、彼らの研究を指導、サポートします。

2015年の2~3月にアンバサダー・プログラムの参加者を募集。

応募者には、バイオテクノロジーのどんな研究をしたいかを書いてもらいました。そのユニークな発想と着眼点には、スタッフ一同とても驚きました。たくさんの応募を本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼申し上げます。

選ばれし5人は、アンバサダー(親善大使)と名乗るからには、海外の科学館のアンバサダーと交流を行います。

もちろん英語で!!

しかし、5人とも、英語がペラペラ...ではありません。 

ということで、活動初日は、このようなお品書きとなりました。

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フルコースです......。見ただけでおなかいっぱいになります...

では、本日のメイン料理の詳細をご紹介しましょう!

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研究の基本プロセスは...

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ですが、これを自分一人で黙々とやっても良い研究はできません。

他人に意見を求めたり、誰かと一緒に議論したりすることで、一人だと気づかなかった視点を取り入れることができます。すると、新たな問題点が明らかになったり、仮説が増えたり、新しい発想に出会えたります。

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 そこで、アンバサダーたちにはあらかじめ、研究してみたいバイオテクノロジーのテーマを考えて来てもらい、仲間となるアンバサダー同士でアドバイスし合いました。

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表情は真剣そのもの...

お互いの研究の中身を初めて知り、圧倒されつつも、みんな自身の意見を述べてくれました。

「環境にいいのは分かるけど、コストはどうなの?」

「ミドリムシ以外に地球の食糧問題を解決する方法はないのかな?」

「ミドリムシアレルギーの人もいるかも!代わりに虫を食べるのはどう?」

「自分の国では捨てる物だけど、他の国では食べる物はないのかな?」

「企業が人工の食品添加物をあえて使っている理由は?」

などなど、初めは遠慮がちだった5人も、次第にのってきて、一人では考えつかなかったことに気づくことができました。

この話し合いをもとに、研究計画を練り直します。

さて、5人がいったいどんなテーマを研究するかは...

決定してからのお楽しみです。

続きまして、

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ベルギーとポルトガルのアンバサダーとオンラインで国際交流をするため、簡単な自己紹介を作成し、声に出して練習しました。

なんと練習相手は...

バイオジェン・ジャパン社のエイドリアン・ゴットショーク氏。日本・オーストラリア新興国担当の上級副社長です。スタッフの方々も練習に協力してくれました。

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アンバサダー :My name is ○○. Please call me ○○. I'm interested in vaccine .

(私は○○です。○○と呼んでください。ワクチンに興味をもっています)

エイドリアン・ゴットショーク氏 : Why are you interested in vaccine ? What kinds of vaccine?

(なぜ、ワクチンに関心があるの?関心があるのは、どんなタイプのワクチン?)

アンバサダー : ...

紹介後は、一人ずつ横に移動し、もう一回自己紹介!

......これを計5回繰り返しました。

5回目は、メモを見ずに流暢に自己紹介ができていましたよ! 

簡単な表現ではありますが、海外の大人に英語で自己紹介ができて、少しは自信がついているといいなぁと思いました。

もっともっと自信をつけるためには、練習あるのみです!

☆☆☆

これからアンバサダーたちの約半年にわたる研究が始まります。

与えられた環境で実験をするのではなく、自分でできるだけ環境を作る。自ら調べたり、研究者に取材して、自分が抱いた疑問を明らかにする。そして、一般の人が分かるように発表する。

仲間やメンター、協力者と議論し、考えを深める。きっと今まで経験したことのない世界が見えてくると思います。

5人のアンバサダーの本気に応えるべく、私たちも本気でサポートします!どうかみなさん、5人の成長の過程を温かく見守ってください!

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(Biogen Japan 上級副社長・スタッフ、WBTアンバサダーと未来館スタッフ)

未来館では8月にWBTフェスティバルの開催を予定しております!
バイオテクノロジーに関する様々なイベントを企画しておりますので、お楽しみに!

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