6月29日は「ビートルズの日」

「いらねーてかなんでラジオなんて作るんだよ」

「だよなー今時さラジオなんて聴くやついないだろ」

そんな男子達の声が聞こえてきたのは、技術の授業の時間で今日から自分達でオリジナルのラジオを作ることになっている。

まぁオリジナルと言ってもキットが配られて、先生の説明を聞いて作るだけ。中の配線を半田ごてで、くっつける作業もあると先生は説明してくれた。

4人で同じテーブルを使って作業をするのだが、同じ班の女子はまぁまぁ話せる子で少し安心した。

「ねぇラジオだってー」と部品が全部そろっているか確認してと先生に言われ、謎の部品をたくさん出しながらその女子が言った。

「うん」私は頷く。

「さすがにさ、いまどきラジオはなくない?」

「そうねぇ……」と言いながら私も自分の箱から謎の部品をたくさん出した。

ラジオの部品って案外少ないのね。これを組み立てればラジオ聴けるんだ。とおそらく今このクラスの中でただ一人驚いていた。

私はラジオが好きだ。小さいころから家ではテレビよりもラジオが当たり前についていることが多く、今でもラジオはよく聴く。

だけど、それをクラスの子や仲のいい子に言ったことはない。言ったところで「へー」くらいだろうし、別に私もあの深夜ラジオが好きで、ヘビーリスナーと言うわけでもない。

でもラジオが好き。それはテレビよりも押しつけがましくないところが好きなのかもと最近気が付いた。テレビは映像が洪水のように入ってくる。それがどうも苦手だ。その点ラジオは聴いていても、聴いていなくても流しっぱなしでいても、なんとなく自由な気がする。

恐らくこのクラスで実際にラジオが完成したら、本当に使うのは私だけだと思う。割とマジで。

出来上がったらすぐゴミになるものを一生懸命何週間もかけて作るのだから、かなり謎だが作る過程が勉強だから仕方ないと言われればその通りだとも思う。去年の文化祭の後、ゴミ捨て場に様々な看板やら、ポスターやらが捨てられていたが、その無駄さを思い出した。

そこから数週間で無事にラジオは完成した。

出来上がったときは、文句を言っていた男子達も少しは嬉しそうで、みなスイッチを入れどこかの周波数に合わせて何かを聴こうとしていた。

私もすぐにスイッチを入れてみたかったが、やめておいた。

家に帰ったらゆっくりと聴こうとはじめから決めていたから。あと弟に自慢しよう。「だせー」って言われそうだけど。

スイッチを入れ、周波数をいつも聴くところに合わせた途端に偶然に、私が好きな曲がかかった。

「それでは次の曲です! ビートルズでヘルプ!」

6月29日は「ビートルズの日」

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