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7月11日は「セブン-イレブンの日」

最近、近所のコンビニで深夜の強盗が多発しているらしく、夕方に上がった店長から一応気を付けてねと声を掛けられた。

バイトの僕がいったい何に気を付ければいいのか分からないが、強盗は怖いので来たらすぐにお金を出そうと思った。

夜中12時を過ぎるとお客も少なくなる。

ちょうどカップルの会計が終わり、店内には誰もいなくなった。その時……

遠くのほうからリズムの良い音が聞こえてくる。笛や太鼓の音のような。
さきほどまでは静寂を保っていたこの町のこのコンビニ。しかし今は何か得体のしれない不気味さを感じた。

それはカーステレオや近所迷惑な家から流れる音とは違い、もっと現実的な振動をもった音だった。

そう、まるでお祭りの音色のような地面から響く音。

音はどんどん近づいてくるようで、大きくなる。リズムがいい太鼓の音、盛り上げる笛の音。

まさかこんな真夜中にお祭りなんて……

レジから離れるわけにはいかないので、一面ガラス張りの入口から見える国道に目をこらす。音が大きくなるということは移動しているということだ。もしかしたら音の正体が国道を通るかもしれない。

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

視界に急に現れたのは、国道を行く20人程度の集団で皆、お揃いのはっぴを着ている。そして約半数がおみこしを担いでいて残りは太鼓を叩いたり、笛を吹いている。

まさか! こんな時間に本当にお祭りなのか?

その一団から目が離せないでいると、あろうことか一団はコンビニの敷地に入って来る。広い駐車場を抜けて入口に向かってくる。

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

おい、嘘だろ。あのまま入って来るのか。

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

偶然に「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」と入店の音楽がハモる。

「あのお客様……」レジから声を掛けたが、一団の勢いは止まらず

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

しかも、店内に入ってきて気が付いたが全員同じキツネのお面を付けていた。

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

店内を一周するように軽快な音楽と軽快な掛け声そして、一段と高く舞うおみこし。

僕は何も言えない。「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

すると、おみこしから小さな手が出てきた。その手は子供の手のように細く、すっと伸びたかと思うと、スナック菓子を掴みそのままおみこしのなかに戻っていった。

僕は茫然と見ていた。「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

その後もおみこしから出る手はアイスやジュースを次々とゲットして、掛け声とともに店から出て行った。

「そいやっ! せいやっ! そいやっ! せいやっ!」

太鼓と笛の音色はどんどんと遠ざかっていった。

7月11日は「セブン-イレブンの日」


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