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10月23日は「化学の日」

化学の授業の集大成が今日の買い物だ。今までの僕たちの勉強の成果をここで見せなければいけない。そう、今日のこの日の為に頑張ってきたのだから。

「……おじさん。油揚げ一つちょうだいな」

お豆腐屋のおじさんは振り向きざまに「あいよ!」と言った。そこで声をかけてきた本人を見て妙だなと思った。また小学生だ。
今日は平日、しかも今は開店したばかりの午前中だ。こんな時間に小学生が一人で買い物なんて……。それにおじさんを不思議がらせたのはそれだけではなかった。なんと午前中だけで5人もの小学生全員が油揚げを買っていったのだ。おじさんは考えた。もしかしたら近くの学校の家庭科の時間か何かがあって食材を買いに来ているのではないか? 

「……おじさん……おじさんってば、油揚げ一つちょうだいな」

「おっと、ごめんよ。おじさん考え事をしていてね。はい油揚げ一つね」

代金と引き換えに、袋に入れた油揚げを渡すとき、おじさんは聞いてみることにした。

「坊や、近くの小学生の子かい? 今日はやたらと小学生が油揚げを買いに来るんだ」

すると男の子は「今日は化学の実験の日なんだ。と嬉しそうに油揚げを見つめながら言った。午後にも買いに来ると思うよ」

化学の実験……? 油揚げを実験に使うのか? よくわからないおじさんに、男の子は「さようなら」とあいさつして帰っていった。

その男の子の後ろ姿を見送るおじさんも「さよなら、気を付けてな」と言った。おじさんは男の子のおしりからふさふさの尻尾が出ていることには気が付かなかった。

今日はキツネの学校の化学(ばけがく)の実験の日である。

10月23日は「化学の日」

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