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5月31日は「世界禁煙デー」

「あ、すいません。あ、ごめんなさい」

狭いスペースでは、出るときも入るときも人にぶつかってしまい大変に迷惑をかけてしまう。しかし、街のあちこちにあるこの「スペース」は大変人気だ。近年は特に人気が出てきたといっても良い。

コンテナ一つにも満たない、小さな「スペース」ははじめは、街の中心部だったり、駅の近くなどに作られた。その数は今と比べて大変に少なかったし、その小さな「スペース」に集まる人たちを道行く人たちは、少し嫌な物でも見る顔を一瞬だけして、通り過ぎるのだった。

ところが、年々街に「スペース」は増えた。少しの空き地ができたらすぐさまその「スペース」が建設された。人々は求めていた。かつて嫌な物をみるようにして「スペース」を見ていた街の住人たちも、この頃では「スペース」を積極的に使うようになった。

この「スペース」はガラス張りの空間だ。外から見ると滑稽で、21世紀の動物園のようでもある。しかし、自分が中にいるときはそんなことを考えたりは決してしない。同じ空間にいる仲間同士、少しでも快適に使えるように、気を使いながら過ごしている。

この街のとある有名議員は、増えすぎた「スペース」の廃止を公約に選挙に臨んだ。彼の主張はこうだ。

「あのガラスの動物園を、この街からすぐにでも撤去したい。あそこに入る人間の気が知れない」

そういいながら、会議中にタバコの煙を吐く姿が、新聞に掲載され物議を醸した。

結局、「スペース」を維持または増加させるとの公約を掲げた政党が選挙に勝利し、とある議員は選挙に敗れた。

その選挙結果を新聞はこう書いた。

「タバコの吸い過ぎで、有名議員、肺(敗)北!!」

そして今日も僕は休憩時間に「スペース」へと向かう。


こちらは「禁煙スペース」です。
このスペース内でのタバコは禁止です。
新鮮な空気を心行くまでお楽しみください。


外は一瞬先も煙で、何も見えない。

5月31日は「世界禁煙デー」



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