10月21日は「あかりの日」
ふわっとした明るい塊を掴んで、すんでのところで離してしまった。落ち着いた動きをしていたから安心して優しめに掴んだのが失敗だった。せっかく見つけた「あかり」なのに。このままま暗くなってしまったら今夜は「あかり」なしで過ごさなくてはならない。
「あかり」なしでは料理も手元が見えないし、何より本が読めない。今日は晴れているから月明かりの元で読むこともできるが、やはり「あかり」の明るさは必要だ。なんとかして「あかり」を探さなければ。さっき逃がした「あかり」と同じではなくてもいい。(それにしてもさっき逃したやつは明るさといい、サイズ感といいとても良かった。それだけに逃がしたことが惜しい)
だんだんと暗くなってきた森は不気味さを増してきた。しかし逆に言えば「あかり」を見つけやすくもなったわけだ。あまり森の奥には行けない。森の入り口から、いつもよりかは歩いてきたと思う。そろそろ見つけて帰りたい。その時、ふわっと目の前を通り過ぎたものがあった。
見つけた「あかり」だ。慌てずに追いかける。そうしてそのまま森の中の木がない広場のようなところにでた。「あかり」は広場の真ん中へ吸い込まれるように向かう。
その広場の真ん中には大小さまざまなかたちの「あかり」がいた。見たことのない形のものもいて、大きいものだとわたしの背よりも大きい。ねじれているものや、さんかくのもの、とんがったものなど……ただ共通しているのは確かに「あかり」だということ。暗い森のなかその広場だけ昼間のようで、まぶしいくらいだった。
微妙にゆれ動いている「あかり」たちは何をするでもなく集まり、プカプカと浮いていた。わたしはこんなにもたくさんの「あかり」が集まっているのをはじめて見た。
他の大きな街から来たのかもしれない、最近ではこの辺りの村だけではなく、遠く離れた街の「あかり」も逃げてきていると聞いた。
「あかり」は人間からの拘束を嫌い、夜になるとそっと逃げだす。
10月21日は「あかりの日」
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