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6月19日は「ロマンスの日」

「あれ、今年も中止みたいです」と手紙を届けてくれた神職に礼を言って手紙を受け取った。

はぁ、今年も中止か。まぁこのようなご時世ではなかなか難しいのかぁと独り言を言いながらも、リストからは目を離さず、なおかつ様々な意見を聞き逃すまいとしていた。

「昨日のあの子とさーおとといのほら、ちょっとワイルドな男の子いたじゃない? 二人はどう?」

「いやいや、昨日のあの子なら、先週慌てて一万円入れちゃった子がいいよー」

「まじでいってんのー絶対その二人じゃないでしょ」

「じゃあ、誰がいいのさー意見ちょうだいよ」

大分白熱してきた会議。ここらで休憩を入れたほうがいいだろう。

「少し休憩にしようか」

そういうと、何人かは席から立ち部屋を出て行った。さきほどまで張り詰めた空気は少しは良くなったが……わたしはため息をついた。

「今月のリストを見たが、やはり人数が少ない。それに今年も出雲行はなくなりそうだし、ますます難しくなった」

お茶を持ってきた神職についつい愚痴をこぼしてしまう。

「そうですね、明らかに参拝者は減っています。縁結びもさぞかし難しいですよね」と同情ぎみに神職は言った。

はぁ、毎年なんとか出雲での会合で、帳尻を合わせて縁結びをしているのに、去年に続き今年も中止なんて……。

なかなか、いいご縁が結べないでいる東京のとある縁結びの神社では神様たちが毎日話し合いを行っていた。

そういえば……と思い出したように神職が言った。

「今の若者たちは、縁結びの神様をロマンスの神様と言うそうですよ。この前、全国神様の為の情報誌『苦しい時の神頼み』に書いてありました」

まったくいつの時代も人間は勝手なものだ。
さて、そろそろロマンスの神様のお仕事を再開しなくては。

6月19日は「ロマンスの日」



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