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9月4日は「くじらの日」

髭がすごいなというのが感想だった。ジブリアニメに出てきそうなおじいさんだ。でも髭のことを書いて提出しても、君は何を聞いて来たんだ? と担任の先生に怒られそうなので髭のことは書かないでおくか、でもどうしても書くことがなくなったら書こうと心に決めた。

ぼくが『くじらじいさん』のことを聞いたのはお母さんからで、それは何か正確な例えば『学校の先生』や『お巡りさん』や『劇団ひとり』などと同じ職業の名前なのかというのはかなり曖昧だった。

なにせ『くじら』+『じいさん』だ。ぱっと見上から読んでも下から読んでも系のあれかと思ったら、どうやら違うようだし。とにかく、ぼくの住む港町には灯台があり、その近くには『くじらじいさん』が住んでいる。

『くじらじいさん』のもとを訪れたのは、平日の午後だった。給食が終わりそれぞれ子供たちはあらかじめアポイントを取った職場を訪問して、その職業のことについてインタビューをして学ぶ。そしてぼくが行くのは『くじらじいさん』のところだ。

『くじらじいさん』の家? もしくは小屋? は灯台のすぐ近くにあり、どこにでもありそうなその姿は、どこにもいなさそうな『くじらじいさん』が住むには、違和感があった。あまりにも現実的すぎて非現実の『くじらじいさん』が気の毒に思えてきた。

一応常識的なぼくなので、玄関でドアをノックをする。

「トントントントン」

すると、中から

「トントントントン……合言葉をどうぞ」

と聞こえる。

ぼくはもう一度ドアをノックした。

「トントントントン」

すると、中から

「トントントントン……合言葉をどうぞ」

これはもしかしたら、週刊少年ジャンプの連載スタートの際にありがちな、亀仙人なりその他の師匠的ポジションの人から、試されている可能性が非常に高いことに気が付いた。

「トントントン……とくれば……」

ぼくは一つの答えしかもっていなかった。それを思いっきりぶつけるしかない。大きな声でこう言った。

「トントントントン、ヒノノニトン!」

するとドアは、静かに開いた。

9月4日は「くじらの日」

明日におはなしは続きます。お楽しみにできないかもしれませんが、一応お楽しみに。




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