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誰かを喜ばすためじゃなくて、自分たちが、自分の農業人生を楽しむために

大好きなチームがある。
十日町・津南ファーマーズちゃーはんという、2014年に結成した十日町市と津南町の若手の農家15人の男女でできたグループ。

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なんでちゃーはんって言うかというと、
米農家、野菜農家、養豚家、花卉農家が集まったから
「フライパンで混ぜると、ちゃーはんになるね!一個だけでもいいものが、ひとつになるともっとよくなる」というイメージで名付けられた。

あれから5年。
異業種との農業×◯◯を創造するワークショップ、建築家グループstudio*H5さんとした田んぼの中に教室をつくる「田んぼの教室」、田んぼ運動会に、田んぼウェディング、収穫体験、メンバーがホストになる消費者との交流イベントなどなど、毎年1個、そのときできること、やりたいことをやってきたなぁ、楽しかったなぁと振り返る。

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いろんな役がつきはじめる30代後半〜40代前半

さて、月日が経ち、自分たちの環境も変化してきた。
農業はただでさえ会が多い。
〇〇部会、なんとか協議会、なになに組合…。
地域と密着した職業だからこそ、本当に多く、それでいて若手は少なくなっているので、役は少ない農家に集中し、まわりの農家さんの夜のスケジュールはいつも会議でびっちり、でもどの会もメンバーはだいたい似ている。春は怒涛の総会祭りとなる。
ただでさえ自分の農業経営でいっぱいいっぱいなのに、担い手の絶対数が少ないからこそ目立つし、地域に密着している農業は、「地域貢献」「地域活性化」の文脈で農家も過度に期待されすぎたり、責任を負わされすぎてしまう。


それだけでなく、消防団や地域の役もついてまわる。
そして、30代後半〜40代前半にさしかかると、こどもの学校関係でPTAの役や部活動の送迎や大会などもやってくるようになり、いよいよ本当にメンバーの忙しさが伝わってきた。

世代の人口バランスが変化している今、地域にあるさまざまな会を断捨離する棚卸しは絶対必要だと思う!が、今日はちょっと違う話を。

誰かを喜ばすためにがんばることに、疲れた

さて、その超絶忙しい年代ゾーンに突入したときに、「今年はちゃーはんなにする?」という話になった。去年やったホストの会(農家ナイト)がとっても楽しかったから、できる範囲で無理せず今年も農家ナイトをしようと決まったものの、あまり準備は進まず…。誰に向けて、なんのため、どんな目的で、どんな仕掛けでやるのか?そして人は集まってくれるのか…。

うまく中身が詰まってゆかないまま、日程は延期になり、立て直そうと実行委員会もできたけれど、それでもやっぱりうまく進まない。「本当にやる?(というか、迷走してテンションが下がってきたかな…涙)」というのを話し合う会議で、こんな投げかけがあった。

「吉井さんは、なにを求めてちゃーはんに入ったんですか?」

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吉井さん(↑)は途中から加入した、とっても優しくて芯のある農家さん。吉井さんは控えめに笑いながらこう答えてくれた。
「そうですね、なんだか皆さんがとっても楽しそうにしていて、その楽しさに入ってみたいなと思って」。

そのとき、開眼する思いだった。
ちゃーはんという会が楽しくなくなったとか、つまらなくなってマンネリ化したのではなくて、誰かを喜ばしたり、もてなしたりするためにがんばることに疲れただけなのだと気づいたのだ。

自分たちが、この農業人生を楽しむためにやるのだ

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もうすでにみんなは、毎日地域のため、家族のため、食べる人たちのために、毎日毎日、ほんっとうに暑いなかがんばっている。だって夜と週末のスケジュールはいつも真っ黒。ほんとびっくりする。

なにもしなくても、農地は集まってくるなかで、まわりからの「担い手」として向けられる期待感や、守るべきものへの責任感で心はいっぱい。
語弊はあるかもしれないけれど、ちょうど「今」は、もうこれ以上誰かを喜ばせることは、HP(ヒットポイント)が枯渇してできなくて、ちゃーはんを立ち上げたときのワクワク、自分たちが、自分たちの農業を太く長く楽しく続けられるために、仲間と楽しいことをやる会をやるのだ、という原点に立ち返りたいと思った。

自分たちがやりたいことをやろう。
自分たちが楽しいことをしよう。
そうして、その輪に入りたいって人がいたら、「ついておいで」「入っていいよ」「傍聴席とか観覧席でもいいよ」っていうスタンスでいい。

そう吹っ切れた途端、たくさん楽しいアイデアが出て、とっても楽しい会議だった。いまさらだけど、お互い知らないことや発見もあった。誰かのためではなく、自分たちが楽しむため、という文脈になったとたん、アイデアの精度も高まったように感じた。

今を楽しんでいる先輩がいると、磁石のように人は続く

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移住したばかりの頃を思い出した。
農業する人はまれで、ましてや男性社会の農業で、まわりはおじさんや、おじいさん世代の方たちばかりだった。もちろんこんな大人になりたいと思った農業の師匠を追いかけて農に向き合ってきて、私にとってみたいな師匠たちはいるけれど、同世代の仲間がいなかった。

だから、まわりから「こんな条件不利地で」「中山間地域で」と言われても、「この地域で農業をする!」と自分の選択を信じてきたけれど、その選択は本当に間違ってなかったのだろうか…と不安になるときがあった。


そんなときに出会った青年農業士会の人たちの存在は衝撃的だった。
本当に楽しく、面白く、でもとっても真面目で、夢を語る素敵な先輩たちで、当時の私にとってとても眩しくてキラキラしていた。

「あぁ、年代が近くて、農業の未来を信じている人たちがいて嬉しい、この場所で農業を始めたのは間違ってなかった」と、本当に思えた。

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それからちゃーはんができて、農業をやっていて日常的な栽培に関する悩みだけでなく、辛いこととか、悩んでいることを話せて、同じようになんとかがんばっている仲間がいることが、心の支えになっていた。(他の人はどうかわからないけれど。汗)キラキラしてて尊敬できて、そんな存在がいたから歩き続けれたように思う。女子メンバーも増えて、その気持ちはさらに大きくなっていった。

確かに、ネガティブな話をしているばかりの農家さんの米を食べたいとは全く思わないし、前向きで、夢を語る人や楽しんでいる人の米を食べたいと思う。そんな心理と似ている。


だから、地域に後継者がいないとか、担い手不足とか、いろんな問題が話されるけど、会議室で延々この暗い話や課題解決の話をするよりも、当事者としてできることは、この輪に入りたいって思われるくらい、まずは自分たちが、いまこの瞬間、この人生を、最高に真面目に愉快に、楽しむのが一番!それを一緒に楽しめる同志がいるって最高。それでいい、と思えた。きっと、食べる人との距離もぐっと近くなってゆくはず。
そう思ったら、ぐっと楽になった。もっと自分を大事にしていいんだと。もちろん、なにごとも楽しくないと続かないし。

とってもシンプルなことなんだけど、これからも忘れたくない大事なことに気づくことができ、(農家の先輩たちには未だにちょっと緊張するときもあるけれど。笑)私は好きなチームだなぁ、と感じる大切な1日でした。

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