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“内定承諾後“の辞退が起きる本質をまじめに考えてみた(@中途採用)

こんにちは、かなけんです。

■冒頭

本日のテーマはこちら。
「“内定承諾後“の辞退が起きる本質を考えてみた(@中途採用)」

まず始めに、このnoteを書く目的として、内定承諾後に辞退した方を“批判する意図”は一切ありません。

目的は、「なるべく事前に防ぎたい」という私自身の想い、及び「自分自身の力で、できる限り発生を防げる方を増やしたい」の2つです。

最初から「内定承諾後に辞退しようかな」と気軽に考える方はいません。(悪意がある方は論外として)

きっと、多くの方が内定承諾後に“想定外の出来事”が続き、自分がした意思決定に“迷い”が生じ、悩みに悩み抜いて、撤回せざるを得なかったのだと思います。

そういう悩みを抱える方々、今後抱えるかもしれない方々にこの発信が届き、少しでもお役に立てることを願っています。


■なぜ考えてみようと思ったか?

以前、Twitterで以下の発信をしましたが、これは一般的な感覚として“たまに起きるよね”というくらいのつもりで、特に大きな問題意識はありませんでした。


また、以下のnoteは、新卒の就活生向けを意図して発信をしたものでしたが、同じく問題意識がものすごく強くあったわけではありませんでした。


しかし、近々(2020年秋頃)にて、自社の中途採用で“内定承諾後の辞退に至る方”がまとまって複数発生しました。

上記Twitterでは「内定承諾後の辞退は、内定承諾者全体の約2~3%くらいで発生する感覚がある」と書きましたが、直近の実数(発生確率)はその“約2~3倍(5~10%)”であり、辞退理由の共通点は、“現職残留”でした。

上記のnoteでも少し触れていますが、中途採用において、退職交渉時に現職から引き止めを受けることを“カウンター(オファー)”と言います。中途採用の人材紹介業や人事担当を一定期間やっていれば、誰しもが一度は経験して向き合う問題ですので、極端に珍しい出来事というわけでもありません。

故に、自社で近々(2020年秋)にて増えたのは、“たまたま”なのかもしれません。「本当に“増えた”と言い切れるのか?」と問われればNoです。確固たる客観的データはありません。ただ、人材紹介業の知人数名に聞いたところ、「自分の担当顧客でも起きた・増えている感覚は同じ」という声を複数聞くことができました。

また、“内定承諾後”に限らず、その手前にて転職活動をしてみた結果、“選考途中や貰った内定を全て辞退して現職残留を決める方”も増えている、という声もありました。(自社でもそういう感覚もあります。)

コロナウイルス流行も含め、近々での“外的環境の変化(景気、求人数、失業率等)”があった点は誰しもが認める部分でしょう。しかし、「それが転職活動をする個人の方々にも大きな影響を与えているのか?」という点は、おそらく個人差が相当大きいでしょうし、客観的に間違いなくそうだ、と言い切ることは困難なように思います。

「一度決めたのに、翻意して約束を破るなんて、この野郎っ!」と一方的に憤っても、何も解決しません。けれど、モヤモヤした気持ちのまま、何も考えずにやり過ごすのも気持ち悪い。

ということで、「何がこの問題の本質であり、一当事者として、どう向き合うべきかを考えてみよう!!」と思ったのがきっかけです。

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■“理論”から本質を考えてみる

そういえば私は一応、一人の“キャリアコンサルタント”として、色々なキャリア理論を学んできたことを思い出しました。笑)

せっかく学んだ理論を“試験合格のため”だけに留めておくのは勿体ないと考え、改めて過去の勉強テキストやネット情報を漁り、考えてみました。

参照先として、しんさん(https://twitter.com/CareconShin)がまとめてくれているブログをご本人了承の上で引用し、先人が考えたキャリア意思決定論、 つまり“人の意思決定とは何ぞや”を紹介したいと思います。(※私の解釈も入っている点は予めご了承ください。)


【ヒルトン(Hilton,T.L.)】

まず衝撃的だったのが、「内定承諾後の辞退が、意思決定理論としては、ある意味、肯定されている」と私は解釈しました。(理論的には十分に起こり得る、という意味です。)

以下のヒルトンの理論は、「個人の希望や価値観と、外部環境との間の“不協和(不一致)の解消”が、意思決定の過程の1つである」とされています。


転職活動をする方は、基本的には“現職に何らかの問題”があり、それを解決するために違う会社を探します。そして“問題解決できる会社”を見つけ、転職する意思決定をするわけです。

しかし、意思決定後に退職交渉を開始したものの、“現職でも問題解決ができるプラン”がカウンターで提示されたらどうなるか。

現職にて“不協和(不一致)の解消“が図れるのであれば、転職理由自体が無くなりますし、もしも転職予定先よりも”プラスアルファの条件“が示されたら…、そりゃ残留しますよね。。

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【ジェラット(Gelatt.H.B)】

次にジェラットの理論では、意思決定の基本要件として、「情報に基づく、“2つ以上”の選択肢の中から選んで行動する」ということを挙げています。

さらに「意思決定には3段階のシステム(①予測、②評価、③決定)がある」としていて、このステップを何度か繰り返しながら意思決定を進めていくとしています。また、全ての情報を得ることが難しい中、人は限られた情報をもとに、時に“主観(直観)”も織り交ぜ、選択した先の“目標設定の探索”もしながら意思決定をするとしています。


働きながらの転職活動ですと、タイミングよく“複数から同時に内定”を得ることは難しいですし、ほとんど企業の場合、内定回答期限が置かれます。そうなりますと、限られた時間内で「現職残留 vs 内定先1社」の2択のみで検討せざるを得ません。

基本的に“即決”は難しく、ある程度の時間をかけて模索しながら意思決定をするとなると、「回答期限の納期が来たので回答する(回答せざるを得ない)」というのは、本人が“完全に納得して意思決定ができたのか?”とは別の話になるわけです。

ジェラットは、先の意思決定の基本要件のもう1つに、「全ての決定は個人(本人)が行うもの」ということも挙げています。つまり、“意思決定は第三者には決めさせられない”わけです。

もし“実は「自分で決めた」と100%思えないまま内定承諾をしていた”というような場合、後でひっくり返る余地は十分にある、と言えるでしょう。(表向きの意識としては「ちゃんと決められた」と思っていても、実は無意識では「本音は決めきれてなかった」わけです。)


【ティードマン(Tiedman,D.V.)】

ティードマンの理論では、意思決定の要素の1つに「統合化(社会からの要求に合わせ適用しようとすること)」が挙げられています。


私の拡大解釈かもしれませんが、内定承諾後、退職交渉を開始した際、現職から“カウンター(新たな期待や要求)”が提示されてしまえば、それに対して「どうしようかな?」と考えてしまうのは至極真っ当な反応であり、そのオファーをいただいた時点で、“改めて別の意思決定を検討開始してしまうこと”は致し方ないとも言えます。

またティードマンは、先のジェラットよりもさらに細かく、“「予期(予測)の4段階」と「実行の3段階」の意思決定プロセス”を挙げています。

意思決定は単純ではなく、“ありとあらゆる情報(選択肢)”を取り入れながら、“最も自分に合ったものを選択しようとするもの”である以上、一度、意思決定をしたからといって終わりではなく、「新しい選択肢が増えれば、“先の意思決定を撤回する感覚”ではなく、まったく別の新しい検討と意思決定をすることもあり得る」ということでしょう。


【クランボルツ(Krumboltz.J.D)】

最後にクランボルツの理論を紹介します。彼は意思決定論者ではなく「社会的学習理論」の論者とされていますが、意思決定に影響を与える要因を4つ挙げており、その中の1つに「環境的条件・環境的出来事(求人数、雇用・訓練機会、企業の採用、労働条件、労働市場など)」をはっきりと挙げています。


大前提、人間とは“学習し続ける存在”であるとして、職業選択(職業意思決定)というものは、“その人が過去(事実)と未来(予測)の出来事の間を繋いで解釈した結果”であり、性格や意思だけではなく、“外部環境から刺激や学習結果”が本人の「信念・スキル・行動」にも影響する、としています。

つまり、いくら周りが「他者に左右されない、自分のブレない軸や信念を持てよ。自分の意思決定には責任を持てよ。」と諭したところで、カウンターで現職から魅力的な条件を提示されたり、慰留されたりすれば、それら“外的要因によって「信念・スキル・行動」自体が変わること”も肯定されるわけです。

また、クランボルツが提示している、キャリアコンサルティングの世界では有名な「計画的偶発性理論(プランドパプンスタンス理論)」を応用して考えてみると、「意思決定を、あえて“計画的”に行わず、“計画外の偶然の出来事”も好機にしていこうとする姿勢」も時に大切だよ、ということになります。

不確実な時代だからこそ、綿密な計画を立てすぎるよりも“「行動しながら偶然を受け入れていく」ということも正しい“わけです。

予期せぬ出来事としてのカウンターを貰い、それを当人が“ポジティブに捉え、それを受け入れようとするならば、個人の意思決定としては止められないわけ”です。

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以上、4人の学者の理論を取り上げましたが、まとめますと以下の2つかなと思います。

■意思決定とは
★他者によって揺れるものであり、むしろ他者の要求にも適応しようとするもの
★固定された軸ではなく、日々の学習によって常に軸が変化するもの

個人差が大きいであろう、人間の意思決定は“科学的・理論的に捉えるのは難しいのでは”という印象がどうしても先立ちますが、上記のように、きちんと学者によって研究がなされている世界でもあります。

たとえ個人差や主観による差があったとしても諦めず、その状況を「できる限り、客観的に捉えてみようとすることが大事」と思わせてくれますね。

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■“実践”はどうしたら良いか

さて、”理論はあくまで理論”に過ぎませんよね。現実としては、Aさん、Bさん、・・・、という個人単位で起きている問題を具体的に捉え、向き合う必要があります。

ということで、次に”実践の場合はどうしていけば良いか”を考えてみましょう。

大前提として、大事なのは「目的と手段の切り分け」です。

言われてみれば当たり前だと気づく方が多いでしょうし、私が改めて偉そうなことを言うまでもないかもしれませんが、悩んでいる方の多くは“手段の目的化”が起きています。

今回の内定承諾後の辞退ケースでいえば、「転職活動を行う」、「違う会社に転職する」は、一手段に過ぎません。「現職残留か内定先に行くかの検討をした上で意思決定する」という行為も、当然ながら一手段です。

では“目的”は何なのでしょうか。

それは

「より良いキャリア成長の実現、及び働き方・働きがいの充実を実感できる環境を″選択し続ける″こと」

ではないかと私は思います。

そのように目的を考えると、転職活動を行う前に、「なぜ今の会社に居続けるだけではダメなのか?」や、「なぜ自分は今の会社を辞めたい(転職したい)という感情を抱いているのか?」という部分から向き合うことも必要になってきます。

また、さらに手前の「入社時は自分で選んだ会社であり、望んで入ったはず。それがなぜ頑張れなくなってしまったのか?」や、「なぜ、今までの間は働き続けてこれたのか?(途中で辞めたいと思うことが全くなかったのか?)」も、考えを整理する必要があります。

つまり、“転職活動をする時だけ意思決定をしているわけではないよね”ということです。

現職に入社を決めた時点から今日に至るまで、「まだまだここに残り続けて頑張るぞ、という意思決定」を含め、大なり小なり、人は意思決定を繰り返しています。現職における、“意思決定の繰り返し”を思い出しましょう。

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そして、もしも可能ならば、転職先を決めた後にいきなり「もう辞めます」と現職に伝える前に、「ちょっと辞めたくなってきたかも」、「このまま続けていくには不安な気持ちが出てきたかも」という段階から、転職活動の開始前から、現職に想いや悩みを打ち明けてみてください。

そんなこと言ったら、「現職の上司や人事から腫れもの扱いされるのでは?」という不安もあるでしょう。伝えたら、「じゃあ、いいよ。さっさと辞めれば?」と逆に背中を押されたらどうしよう、と思う方もいるかもしれません。

でも、現職に相談をして、もしも肯定的に受け止めてもらえなければ、自分はあまり必要とされていないと察することができ、“心置きなく「もう転職しよう」と踏ん切りをつけること”に繋がります。

逆に思いの外、慰留や励ましを受け、場合によっては配置転換や待遇改善等の兆しが見えるのであれば、“大きな労力を使わずに「不協和(不一致)」が解消される”わけですから、そのほうが良いと思いませんか?

ご存知の通り、“就職活動、転職活動はかなりの労力”を要します。その後、内定を貰い、「転職先を決める」ということになれば、“今の会社を辞める労力”も発生します。

また、内定承諾を受けた転職先は、“受け入れ準備を始めるという労力”が発生し、辞めると言われる現職側も“引き止めるための労力、後任探しの労力”が発生します。

転職先を意思決定するということは、“自分以外の誰かにも影響し始める、大きな意思決定の瞬間”です。

それを後から白紙にする場合、損害賠償まで発生するようなことは稀だと思いますが、当然ながら“社会的信用を失うリスク”もあります。現職も、引き止めてくれたとしても、内心としては「何で転職先を決める前に1つも相談をしてくれなかったのか?」と不審に思う方もいるかもしれません。そして何よりも、“自分自身に大きなストレス”がかかります。

転職活動をすることによって、偶然の企業との出会いがあるかもしれませんから、「まずはいったん動いてみよう」、「やってみないと分からないこともきっとある」という形で転職活動を行うこと自体は否定するつもりはありません。やってみてから、「やっぱり転職するのを中止しよう」というのも、全く問題ありません。

ただ、“「転職先決定≒今の会社を辞める」という意思決定”については、可能な限り“不可逆的な意思決定”にする必要があると思います。

そのためにも、手前の段階から常に“小さな意思決定”を繰り返し行い、経験値や予測精度を高め、先に控える大きな決断を、“後からひっくり返すことが本当にないかどうか”を、真剣に考え続ける(学習し続ける)しか解決策はありません。

事前に考えるべきこと、手前で交渉すべきこと等を全てやり切った上で、“自分自身の職業選択についての「学習」“を積み重ね、可能な限り、”想定外の事象を排除“してください。

先のクランボルツが提唱している「計画された偶発性」は、あくまで“「計画された」が基本”です。無計画なまま、何も考えず、誰にも何も相談せずに決めた結果、カウンターを受けてしまうことは、想定外の事象ではなく、「計画性のない必然」であることに注意しましょう。


■まとめ(一人じゃなく、“みんな”で防ぐべし)

私は、以下が”正しい手順”ではないかと思っています。

1:過去の意思決定を整理し、周りにも積極的に相談し、必要な情報を可能な限り集める
2:未来の“想定外”を極小にするため、小さな意思決定を繰り返し、都度修正する
3:最後に大きな意思決定(99.9%不可逆だと言い切れる決断)をする

この「1→2→3」の一連の過程にて常に“学習”をし、ご自身の「信念・スキル・行動」を成長させ、大きな意思決定の段階に来た時、それが滞りなく実行できるようにしていきましょう。

最後の“大きな意思決定の責任”は、自分以外に取ることはできません。だからこそ、“3までに至る1と2のステップを正しく踏むこと”を重視してほしいなと思います。

しかし、自分の考えを整理したり、決断後の未来を予測したり、決断自体をシミュレーションしたりすることについては、必ずしも“1人でやる必要”はありません。

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もしも“現職の上司に直接、悩んでいることを相談ができる関係性”が普段からあるならば、それが一番です。上司への相談が難しくても、“現職の人事や信頼できる先輩”に相談してほしいなと思います。(現職に直接悩みを伝えるほうが、「抱えている問題の改善にダイレクトに繋がっていくことが多いから」です。)

ただ、いきなり現職側に相談をしていくことが難しいと感じる場合は、“人材紹介会社のキャリアアドバイザー”や、それこそ私のような“キャリアコンサルタント等、外部機関の相談相手”を頼ることもできます。

いきなり転職活動を何も考えずに始めるのではなく、「本当に今辞めるべきか?(本当に辞めるしかない方法が存在しないのか?)」と向き合い、辞めなくても何か改善できる方法はないか、を“みんな”と一緒に整理していきましょう。

場合によっては、面倒な転職活動をせずに問題が解決することもあるでしょうし、逆に現職では改善が難しいと先に分かれば、転職することに対して腹を括ることにも繋がるはずです。

仮に「3の大きな意思決定」をした後、“どうしても決断が揺ぐようなことになった”としても、1と2のステップを正しく経た上で起きてしまったのであれば、それはそれで仕方ないです。しっかりと”学習(反省)”し、迷惑をかける周りに対して真摯な対応を心がけてください。

“最後の最後は1人で決める必要ある”けれど、“全部を1人で考える必要はない“、と考えてください。周りを適切に活用し、自分の問題の全てを、自分だけで抱え込まないでいただければと思います。

1人でも多くの方が、笑顔で働くことを楽しめる世の中を創っていくべく、発信してまいります!!サポートよろしくお願いいたします。