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連載:「ゲームデザインの引き出し」

実際に遊んだゲームからゲームデザインについての小さなパーツ、一つ一つのアイデアに注目して実例を勉強していく連載記事になります。

それらの小さなアイデアを、本連載では「ゲームデザインの引き出し」と称して呼ぶことにします。
(※ここで「ゲームデザイン」とはゲームシステムや仕組みのデザインというもので、CGやグラフィックなどの「デザイン」ではありません)

私自身が勉強することも目的ですが、これからゲーム業界を目指す学生、インディーズで自主制作ゲームをつくりたい人、またゲーム業界で働いているクリエイター(プランナー、企画職)の人の参考になればと思っています。

プロのゲームクリエイターの方であれば、日頃ゲームをプレイして自己研究をしているかもしれませんが、目先の開発が大忙しのときには、なかなかゲームプレイする時間も取れなかったりするかもしれません。

本連載記事を、ゲーム研究のインプットの一助にして頂ければと思います。

アイデア鍛錬の必要性

私はゲーム業界で受託開発などのプログラマーをしながら、時には自社製ゲームを開発することもありますが、残念ながら天才クリエイターではなくゲームデザインの能力は「普通」の範疇でしょう。

そのような普通のゲームプログラマーでも、ときには必要にかられて自分でゲームシステムを考える必要があります。

育成ゲームを考えていてこの育成部分をなんとか面白く作らなくてはならない……。アクションゲームを作っていて、もうちょっとギミックの仕掛けを入れてスリリングにしたい……。etc...

そこで天才ではない私としては、既存のゲームに使われているシステムを分析、消化し、自分の脳みその中にゲームデザインの「引き出し」を沢山作って蓄えておくことが必要になると考えています。
(スポーツ選手が筋トレをしたり、素振りをしたりするのに近いかもしれませんね)

アイデアの「引き出し」とは

皆さんも既存のゲームを何か2,3つ思い浮かべて考えてみてください。

誰もが今までも思いつかなかったような「斬新なゲームシステム」だけで成り立っているゲームというのは、あまり存在しないのではないでしょうか。

ゲームのほとんどの部分は、色々な既存のゲームシステムのパーツを組み合わせて成り立っています。例えば、
・レベルアップ
・乗ると落ちる床
・二段ジャンプ
・一見通れなさそうな隠し通路
・必殺技ゲージ
などなど。

それらのパーツを脳みその中の「引き出し」として、10個しか持っていない人と、500個持っている人では、パッと出せるゲームのアイデア量に差が出てくるでしょう。
(勿論、既存ゲームのシステムを全編に渡って丸ごと流用するのでは「パクリ」になってしまいますが……)

それらの要素を組み合わせて、ゲームの題材に合わせてアレンジし、自分なりのエッセンスを加え、バリエーションを無数に生み出せるか、がゲームクリエイターに求められる能力ではないでしょうか。

また、ゲームデザイナー、ゲームプランナーとして求められる仕事の多くは、斬新なめちゃくちゃすごいゲームシステムを発明することではなく、目の前で制作中のゲームと向き合い、「あとちょっと面白くするには……」「あとちょっと分かりやすくするには……」といった小さい工夫を積み重ねることだと思います。
(そもそもプランナー、企画職と言われる方々の仕事の多くはプロジェクト進行回りの諸々の雑務だったりもしますが)

そのため、本連載でも「めちゃくちゃすごいシステム」を紹介するのではなく、ゲームの中のほんの小さな工夫(=引き出し)に目をつけて、ちょっとした工夫次第でゲームはより良い物になるよね、というポイントを伝えていこうと思っています。

ゲームデザインの専門書で学ぶのは

世の中には「ゲームデザイン」について体系立てて論じている専門書がいくつもあります。学問レベルで研究されているものから、有名クリエイターが書いたものなど。

そのような本を読むことも力をつけるために良いことだと思います。

一方でゲームデザインの理論を学んだからといって、そこから具体的なアイデアが次々と湧き出てくるようになった! 面白いゲームシステムがどんどん湧き上がってくる、といったことはないと思います。

理論は理論で知識としてインプットした上で、もう一方で実践として具体的な例(=ゲームデザインの引き出し)を多く見て、血肉としていくことが、クリエイターとしての実力向上に繋がるのだと思います。


というわけで、ゲームデザインの価値あるインプットとなるために頑張っていきたいと思います。趣旨に共感してくれる方は一緒に頑張っていきましょう。