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鳴いた、月が見ていた夜に。

振り返るぜジャーニー、speena編。
あと2枚でシングル終わる・・・アルバムはあと2枚、2枚?ふぁー。


あれはいつかの冬、おそらく27、付き合い始めて2年も経つのに解決しない恋人の不祥事に解決を待つ日々を日常にしようと努めるも不意に心の奥底から湧き上がる怒りの爆発を抑えられず、ぶつけるたびに彼を睨む目つきは鋭さを増し、自分ができることは全てし尽くしたが故の待つこと以外に何も出来ない苛立ちは募る一方、せめて音楽という形に昇華しようにもいつしかそちらも不穏な空気、誰と誰が付き合ってたっけ、あれ結婚してたっけ、そんで誰と誰がそれを快く思ってなかったっけ、仕事現場がギッスギス、なにここいつからビバリーヒルズ青春白書的なことになったの、そんでなんで誰も彼も本音という名に甘んじた愚痴を私に浴びせてきたっけ?

当時よく行ってた渋谷の人間関係というカフェの店名に、やかましわあほんだら!と憤る程には(ひどいとばっちりだすみません、今でも行きます、好きです)、人間関係に疲れていた頃。
あちらもこちらもまあまあ、となだめ、少しでもいい雰囲気にするのは自分のためだ、私これから歌うんでねってレコーディング。
よりによって、こちとらが気ぃ遣っていただきたいんすけどと言いたくなるような曲、シリアスなバラード、speenaの9枚目のシングル ”月に鳴く”。

ジョンとヨーコの気持ちもわかるけど私は俄然ポール、音楽、特にレコーディングという、私から生まれた感情を歌と音にする、作品にする、収めるというサンクチュアリに、たかがエロスやら井戸端やら下等な精神を持ち込んでギスギスしてくれるな1ミリもだ、と言ったところで今日の歌入れがどうなるわけでもない、もう人を見なかった、話をしなかった、その人が出す音しか聴かなかった、いつも以上に固く目を閉じて、月に鳴いた。


そんなー 時代もー あーったねと〜〜〜

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私は元来、争いごとを好まない平和主義girlなのよ。



月に鳴く / speena


歌詞。
まんますぎて言うことがないけど、少しだけ。
彼に愛されず自分に逃げた、誰かによしよしと頭をなでで欲しかった。
こんな時のために適当な男が何人かいれば、もう少し壊れずにうまいことやってけるんじゃないのかとも思いつつ、性に合わないから困るわね。

あたしの恋はもう限界で、ベランダでしゃがんで泣いたら月が見ていた。
そんなあたしを、あたしが抱きしめる、あたしの事を、私と呼びながら。
この世界で生きるしかない私(あなた)の傷は、あたしが代わりに歌ってあげる、そんな感覚が一番近いかもしれない。
素の自分、強くあろうとする(理想の)自分、全てを俯瞰で見る自分。
人ってだいたいみんな、こんな感じで3人くらい自分がいるんじゃないかね、どうですか。


この曲で初めてスタッフから歌詞の直しの提案が入る。
歌いだしのサビをラスサビのそれと入れ替えるのはどうだろうか、と。
とんでもないことを言うもんだ、この形で出てきたものをゴチャゴチャと組み替えるのならばこの曲である意味がない、だったら他の曲にすべきだと跳ね除けた。

でも気持はよくわかる、いいかげんspeenaを売らなきゃいけない、どうしたら売れるんだろう、ジレンマはなぜ売れたのだ、歌いだしのインパクト?
でもだからってその上っ面だけ模倣してもどうよ、タナトスから始まったspeena第2章、いろんなタイプの曲をシングルにしてきた、でもどれもジレンマを超えない、speenaの芯とはなんだ?これがspeenaだ!と言えるものはなんだ?

毎晩のようにスタッフとそんな話をしてきたんだ、私だってなんとかしたい、でもアーティストとしての私はそれを聞き入れてうまいこと作れるような人間じゃない、そこは相容れないのだ。


曲、レコーディング。
上田ケンジさんにアレンジを頼む。
冬の日のベランダ、眼前に白く光る大きな月、車も時々通るだけの静かな夜、私は今どこにいるのだろう?
わからなくなる暗闇に時計の針の音のようなドラムループ、ひりついた心のささくれを包むような優しいストリングス、瞬く星は鈴の音、2番が終わってショーコとシホ、おケンジの演奏が入る、あたしが誰だかもうわからないと泣く胸を代弁するかのようなエモーショナルなストリングス、それら全てを、月だけが見ていた。
私の脳内をこんなにも美しい音楽にしてくれてありがとうございます。


PV。
CDジャケットの素晴らしいイラストを描いてくださったイラストレーター、北沢バンビさんの絵とこれまた素晴らしい脳内宇宙CG的映像の融合。
「いつかきっと」と、いつかを待つ間に膨れ上がってゆく怒り、疑い、憎しみ、総じて黒い感情は恋心をも黒く染め上げて、いつしか私の胸を突き破って私を壊す。
このラストが大好き。




” あたしは自爆した 憂鬱の風船みたいに

  淋しいのに 苦しいのに

  どうしたいのか わからないの ”



もう逃げ方も忘れてしまった
あまりにも長く曖昧なあなたを見ていたら
おかしいのはこっちなのかとすら思えてくる
ただ確かなのは、それはあたしを曇らせていく一方だということ
あなたへの想いも曇っていって、果ては真っ黒になるということ

そんなあたしとなぜ一緒にいるの?
キラキラしてたあたしが曇りゆく様を見ていてなぜ
あなたは変わらずにいられるの?



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24ラブソング

歌詞。
20年来、もっとか、の親友への賛歌。
誰がなんと言おうと、問答無用で最高に素敵な彼女を
泣かせるなんて100年どころか、生まれてくるのが早いわもう
誕生日に彼女がくれたおもちゃのピストルをイントロにすれば
愛をぶっ放す支度はよろしくてよ。

部屋でデモ作ってて昼寝して見た夢に、ケータイにつけてた赤いトカゲが出てきて、耳たぶを喰いちぎったから歌詞に入れたり。


曲、レコーディング。
アレンジ、ほとんど私のデモのまま。
誰かにお願いするのがもう正直、疲れていた頃。
いつものライブメンバー、ベースは森繁”モリッC”卓、キーボードは五十嵐慎一。
デモのオルガンが倍音出てて、それを気に入ったシホが入れたがった記憶。
マルゴレッタのデモの私のへったくそなギターとか、つづれおりの最後のラララのシャープしてるところとか、音は外れてるけどそれがいい、みたいな感覚をシホちゃんは持ってるよなあ。いいならいっか、と思えたもんだよ。




” あなたの頬が いつの日か

  また濡れてしまうことがあっても

  乾かしてしまう体温さえ

  あれば結局の所 大丈夫。”



恋に泣いた全てのgirlsへ、あなたはステキ。




またいつかショートにすることは決まっています。

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「月に鳴く」をアルバムの先行シングルとしてリリース、2nd Album「chu chu d'e vista!!」リリース、たぶんそれを引っさげてマンスリーライブを東京と大阪でやってた頃かな。
電車にちなんだタイトルで、アコースティックライブの時はお座敷列車ってつけて、私は座って歌って、お客さんにも座ってもらって、あれ好きだった。
ショーコがお客さんに「ずっと座ってるとお尻痛くなるから、右尻(うじり)と左尻(さじり)を交互に上げてね」ってmcに笑ったなあ。
フルバンドだと中音がでかくて、自分の歌声が聴こえないからがなってて、ロックならいいけど、バラードをいつもどおりに歌えないフラストレーションが溜まってたの、アコースティックライブは力まず自然に歌えて気持ちが良かった、ボーカリストというかシンガーという感じがした、自分の声が聞こえるからピッチもいいし。

おケンジと組んできたチームspeenaはここで終わる、カナコの作る世界を表現するにはメンバーの演奏スキルが限界だとどこかで誰かが言っていた、最近やりにくいなんて意見をどこかで聞いた、チュチュ製作時、歌いにくいからもっとこうして、とメンバーに言う回数が増えた私、不協和音(音楽に真剣になっていく故のそれ)が鳴り始めたこの頃、バンドサウンドと歌もの、それぞれの演奏の違いを理解し始めた、私達はこういうのがやりたいんだよ、と明確に音で表せない3人娘、スタッフもそりゃ頭を抱える、結果、オリジナル作るのやめよう、カバーアルバムはどう?ときた。

自分たちの今とこれからを見直すいい機会だ、この頃ポップとはを追求し始めていた3人娘、でもそれはオリジナルでやりたいメンバーと、名曲の肩を借りて勉強するいい機会だと乗り気な私、初めて意見がぶつかった、前向きなバトルとなるか、音楽性の違いとなるか、この頃にはわからなかったね。

私の中で確かだったことは、現状維持に未来はない、という思い。
音楽も、そして恋も。



読んでくれてありがとう。すきすきすー。

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