少女が初めて手にする宝石、それはルビー
よく言うよね。少女がキラキラ光るものに目を輝かせる、最初は朝露、冬の朝のつらら、次はビー玉かな、プラスチックな色とりどりの宝石を模したおもちゃのペンダント、チョコレートのオマケのアクセサリー集めてたな、そしてママンのジュエルボックスに並ぶ宝石たちを眺めてはトリップして、いつしか大人になった少女に最初に贈られる宝石は、ルビー。まだあどけなさを残した頬や若い胸と、一点の曇りもなく一途に光る真っ赤な石はよく似てる。歌姫に憧れてその一歩を踏み出した女の子は、新しい自分と二人の王子様に ”Rubii” と名付けて喉を震わせた、あの日の私にもう一度会いにゆく旅、第二弾。
ミュウジック、スタート!
Rubii ♡ wonder trip
4. STILL LOVE
わーお、めっちゃ16ハネグルーヴィーな曲。やばい、いい曲。でもこんなん歌えんの?大輔どしたの?あなたの引き出し、どうなってんの?本当に19才?two mixばっかり聴いてるただの男の子じゃないわね、やっぱり素敵。そして私、すげーがんばってるね。ハネ切れてないながらに、音と一つになろうと。サビ前からサビに向かうコード進行と、思い切りのいい決めフレーズが大輔らしい。そして最後のフェイクを突如華麗に決める加奈子がいじらしい。私はいつも ”私すごい” で話を終わらせるフシがあるらしいけど、しかたないね、本当だから。
この曲を聴いた時、いつものカッコいいクールクールなものとは違うそれに胸が躍ったのを覚えてる。だので、昔からよく聴いてた好きな音楽みたいな感覚に、いつもとは違う歌詞がアホほど乗る。”切ない” という言葉は私にとって、巷でよく言う「きゅんときちゃって涙がでちゃう」センチメンタルで甘ったるいもんじゃなく、「引っ張れば意外と伸びる心筋がブチブチと音を立ててちぎれゆく痛みに悶絶する」一つの想いの死、という感じなので、失恋の痛みを綴ったんだ。あれは痛いよな。
17の夏、彼と私は文字通り ”ひとつ” だった。私は彼の腰に、彼は私の肩に手を置いて歩く、ひとつの塊と化したカップルは、登下校時の名物だった、かもしれない。好きな子がいる、叶わないけどね、ならあたしにすれば?あのことしたいこと全部あたしとすればいいよって始まった恋は、真夏の雷雨みたいな衝動だらけの青い匂い。彼の心が離れてゆくのに体を離さないその優しさに、サヨナラを言ったのはあたし。でも本当は、その心が欲しかったよ。ほら、切ないでしょう?二度といやよ。
”あなたのあの笑顔は 私だけにむけられていた
私は愛されてた そう信じていいでしょ?”
優しいあなたは、うん、そうだよって笑ったね、そしてそれはあの日の私にとって、もう疑わなくてもいい真実だったんだろう、恋の終わりとはそういうものだ。
5. もう一度...
ごめんなさい、これは泣く。大好きな友達へと歌ったものだ、14の秋に青いお空へと旅立った、私の初めての親友の歌。レコーディングの歌入れで不意に泣いてしまって歌えなくなった私に、コンソール(エンジニアさん達と、メンバーやスタッフみんながいるでかい部屋)からヘッドフォンを通して「どうした?」と声がする。理由を話すと、当時歌のプロデューサーだった丸山がんこさんが「ちょっとみんな、一旦ここから出てー。」と優しい声で話してたな。加奈子ちゃんこっちおいでって、しばらく二人きりで話をして、落ち着いた私がスタジオの2階に行くとみんながいて、大輔がビリヤードしながら「おっ、落ち着いた?」晋也がソファに沈みながら「なんか飲む?」マネージャーの愛子が「大輔、ビリヤード下手なんだよ笑」と、愛あふるる優しさで迎えてくれたな。
曲の後半には親友を包み込むかのような、空へと届きそうな大輔の鐘の音、涙の一歩手前で歌う私に寄り添うような晋也のギター、スタジオの照明を落として小さなライトで私を照らしてくれるレコーディングスタッフさん達の優しさ、その全ての時間に惜しみないお金を注いでくれるSONYスタッフ達、あの日あの場所にいた優しい人達みんなで紡いだこの歌はきっと、親友にも届いたはずだ。
”「逢いたい」それさえ言えない私を 何度も何度もどうしてと思った
切ない想いがつのる毎日に 変われない私を泣きながら見ていた”
逢いたいってことは、一緒にいないってこと。逢いたいと言えないってことは、言っても逢えないとわかっているから。わかることが何よりも、切なかったから。
6. MY SWEET LOVE
これまた素敵な16で。いいよね、16。好きです、16。歌に重きを置いた、シンプルな曲ね。美しいコーラスがあれば、あまり多くの音はいらないことがよくわかる。そしてきっとそれは、後の私の作曲スタイルにも多分に影響してくるものだ。この頃には自分が曲を作れるようになるなんて、思いもしなかったけどね。
素敵なコーラス隊は藤原美穂さん、Wornell Jonesさん、そして後にspeenaのsixteenでもコーラスをしていただく未来が待っている、Melodie Sextonさん。いつも力いっぱい歌っていた私に、”ささやくように歌う” 事を教えてくれた、素晴らしきシンガーの皆様。この曲はもう、それに尽きる。けど大輔のらしさって、bメロ前後に如実に現れるな。なんといってもノスタルジックなメロディーメーカーなのよね。作曲の全てはそこよ。ベースの位置(リズムや休符)で、曲全体の雰囲気がこんなにも変わるとは!ってことに初めて気づいた曲。
歌い手としては、いつもお風呂で鼻歌まじり、かるーく歌うっていうのをやりたくて挑戦した記憶。ミックスボイスってやつが苦手の極みで。宇多田ヒカルさんがとてもお上手な歌唱スタイルね。しっかり、軽く、きちんと歌うことの難しさよ。
”I miss you tonight, tonight. 寒い夜を越えて
I'll send you my sweet sweet love. 逢いにゆくわ”
遠く離れていても、どこかにいるあなたに、いつかまた逢えるから
今も胸の奥で聴こえてるうたを信じているよ、青いお空で待っていてね。
今日はここまで。ふぅー。
たしかデビュー前からあった曲がSTAND UP,BABY、WAKE UP MY HEART、もう一度...と、後半出てくるSPUNKYあたりで、他の曲はアルバム用に新しく書いたような記憶。当時のスタッフSONYな大人達の想い、今ある曲をまずは全部出させよう、これは一つの完成した世界だから、そして出し切った後に生まれくる新たなものを共に創ろう作戦だったのだと、いつか誰かに聞いた。なるほどね、と思ったのと同時に、なんて深い愛情だよ、と感動したの覚えてる。ほんと、8ヶ月で解散してすみませんでした。大輔の代わりに謝りますって、時効か笑。
こうやって、捨てたはずの思い出をまた拾い集めていくの、いいね。忘れたらもったいない、煌いたおもひでがいーーーっぱいあるんだな。一人ひとりの顔を、声を、言葉を思い出すよ。どんどん人を好きになる、いい旅だ。
読んでくれてありがとう。好き。
著者近影
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