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生活記3|時間が飛んでいったベルリン2週目

丁寧に、毎日何が起きたかを反芻しながら過ごせた1週目とは異なり、2週目のベルリンはあっという間に過ぎ去ったため、3週目が終わろうとしている今、振り返りつつ書いてみる。

「時間があっという間に過ぎる」というのを、英語では「Time flies.(時間が飛ぶ)」と表現できる。ドイツ語では・・・まだわからない。調べることもできるのだが、生活や会話の中で偶然出会う時の喜びのためにとっておこう。

滞在10日目、5月14日

教会の中でヨガをした。人生で初めてのヨガ体験だった。渡航前に何気なくAirbnbを見てその体験の存在を知った。

Vinyasa Yoga in an antique Chapel
(古いチャペルでヴィンヤサヨガ)
Grimmstraße 10, 10967 Berlin

今これを書き始めるまで把握していなかったが、「ヴィンヤサヨガ」というのは呼吸と型を一体化させ、動きの「流れ」を意識するヨガだそうで、つまるところ常に身体を動かしている。

ヨガというと「運動」のカテゴリの中でおとなしいイメージがあった私(最後に運動らしい運動をしたのが高校の体育の授業以来という私)は、この「動き続ける」ヨガに驚かされた(「こんなに動くの?え、膝もっと後ろ?それはちょっと...」などと心の中で言っていた)。

とはいえ、無理のない範囲で動かしながら、その場にいた15人ほどの参加者の呼吸を聴き、自分の血液が体内を流れる感覚を得る。時間の幅がいつもより太くなったような1時間半を過ごした。このヨガについてはまたじっくり書きたい。きっと。

11日目、5月15日

Friedrichstraße(フリードリヒシュトラッセ)という大きな駅から徒歩数分のところにある、Dussmann(ダスマン)という本屋を訪れた。

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Dussman das KulturKaufhaus
(ダスマン クルチャーカウフハウス)
Friedrichstraße 90, 10117 Berlin

語学学校の先生にオススメされた文法の教科書を買うために立ち寄ったのだが、本、雑誌、漫画、外国作品、映画、音楽、レコード、文房具、紙、知育玩具(大人向けもあり)、など5フロアの大きな店内に幅広く展開され、教科書どころではなくなってしまった(買ったけど)。

„ANIME“コーナーにはジブリ作品、新海誠監督作品(『言の葉の庭』や『星を追う子ども』など)、細田守監督作品、『打ち上げ花火、下から見るか横から見るか(„Fireworks - alles eine frage der zeit“という副題)』、『攻殻機動隊』などが正面置きで50作品、陳列でおそらく120作品以上あった。

„COMIC“コーナーとは別に„MANGA“コーナーもあり、そこには„ANIME“の4倍のスペースで少年漫画(最人気はおそらく『NARUTO』)、少女漫画(『4月の君、スピカ』『Orange』『リビングの松永さん』)、ほかに『ばらかもん』『からかい上手の高木さん』やBLもの、百合もの、など展開されていた。

(余談)BL・百合漫画を100作品以上は読んだけれど、他ジャンルより好みが限定的なこともあり、知らないものがたくさんあって興味深かった。『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ(Meine lesbische Erfahrung mit Einsamkeit)』もあった。

(余談2)半田くんがドイツ語を喋っていて謎に興奮した。1巻8ユーロ。そういえば漫画に透明のビニールがかかっておらず、この地がエコロジー大国であったことを思い出した(そういう理由でかかっていないのか、「立ち読みされない/してもいい」など別の理由でかかっていないのかは不明)。

12日目、5月16日

Dussmannにて教科書の他に購入したポストカードを日本へ送るべく、Alexanderplatz(アレクサンダープラッツ)にある郵便局へ行った。昼時で6-7人ほど並んでいたが、整理券などはなく1列に並んでひたすら待つスタイル。4つほどカウンターがあり、数分で自分の番がきた。

短髪ブロンドヘアの受付の女性に呼ばれ、英語でよいか尋ねると「どうぞ(Please)」と促される。ポストカードを示しながら日本まで届けてほしい旨を伝える。1枚0.9ユーロ、4枚なので3.6ユーロねと言われ、支払い。切手を持っていなかったのでその場で貼ってもらったのだが、「90(セント)」と書かれた切手以外に「10」や「70」の切手も出し始めた。

大丈夫かなと見ていると、どうやら「90」切手が途中でなくなったらしく(そんなことある?)、「70+10+10」で「90」にして貼ろうということだった。そして案の定スペースが足りず、住所欄とは別に大きく赤字で書いた„nach JAPAN“の上に切手が貼られ、文字は見えなくなったのだった。

住み始めてから何度か体験している、「細かいことは気にしない」感にはだんだん馴染み始め、それが心地よくあるけれど、今回ばかりは葉書の無事の到着を祈るしかない。そういう不確かさも含めて、手紙を送るという行為がとてもすきだ。

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ベルリンは、ポストも郵便局も配達バイクも黄色。ロゴはホルン?と不思議に思い調べると、ローマ時代に郵便の到着を皇帝へ知らせるためにホルンが用いられたそう。音域がちょうどよかったのかな。

13日目、5月17日

2度目の金曜。語学学校の授業は平日9時から12時半までで終わるとは言え、やはり金曜になると多少のつかれというか「くたびれた感」が蓄積している。そこで自分を励ますために、ペンネを茹でた。「ペンネは外食でしか食べられない」というイメージを払拭することに成功した。

味が見た目を越えなかったけれど、いかように調理しても旨い玉ねぎと安いソーセージとトマト缶はそれぞれの役割を果たしている。80gが適量とあったペンネの言うことを聞かずに「スパゲッティは100gなのだから」と茹でたら、確かに多く、膨れ(すぎ)たお腹にしあわせを貯める感じがした。

自分で自分の機嫌をとれるようになって、嬉しい。

14日目、5月18日

語学学校の同じクラスに、バレエやコンテンポラリーダンスをするという日本人女性がおり、その方のパフォーマンスがあるというので見に行った。

Forum Factory
(フォーラム ファクトリー)
Besselstraße 13-14, 10969 Berlin

トリの彼女は初めから終わりまで一切喋らずに(声を出さずに)、「身体の動き」と「音(ジャンベなどのパーカッション)」でのパフォーマンス。後から聞くに「普段の自分のスタイルとは違った雰囲気で、即興で踊った。ベルリンっぽいイメージにした」とのこと。

対して、トリ前のパフォーマンスはロシアからきた女性。“Dancing poetry(踊る詩)”という独自の分野をつくり、「ピアノやカオスパッドの演奏」の上で「ご自身で書いたロシア語の詩を朗読」しながら「身体を動かす」。

生音の中で身体を動かすふたりのパフォーマンス、異なるのは「言葉」の有無。それぞれが鑑賞者の想像力をかきたてて心地よく時にスリリングで、またそのふたつのパフォーマンスを連続して見られたことがとてもよかった。会場を出る頃には夜の11時40分を過ぎていて、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。電車は夜通し動いている。

15日目、5月19日

フライパンで米を炊いた。

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出発の前日、重量の都合で2キロを諦めて2合だけ持ってきた米のうちの1合を炊いた。電気炊飯器ともシリコン炊飯器とも土鍋とも飯盒炊さんとも違う味で、足りないものがたくさんあった。おこげのような香ばしさも、湯気から漂うお米の甘い匂いも、食べた時に口に広がるじゅわりとしたあの感覚もない。

それでも、自分で炊いた米は旨かった。残りの1合を食べるのがもったいなく、手をつけられそうにない。スーパーの米を試してみようかな。ご飯の写真は人にお見せできるものでなくいつもためらうが、今回は初炊飯の記念に。

2週目の記録を書きながら3週目が終わろうとしている。飛び続ける時間のしっぽをキャッチし続けていたい。

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