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緑玉で君を想い眠る

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結婚を控えた森白叶羽(もりしろ かなう)のもとに、脅迫状が届いた。結婚をやめろ、従わなければ式が血で染まる、と。  送り主は、中学生だった時自分を誘拐した犯人だと直感した叶羽は、…
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2024年6月の記事一覧

緑玉で君を想い眠る㉔

緑玉で君を想い眠る㉔



 誘拐事件から十五年の時を経て、再び事件は起ころうとしていた。

 脅迫状を読んで、違和感を覚えた。
 その違和感の正体に、すぐには気付けなかった。

 だが、あの人が、また何か企んでいることだけはわかった。

 家に帰ると、扉が大きな音を立てて閉まった。乱暴に閉めたのは自分だとも気付かなかった。

「ちょっと! 何よ!」

 リビングにいたあの人はそのまままっすぐに向かう僕に、珍しく動揺し

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緑玉で君を想い眠る㉕

緑玉で君を想い眠る㉕



 彼女が殺されたと聞いて、一瞬、一昨日の口論の時に自分が殺してしまったのではないかと感じた。

 死亡推定時刻、僕は事務所にいたことが確認されており、容疑者からは外れていた。

 首を絞められた跡があったそうだ。口論の前に一方的に胸倉を掴んでいたのを思い出して、犯人でもないのに後ろめたい気持ちになった。

 光の森公園で遺体は発見されたらしい。平日の夜に、そんな場所に行った心当たりはないか、

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緑玉で君を想い眠る㉖

緑玉で君を想い眠る㉖

六話:目覚めた時に、


「馬鹿なこと言わないで! そんなことのために……!」

 二人が何を話しているのか、ボクには聞こえなかった。叶羽さんはボクに背を向ける形になっているし、守さんは大怪我を負っている。でも、叶羽さんのその叫び声だけは聞こえた。

「安静にして! 動かないで!」

 何を思ったのか、守さんは立ち上がろうと、体勢を変えていた。左腹部のナイフが刺さっている辺りを押さえて、そのまま

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緑玉で君を想い眠る㉗

緑玉で君を想い眠る㉗



 何か用途があるわけではないデザイン目的の木の枠がある、ベージュの壁、ダークグレーの床、ブラウンのシーツの掛け布団、枕とボックスシーツのみが白の室内は、とても病室だとは思えない。こんな部屋をポンと用意できる霧島家は、ボク達とは違う世界の人達だ。

 桜ノ宮大学病院の特別室に、ボクと叶羽さんは来ていた。

 その部屋で眠る守さんは、あれから五日、意識が戻っていない。

 新婦とゲストの二人が病

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緑玉で君を想い眠る㉘

緑玉で君を想い眠る㉘



 翌日も守さんのお見舞いに来てみると、面会謝絶の札が掛けられていた。

 あの後ボクが帰ってから彼は、お見舞いに来てくれた玉井家の人達と、一悶着あったらしい。「何で今そんなことを明かすんだ!」「何のために他人の結婚式に行かせたと思っているんだ!」「お前が娘を殺したんだ!」という声で騒ぎに気付いた担当医の久我先生が駆けつけると、見舞い客が守さんに掴みかかっていたらしい。昔空手をしていたという彼

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緑玉で君を想い眠る㉙

緑玉で君を想い眠る㉙



 家に帰ると、叶羽さんはソファーに腰掛けて、そのまま背もたれにもたれかかった。布で体は滑って、深く腰掛ける形になる。ぐでんとダルそうにして目を閉じている。

 退院してから、外出した後は、こうなることが多い。気分の浮き沈みは減ってきているものの、まだ完全に回復したわけではないのだろう。

「……叶羽さーん、よかったんですか? あんなこと言って……」

 お疲れの時に聞くのも無神経だろうか。

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緑玉で君を想い眠る㉚(最終話)

緑玉で君を想い眠る㉚(最終話)

They sleep thinking of ……

 会話が途切れた。

 私達の席ではない。私の左斜め後ろの、老夫婦の会話だ。食器が擦れる音が微かに聞こえた。先ほど運ばれていた紅茶を飲んでいるのだろう。

 私はその瞬間、意を決して振り向き、声を掛けた。

「あの、すみません」

 私に席が近かった老夫婦のご婦人が、振り向いた。彼女の正面に座っていた紳士も、私の方を向いた。

「エメラルド婚式

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