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世界で一番、幸せな場所。

公園からの帰り道、車を走らせながらふと目をやると、古いアパートの前に車が停まっていた。そのわきに、若い男性が立っている。眼鏡をかけ、よれよれの部屋着に、ボサボサの髪、無精髭。そんな口元には、柔らかい微笑みが広がっている。そして彼は、優しい眼差しを自分の腕の中に向ける。そこには、退院して帰宅したばかりなのであろう、目も開かない赤ん坊が抱かれていた。ふにゃふにゃで、ちいさなちいさな我が子との対面。
ほんのわずかな時間、目の前に広がったあの光景は、私の脳裏に鮮やかに焼き付き、胸をギュッと締め付けた。
きっと今日も世界中に、様々な「幸せの瞬間」が訪れたであろう。しかし、あの時あのアパートの前に降り注いでいた日差しほど、温かく優しく、眩しいものは無いと、私は思う。

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