見出し画像

231223_気候変動に対して何ができるのか?

観測史上最高温度を記録した今年。
気候変動は、世界にどれだけの影響を与えているのか。

【気候変動の原因】
①発電
石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃焼させることによる発電や発熱が、温室効果ガス排出の大部分、約4割を占めている。
現状でも、太陽光や風力など再生可能エネルギーから作られる電力は1/4程度に過ぎない。
人類が電気を発見した歴史は古く、紀元前600年前、ギリシャの哲学者タレスが、琥珀を布で擦ると静電気が発生することに気付いた。
それから2000年後の1600年、イギリスの学者ウィリアム・ギルバートが近代的手法で静電気を解明し、1752年アメリカのベンジャミン・フランクリンが雷が静電気であることを証明する。
1780年、イタリアのガルバーニは2種類の金属から電気が発生することに気付き、1800年、同じくイタリアのボルタは銅と亜鉛と食塩水を使って、電池を作れることを発明。
そこから急速に研究が進み、電話機、電球、ラジオやテレビの発明と、産業革命に伴って電気の実用化が進んだ。
1882年、ニューヨークのパールストリートに、世界初の集中式火力発電所が出現した。
電灯を普及させるために、エジソンが建設したと言われており、蒸気機関によるものだった。
(蒸気機関は18世紀初頭から半ばに発明され、機関車や船に使われた。)
火力発電所はその後100年以上、効率的な電力供給方式として産業発展に貢献してきた。

②製造
セメントや鉄、鋼、ガラス、電子機器、プラスチック、衣類などの製造に必要なエネルギー作り出すために、多くの化石燃料が燃焼されている。
セメントなどは特に古代エジプトのピラミッドまで遡るほどに歴史は古いが、急成長したのは電気の発明と同じく産業革命以降となる。
粘土や石灰石を焼成し粉末にして原料とすることで、より強固なコンクリートを作り出した。
ちなみに、世界最大の石積みの建造物は、現存するアメリカのフィラデルフィア市庁舎であり、高さ167m、9階建てとなる。
1871年から1901年まで30年かけてようやく完成されたが、1904年にはパリのモンマルトルで世界初のRC造と呼ばれるサンジャン教会が建設されたため、以降時代は組積造からRC造へ移り変わっていく。
遠く離れた日本でも、1911年には横浜の日本大通りに日本初のRC造で三井物産が建てられていた。
サヴォア邸が1931年、落水荘が1936年と、近代建築史の発展も産業革命と同時に進んだ。
鉄やガラスの加工技術の発達により鉄骨造も開発され、1851年ロンドンのクリスタルパレスがきっかけとなり、1889年にエッフェル塔が建設され、普及が進んでいった。

③森林破壊
森林破壊の原因は、農地の開墾や伝統的な焼畑農業、山火事などの災害、木炭や炭、産業のための資源利用が挙げられる。
文明が急速に進歩した19世紀以降、特に20世紀後半は熱帯雨林を中心に、ブラジル、コンゴ、インドネシアなどの森林破壊が進んだ。
世界の森林は8000年前と比べて8割以上消失している。
1990年から2020年までの30年間で、年平均600万haの森林が消失された。
例えば、適切に手入れされた40年生の杉の人工林であれば、1ha当たり年間約8.8tの二酸化炭素を吸収する。
2020年の世界の二酸化炭素排出量は314億t。
2050年にカーボンニュートラル、温室効果ガス排出ゼロを目指すには、単純計算であと35億haの森林が必要となる。
これは世界の森林面積40.3億haの1.85倍に当たる…。

その他、乗用車やトラック、船舶、飛行機、輸送手段のほとんどに化石燃料が使用されている。
ただし、これらは単独の問題ではなく、それぞれが人間の生活に絡み合って結びついている。
例えば食糧生産においては、農地開拓のために森林を破壊市、加工製造のためにエネルギーを使用し、流通のために輸送燃料を消費している。
そのおかげで、先進国の人々は豊かで快適な生活を送ることができている。

【気候変動の影響】
①気温の上昇
温室効果ガスは急速に地球を覆い、現在の地球は1800年代と比べて1.4度温暖化している。
暑さは山火事を引き起こし、森林消失への負の連鎖を起こしている。
特に、古い木片や枯れ木が分解されずに堆積した泥炭地は、通常の土壌の20倍の炭素を蓄えており、山火事で燃え広がると大量の二酸化炭素を排出する、炭素爆弾と呼ばれている。
また水温の上昇に伴って海水の体積は増加、氷床が溶けることでも海面は上昇し、海洋生物の環境変化が進んでいる。
また海の温暖化に影響されて、サイクロン、ハリケーン、台風の激しさ、頻度が増している。

②干ばつの増加
アフリカ諸国では川が干上がり、干ばつが起き、二酸化炭素の排出量は少ないにも関わらず、世界の人類全体の影響を強く受けている。
雨が降らないため農作物を育てることができないが、インフラや流通網がないため水が届かない。
森林伐採の影響もあり、降水量が30%低下、農地の6割が砂漠化している。
故郷を離れて避難し、気候難民と呼ばれる人々が急増している。
生物は古くから土地や水を巡って争ってきたが、近年比較的保たれていた世界のバランスが、急速に崩れていっている。

③食糧不足
気候変動と異常気象の増加により、飢餓と栄養不足が世界中に増加している。
これは日本の物価高へも直接的に関係していて、また気候変動対策のためのエネルギー供給バランスの変化もその要因となっている。
例えばとうもろこしの生産量は大幅に減少し、その6割がバイオエタノールとして製造業に流出し、その結果畜産飼料の高騰が起こり、離農する農家が急増し、畜産物の価格へ影響が出ている。

【気候変動の対策】
30年前、すでに温暖化は問題視され、科学者たちは今の未来を正確に予測していた。
1997年、COP3では京都議定書が採択され、先進国へ温室効果ガスの削減義務が課されたが、2001年にはアメリカが経済への悪影響を懸念し、離脱を表明した。
デフレ状態の日本でも大量生産大量消費が続き、京都議定書の削減目標は達成したものの、政治的な意思は明らかに欠けていた。
一方、ヨーロッパでは早い段階で環境問題を意識したビジネスへの投資が進んでいた。
現在はヨーロッパが先導して、化石燃料を削減して再生可能エネルギーを増加する政策を進めているものの、気候変動解決のための道筋が見えているわけではない。

・EUでは2024年から、森林破壊防止のためのデューデリジェンスが義務付けされる、世界初の試みが採択された。
EU内で販売、輸出する食料から原料まで全てのものが、森林破壊によって開発された農地で生産されていないことを証明しなければならない。
どこまで厳罰な判断がされるのか詳細な規定がないため、EU国内でも方法を模索している現状だが、日本にもその影響は少なからずある。
例えば、高解像度の衛生画像を用いて、リアルタイムに森林の消失を監視するシステムなどが利用されている。
またある企業では、資源利用を再生可能な人工林からに限り、原生林に手をつけない流通網を築いている。
しかし、世界中のサプライチェーンを遡って、原料農家まで追跡した管理、トレーサビリティが必要となることで、企業には大きな負担がかかっている。

・グレートグリーンウォール
アフリカでは2007年から、サハラ砂漠の拡大を防止するため、そして気候危機の最前線に住む何百万人もの人々の生活を変革するために、荒廃した土地に森林を再生させるプロジェクトを進めている。
アフリカ大陸を8000kmにわたって横断する、人類史上最大の植林プロジェクトである。
雨が少ないところでも育つ、アカシアの木を植え、木々の根が水分と養分を蓄えることで、不毛の土地で農業が可能になる。
2017年までの10年間で約15%の植林が進んだものの、管理不足などで枯れてしまう割合も非常に高く、一進一退を繰り返している。

【思うこと】
地球温暖化、オゾン層の破壊、少子高齢化について、何年も議論されニュースで話題にあがっていたものの、直接的に自分たちの生きている時代には大きな影響はないのではないかと考えていた。
また、日本は特に島国であることも関連し、海の外で起きているニュースと、自分たちの生活との関連性に対する意識が低かった。
そして、一つ一つの問題は認識していたけれど、そのつながりや関連性にまで考えが至らなかった。
それらに気付いたのは、コロナ、ウクライナの戦争、気候変動により、直接的に物価高の影響を受けたからである。
気候変動対策はSDGsの課題解決にも関係することだけど、環境問題に対して中堅企業の投資意欲は低く、地球よりも営業利益を守ることを優先している。
しかし、環境問題は投資のチャンスだと語るヨーロッパのビジネスマンの目は輝いていた。
企業としての責任、先進国としての責任、それももちろん必要だけれど、そうではなくて。
過去の負債を償うために、犠牲を払うのではなく、持続可能な社会、未来の繁栄のために、今ならまだできることがあるんだと、前向きに考えられる経営者がどこまでいるか、ということなんだと思う。
もちろん、働き方改革による人材難や、資材高騰による競争力の低下、技術の継承、品質不足など、目の前の問題を置き去りにしていいわけではない。
それでも、一つ一つの問題を切り離さず、複雑な結びつき、相互効果を考えて、一緒にできることから解決していくしかないのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?