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240113_なぜドイツ人はヒトラーに魅せられたのか?

今のドイツから、ナチスドイツ時代を想像するのは難しい。
でも、ドイツには今でも多く、ナチスドイツの遺構が残されていて、子供たちは教育の一環でそれら遺構や収容所へ訪れることもあるという。
(ガス室に寝かせられてトラウマになる子もいるとか…)
日本にある戦争の歴史博物館は、そのほとんどが戦争による被害を訴えるもので、自分たちの起こした悲劇…加害については語られない。
アメリカもそんな感じなので、大抵の国はそうなのかもしれないけど、少なくとも同じ枢軸国、侵略戦争を起こした側、そして敗戦国であったのに、ドイツとは違う道を歩んだ。

戦後の日本を作ったのは、GHQだと言われる。
(もちろんそれが全てではないけれど…)
では戦後のドイツを作ったのは、誰だったのだろう?

ニュルンベルクへ訪れた際に、ヒトラーの遺構の一つであるドク・ツェントルムに行った。
当時の写真や映像や新聞なんかが展示されていて、二度と同じ過ちを犯さないという強い意志が感じられたのと同時に、独裁者の代名詞とされているヒトラーがただの人間であり、家族がいて、今もその血筋を継ぐものが生きているということを知った。
(ただし直系はおらず、ヒトラーの弟の子孫である彼らは、ヒトラーの血を絶やすため決して子供は作らないと誓っているらしい…。)

1918年、第一次世界大戦に負けたドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン、ロシアの4帝国は滅亡した。
1919年、ドイツ帝国はヴェルサイユ条約を締結した。
全ての植民地を失い、領土の一部をベルギー、チェコスロバキア、ポーランドに割譲し、軍縮を命じられ、多額の賠償金を負った。
1920年、ナチスの党員は3000人ほどだった。
兵士は行き場をなくし、市民を大恐慌が襲い、大量の失業者が出て、皆が貧困に喘いでいた。
義勇軍に入る者も多く、その大半が後にナチスドイツを支持した。

1889年、アドルフ・ヒトラーはオーストラリア=ハンガリー帝国で生まれた。
父親の仕事の都合でドイツ帝国を転々とし、家父長主義的な父親への反抗心からか、大ドイツ主義へ傾倒していった。
小学校を卒業し、問題行動を繰り返し中等学校を退学したヒトラーは、職にもつかず画家になりたいと夢を語っていた。
両親を亡くしたあと、兵役逃れのため各地を転々としていたが、第一次世界大戦に従軍し、周囲から高い評価を得た。
敗戦後、帰還兵への政治教育を行う部隊に入ったヒトラーは、演説の才能に気付いた。

30代のアドルフ・ヒトラーは、ドイツ労働党、通称ナチ党の活動にのめり込み、大衆の訪れる酒場、大学、あらゆるところで演説をした。
低い声で静かに話し始め、終わる頃には聴衆は熱狂していた。
民衆は皆、怒りを抱えていた。
ヒトラーはドイツを一つにし、ヴェルサイユ条約という足枷をなくすと掲げた。

1932年7月、ナチ党が得票率37%を獲得し、初めて第1党へ躍進した。
1933年3月、ナチ党と連立与党は過半数の議席を確保し、ヒトラーは全権委任法を可決、独裁制を確立した。
ヒトラーがドイツを支配していた1933〜1945までの13年間で、ナチスドイツはポーランド侵攻により第二次世界大戦を起こし、欧州のほぼ全土を占拠しておよそ600万人のユダヤ人をホロコーストにより殺害した。
ドイツ国民4400万人のうち、何割が戦争犯罪に加担し、何割がヒトラーを支持したことを後悔したかわからない。

戦後残ったナチス党員はおよそ800万人。
連合国は親衛隊、ゲシュタポの人間、ナチスドイツ関係者全員を集め、戦犯から一兵士まで5段階に分けて、ナチス上層部5万人を特定し、ナチズムの根絶を目指した。
結果9万5千人が罪人と認定され、数千人が命を落とした。
残りの者はドイツ再建に尽力したが、罪を逃れた者も多くいたと言う…。

【終わりに。】
Amazon primeで、「ナチスの証言 党員への尋問の記録」というものが見れます。
ナチスドイツは宗教である、ということがよくわかります。

貧困の中、退廃していく世間の中、自分たちの生命を守るため、社会を変えるため、強い祖国を作るため、アーリア人種至上主義を信じていった。
そして、ヒトラーは、ナチスドイツという宗教…幻想の物語を使って人々を魅了する、天才的な役者であり、プロデューサーであり、脚本家であった。
第二次世界大戦に突入するおよそ10年前、ドイツはベルリンオリンピックにて、ヒトラーの力による戦後復興を示した。
多くの人々は愛国心を高め、ファシズムを受け入れ始めた…。

まるで、今のロシアを見ているようだと思いました。
歴史は繰り返す。
ナチスに傾倒したドイツは、ドイツ人が特別に愚かだったからというわけじゃない。
どの国にでも、起こりうることなんだと思いました。
強い愛国心、それはつまり、諸外国を排除する考えにつながる。
宗教もそう。
家族だってそれに近いところがある。

人間は今だけを見て生きられない。
歴史を知り、過去と未来を憂いて希望をなくし、生きるために何かに縋る必要がある。
自分は何者なのか?と。
その依存心自体が悪いものではないけれど、それらが戦争につながりうるものだということは知っておかなければならない。

中学生の頃、ジョン・レノンのimagineを初めて聞いた時、綺麗な旋律だけども、何がそこまで特別なのだろうと思った。
戦争を否定しているわけでもないし、愛を湛えているわけでもないし、直接的に平和を示しているようには思えなかった。
今になって聞くと、まるで別の曲に聞こえる。

911のあとすぐ、オノヨーコがニューヨークタイムズに広告を出して、imagineの一節を載せたという。
しかしアメリカは、平和を願うこの曲を、兵士の士気を削ぐものとして放送自粛リストに入れた。
世界は、人間の根本はやっぱり、変わっていないんだと思う。
プロパガンダは決してなくならない。
国や宗教がなくならないのと同じように。

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