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2019美術展3選

あけましておめでとうございます。
年が明けてすでに1週間ほど経ってしまいましたが、2019年に観た展覧会についてまとめておきます。全体的におもしろいものが多く、わりと当たり年だったなという印象でした。中でも印象に残った3つをご紹介します。

1 : アートプロジェクト神戸 TRANS-

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http://trans-kobe.jp/
ローカルすぎたのか?あまりTwitterなどでも言及されているのをみかけなかったイベントですが、とてもよかったです。

この企画、参加アーティストはふたりだけ。かつやなぎみわは10月頭に行われた演劇のみの参加なので、期間の大半はグレゴール・シュナイダーによる12点の連作のみという、自治体企画としてはかなり尖った構成だったのですが、それがよく効いていて、芸術祭にありがちな総花的な印象が全然なく、超ソリッドでした。

1. 作品それぞれのクオリティが非常に高い
2. 極めてサイトスペシフィックである
3.  人数制限があって静かにじっくり見られる
と3拍子揃っていて、シュナイダーのつくりだす、虚構と現実の間に落っこちてしまうような不安感や、過去の時間が目の前に立ち上がるような静かな恐怖を、ものすごい没入感で体感することができます。しかもそれを連続して12個体験することになるので、どこまでがこの街のリアルでどこからが作品なのか、移動の合間すらも、彼の提示する世界をどこかに感じてしまうという仕組み。神戸の中心街から電車で1駅ほどの距離にありながら、どことなく寂しい印象の新開地にとてもフィットしていました。
とはいえ都市部なので電車でスムーズに移動できるのもストレスがない。
次回以降は未定とのことですが、ぜひまた開催してほしいなと思っています。

2 : 目黒区美術館「世紀末ウィーンのグラフィック」

2019年は日本・オーストリアの国交樹立150周年ということで、ウィーン関連の大型展がたくさん開催されていましたね。東京都美術館のクリムト展もとてもよかったのですが、仕事柄、グラフィックに注力したこちらの展覧会が一番印象に残りました。本の装丁やポスター、DM、さらには当時のデザインアイデア本(当時からこういう本あったのか…!と驚いた)まで、紙周りのグラフィックがこれでもか!というほどの物量で展示されていて、かつそれぞれの装飾、レイアウト、タイポグラフィ、ぜんぶがめちゃくちゃ素敵という。まだ印刷技術が今のように発展していなかった頃の作品のため、色数少なめのデザインのものも多いのですが、その抑え方がまたかっこよくて参考になります。図録もお気に入りで、よく眺めています。

3 : 森美術館「塩田千春展:魂がふるえる」

大型インスタレーション3点に加え、過去のパフォーマンスなどのアーカイブも一気に振り返ることができる、現時点での彼女の集大成と言えるであろう個展。
新潟、豊島、横浜などで彼女の作品を見てきて、これまでも生/死、現在/過去のようなテーマを感じてはいたけれど、未見だった過去作品も合わせて見ると、思っていたよりもはるかに強烈に「生」の表現が立ち上っていました。生を強く見つめすぎて、結果切り離せない存在である死が強く匂い立つような。同じく今年大型の個展が開催されたボルタンスキーも、生と死、在と不在といった似たようなテーマを扱っているんだけど、ボルタンスキー作品が「ひとごと」っぽいとも言えるほど客観的なのに対して、塩田作品は極めて主観的で、彼女自身が生と死の間を振り子のように行ったり来たりしているかのような不安定さがあり、それが迫力になっている。彼女が現在置かれている状況を加えると、ほとんど壮絶といってもいい気がしました。
大半が撮影可能な展覧会だったのですが、最初のインスタレーションではポーズをとって自撮りをしていた人たちが、先に進むにつれて作品しか撮らなくなっていっていたのがとても印象的でした。

次点 : 東京ステーションギャラリー「メスキータ」

ポスターがかっこいいなと思っていたところ、ちらほら好評を耳にしたので行ってみたこちらの展覧会。実はメスキータという人についてはほとんど知らない上、版画は守備範囲外なのですが、想像をはるかに超えてよかったです。特に木版画が素晴らしくて、線がありとあらゆる働きをする。主線になり、光になり、影になり、装飾になる。線だけでこんなに多彩な表現ができるのだなぁと感動しました。加えて、画面のメリハリのつけかた、モチーフの簡略化のセンスもすごくよくて、とにかくかっこよかった。

以上が2019年に観た美術展の中で印象に残った3選+1です。
観たのは下記一覧の25展。
今年もすでに面白そうな展覧会がたくさん発表されていますし、もっとたくさん観られるといいなー。

観たもの一覧

・原美術館「ソフィ カル 限局性激痛」
・メゾンエルメス 向井山朋子展「ピアニスト」
・東京オペラシティアートギャラリー
 石川直樹「この星の光の地図を写す」
・ggg ポーラ・シェア「Serious Play」
・パナソニック汐留美術館
 「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」
・ 六本木アートナイト
・目黒区美術館「世紀末ウィーンのグラフィック」
・東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本 1900」
・国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
・Tokyo Midtown Design Hub「日本のグラフィックデザイン2019」
・国立新美術館「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」
・エスパス ルイ・ヴィトン東京「CHRISTIAN BOLTANSKI - ANIMITAS II」
・東京ステーションギャラリー「メスキータ」
・損保ジャパン日本興亜美術館「みんなのレオ・レオーニ展」
・国立科学博物館「恐竜博2019」
・森美術館「塩田千春展:魂がふるえる」
・日本橋高島屋S.C.「美と、美と、美。-資生堂のスタイル-」
・日本科学未来館「マンモス展 ‐その「生命」は蘇るのか‐」
・アートプロジェクト神戸「TRANS-」
・国立民族学博物館「特別展「驚異と怪異―想像界の生きものたち」
・Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島
・21_21 DESIGN SIGHT「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」
・千葉市美術館「目 [mé] 非常にはっきりとわからない 」
・東京国立近代美術館「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」
・森美術館「未来と芸術展」

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