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胃カメラの定期検査をおしまいにしたかった話

 胃の内視鏡検査が好きだ。もちろんされるほうである。
 胃酸による泡を抑える、見た目はポカリ、味はゲロゲロな薬を飲むのも、麻酔ゼリーを喉に溜めて三分間待機するのも、鎮静剤で強制的にぼんやりと微睡むのも、内視鏡が口から入り込んで喉を通過し「ムォン」となるのも、腹の中でカメラが動くことによって己の臓器の形状を自覚するのも、どれもこれもがいとをかし。
 ただ、最後の念押しにされるスプレータイプの麻酔は喉がイガイガするから好きではない。なんだあれ。麻酔だ。
 患部を激写した記念写真も手元に三枚。そこには爛れや炎症、潰瘍などで痛々しい姿になった胃粘膜が見事に捉えられているけれど、心の中ではピースをして撮影に挑んでいるためか、どことなく元気そうに見えないこともなくはない。

 そんな胃の内視鏡検査も今回で四回目になるが、次回はやらなくてもいいのではないか……できることならやりたくない……やらなくてもよくない? ……先生、いかがなものでしょう……とお話してみようかと考えている。
 理由は単純にして明快。金銭的な問題だ。
 なにぶん内視鏡検査は高額。いくら三割負担とはいえ、病変があれば生検に回されて値段はさらに上がってしまうし、検査結果を聞くのにさえも診察料が別途かかる。
 これが! つらい!!

 買い物は基本的にスマホぽちぽちで貯めたポイントでやりくりしている身分として、一度で一万五千円を超える医療費は胃に穴が開くほどつらい!! しかも年内にまた同じ値段の大腸カメラもせねばならぬ!!
 今のところ重篤な病気は見つかっていないし、せめて頻度を二年に一度へ減らしてもいいんじゃないかしら……。提案するならタダだし、試しにお伺いを立ててみようか……。

 --- ここまで胃カメラ前 ---

 --- ここから胃カメラ後 ---

 お腹が空いた!
 鎮静剤からの回復待ちで、ベッドに寝転がりながらぽちぽち。このままぐっすり眠ってしまいそうなほど寝心地がいい。
 今回の胃カメラタイムも楽しく、充実したひと時だった。
 先生にも、来年の検査はしなくてもよくない? よくなくなくなーい? と聞……けたらよかったけど聞けないのが私だ!!!
 いやあ、チキン! あまりにも無力!
 この歳でそんなことも言えんのか! と大憤慨なのだが、言えないものは言えないのだから仕方がない。
 しかも飽きずに炎症があってそこを毟って生検に出されたので、これはもうあれよ、いい加減諦めろってことなのかもしれない。もしくはもっと健康になれということか……。

 それはそうと、検査室のベッドとモニターの位置が去年と大幅に変わっており、己の腹の中をリアルタイム視聴できたのがとてもよかった。
 子宮のエコー画像はリアルタイムで見たことはあったけど、カラー動画で腹の中を見たのははじめての経験だ。中年だけどまだまだ未体験がたくさんある。
 まあ眼鏡を外していたため映像自体はピンクがかったベージュのもやみたいな状態だったのだけど(来年はコンタクトで行こう)、明らかにちょっと赤すぎるんじゃないか……? という部分が。
 食道の果ての部分かな、血管で結構赤く見えるし……でもなんかそれにしてもみたいな……わからんね……ほとんどぼやけてて、センシティブフィルターが全開でかかってるみたいな状態だったからね……。
 なんにせよなかなかの赤さに、内視鏡を咥えながら笑ってしまった。なんだあれ。正常なのか異常なのかわからないがとにかく赤いのだけはわかった。
 詳しいことは二週間後にわかるので、それまでおとなしく待機。

 内視鏡以外の話題だと、ここの病院は注射がめちゃくちゃ上手。
 一切の痛みなく針は通るし、余計な出血も内出血もゼロ。すごい。
 検査前の採血が済むとそのままお薬を三種類ほど次々と流し込まれるわけだが、ひとつ目のやつ(中身は忘れた。麻酔みたいなのだと思う)でじわじわと体が熱くなり喉が渇く。
 ふたつ目の鎮静剤は血管痛がある。いつも痛いのは二の腕から肩にかけてのゾーンだ。不思議。
 血管痛といえば昔救急で打たれた造影剤。あいつは人生で一番痛かった。
 針が太い(刺された瞬間ブツッていったし、十年近く経っても未だに左手の甲に注射痕がある)のはもちろん、薬剤を入れられた瞬間(救急で行ったから一気に入れたんだと思う)に生じるあの激痛。
 刺した針の穴をスイカ大まで強引に指で広げられるような痛みだった。人間って本当に「ぎゃあああああ」って叫ぶんだね。一生忘れないと思う。
 話は戻ってみっつ目のお薬。胃の動きを止めるとか落ち着かせるとかそういうやつ。これといった身体的反応はない。あったのかもしれないが、鎮静剤で半分くらい寝てるから気づかない。
 しかし毎回感心するけど注射で薬を入れられると、なんらかの反応が数秒後には発生するので人体とは摩訶不思議。即効性ありすぎ。化学反応すごい。怖い。
 ただ、筋肉注射とかは効果が出るまで多少のラグがある気がする。痛み止めもっと早く効いてくれと思うことがよくある。つまり血流すごい。血管の運搬力が半端ない。

 そういえば胃カメラ初回のときは、鎮静剤の有無を選ばせてくれた(初心者だったから有りにした)記憶があるのだが、その後はずっと聞かれることがない。
 だいたいみんな有りで頼むからそれがメニューのスタンダードになったのだろうか。それとも初回の選択がそのまま生きてるのか。
 無しで挑戦したい気持ちがある。もっとバッキバキに覚醒した状態で体験したい。あと金額は変わるのかも気になる。
 自己誘発の嘔吐で鍛えてるから(コラ!)、たぶんオエッてならない気がする。試してみたい。嘔気をこらえるのには自信があるんだ。

 とか書いてるうちに十五分ほど経ったので、そろそろベッドを出よう。
 名残惜しみつつ起き上がり、お布団を直して部屋を出ようとしたところ、隣のベッドで寝ていたご婦人に声をかけられてしばしお話。
 こういう会話体験はとても貴重なので、できる限りお応えしたい。人間は怖いけど、やっぱり人が好きなんだろうな。メンタルクリニックの前主治医にも何度か「きみは本当は人が好きなんだと思うよ」と言われた。
 去り際、お大事にと言うか悩むも、検査だから病気があるとは限らないんだよなと気づき、「お先に失礼します」と退勤時みたいな挨拶でお別れ。まあ及第点だな!
 あ、「若いから回復が早いのね」と言ってもらった。若いだって。うふふ……久しぶりに言われちゃった……えへへ……。

 と、ぽちぽち病院で書いたものを清書しながらコーヒーを五杯も飲んでいるから胃も赤くなるんだろうなあ。
 わかっている……わかっているけどやめられない……かっぱえびせんみたいなもんだ……コーヒーおいしい……スティックタイプを半分ずつ薄くして飲んでるから実質二杯半ってことでひとつ。
 ふわラテのミルクの強い薄茶色の箱のやつだからカフェインもきっと少ないし、ブラックコーヒー一杯分ってことにしておいてくれ。あれに牛乳かコーヒー味の豆乳を投入して飲むのが好きなのだ。
 チョコレートを一緒に食べるとさらに美味い。ハイミルクの甘チョコでも、カカオ86%くらいの苦チョコでも、どちらもそれぞれ違った美味しさがあってよい。
 チョコレートに含まれるカフェインは知らないことにしている。
 チョコとコーヒー美味しい。
 チョコとコーヒーを発明した人えらい。感謝しかない。

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