不登校 DAY1
8歳の息子が急に「今日は学校行きたくない」と言ってきた。
はじめは「鼻水が出るから」と。それならと移動バッグにポケットティッシュを大量につめて渡してもどこか浮かない顔。「でも…でも」と、何か休む理由を探している様子。
熱はない。鼻水も鼻が詰まるほど出ているわけではない。もしかして、と思い、彼を家の中で一番落ち着いて話の出来る場所まで連れて行った。幼稚園登園前の妹が遠巻きに「なになに~?」と話に入ろうと首を伸ばしている。
「学校で何かあったの?」
一瞬逡巡した後に、彼はぼそぼそと口を開いた。
「学校でね、笑ってくる子がいるんだ」
ある児童が、吃音が出る度に笑い馬鹿にしてくる事
本当はずっと我慢していた事
ぽつりぽつりと、彼は話し始めた。
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わたしはすぐにその旨を学校への連絡帳に記し、連絡児童にそのノートを託し息子に学校を休ませた。
毎日美味しい学校給食を楽しみに登校していた息子。身体の具合が悪くないのに「学校休みたい」と言ってきたのは、今回が初めてだった。
「いつからそうなの?」
「えっと、9月からかな」
「3ヶ月間も我慢してたの?」
子どもとの関係は良好で、困った事があったら何でもすぐに相談してくれると思い込んでいたわたしは、ショックで子どもに問うた。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
「だって、ママを悲しませたくなかったから」
いつも楽しく学校生活を送っていると思い込んでいたわたしは自分の見当違いの観察眼にショックだったし、子どもの事をまだまだ8歳で能天気だと思っていた自分の能天気さを恥じた。
8歳でもちゃんと、相手の気持ちも考えるしプライドだってある。
ーー母親に自分の弱い姿を見せたくないし、それで傷つく母親を見る事が怖いーーわたしは幼少期に自身も感じた事のある、その胸の痛みを思い出した。その時、わたしは言えなかった。平気なフリして泣きながら登校していた。
そして今、大人になったわたしはゆっくりと深呼吸した後、その時自分が母親に言って欲しかった言葉をゆっくりとだけれどしっかりと彼に伝えた。
「よく話してくれたね。とても勇気がいったでしょう。偉かったね。でもそんな事でママは傷つかないよ。ママは強いから、大丈夫。」
その日は一日、家でゆっくり過ごすことにした。
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夕方18時近くになって、家のインターフォンが鳴った。
玄関の前には担任の先生が立っており、事の経緯について説明を受けた。
以前からそのような場面を目撃していた事
その度に相手児童に厳しく指導をしていたが、聞き入れてもらえなかった事
クラスメイトも注意してくれていたが、相手児童の問題行動が治らず、みんな息子を心配していた事
先生はクラスメートが寄せ書きしてくれた手紙を息子に渡した。それを読んだ彼はとても嬉しそうで、「嬉しい。みんな優しいね」と少し元気を取り戻したように見えた。
担任先生やクラス全体が息子の味方で、却って孤立した相手児童の方が心配になり
「先生、相手児童さんをあまり叱らないであげてくださいね」と言ったら
「でも悪い事は悪い事なので、きっちりと指導させて頂きます。」とお答え頂いた。
先生はこうも言った。
「息子さんは、何一つ悪くないので。息子さんが傷つき学校に来られなくなるなんて、おかしいじゃないですか。」
そして先生は、息子の顔を見ながらこう続けた。
「守ってあげられなくてごめんね。大人たちでこれから全力で貴方を守るから、待っててね」と。
その後息子は学校側の親身な対応と相手児童からの謝罪、数日間の不登校期間と五月雨登校を経て、今では元気に学校へ通えるようになりました。
こちらは娘ちゃんのいじめと不登校のお話
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