信長を演じた名優 3

織田信長の姿は、教科書にも出てくる日本画の肖像画が知られています。一般の人にとってはそれ以外の信長は見たことが無いと思えるくらいの唯一無二の肖像画ですが、他に宣教師が残した西洋画も残っています。これは本物かどうか定かではないようですがかなりリアルな肖像画です。高橋幸治さんが演じていた織田信長はこの西洋画の方の肖像画によく似ています。ユーチューブで高橋さん演じる信長の動画を何本か見ましたが白黒映像で本能寺の変の場面がいくつか出てきました。本能寺の変は信長の演技が少なく緊急事態の場面なのでここは誰が演じてもそう差が出ないように思えました。それよりは先に書いた「黄金の日々」の方が特徴がよく出ている感じがしました。高橋さん演じる信長が普段浮かべている表情。無表情で何を考えているのかわからない、それでいて神経質な独特の雰囲気。話をするときの落ち着いた感じも、下の者に上意下達の一方的な話をするといった雰囲気がよく出ています。あとは目配りです。悠然とした感じがします。視線の動きが多いと落ち着きがない雰囲気になります。信長は神経質だったことが知られていますが、しかし普段は何も恐れるものはなく周囲を睥睨していたと思われ、視線の動きが多いとそんな信長らしさが出てこないように思えます。私の比喩が適切なのかわかりませんが、どんな言葉を飾るよりも実際に見た方が早いということは言えます。いずれにせよ私は高橋幸治さんが演じた織田信長が唯一無二の最高の信長と思っています。正直、私は小学生の頃に見たこの高橋信長の印象があまりにも強過ぎたせいで、それ以降は他のどの俳優が演じても軽く感じてしまいます。しかしこれは晩年の信長、権力を握って絶対的な存在となった後の信長の雰囲気と言えるようにも思えます。前に書いた役所広司さん。大河ドラマ「徳川家康」(1983年)で織田信長を演じ、主演で家康を演じた滝田栄さん以上に評判になっていました。この信長役で人気俳優となった役所広司さんでしたが、役所さん演じる信長は野性味のある感じでした。役所信長が最初に登場したシーンでは、うつけ者と呼ばれていた時代、汚い服装で何やら齧りながら登場した信長。家康が最初に信長に会ったのは少年の頃の人質時代。若き日の傾奇者の信長です。この時期の信長を演じるなら高橋幸治さんよりも役所広司さんの方が合っているのかもしれません。役所広司さんは前にも書いた通りで最近では映画「関ケ原」で徳川家康を演じていましたが、これも中々合っていたと思いました。1983年の大河の織田信長役で人気を得た役所広司さんはその後にNHKの連続ドラマ「宮本武蔵」で主演していました。私は役所広司さんの宮本武蔵も、これまで見た武蔵の中では1,2を争う武蔵と思っています。若い日の暴れ者の武蔵から、一流の剣客となって最後は佐々木小次郎との決闘に臨む。その変化を巧く演じていたと思いました。

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