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姿(#いまコロナ禍の大学生は語る 寄稿記事)

「私思うんだけどさ」
「どしたん」
「結局人間は肉体的な繋がりを求めてるんだと思うんよね」
「うわ、なんか深夜っぽいトークテーマきた」
「いやそういうんではなくて」
「なるほど」
「だから例えば、まあコロナの期間は直接会ってみたいなのあんまなかったじゃないですか。あ、待ってこの例えはちょっと違うな」
「やば、何もわからん」
「ちょっと待って、いや、だからさ、逆に聞くけど」
「はい」
「繋がりって何なん?この人とは合う気がするけどこの人とは合わん気がするとかあるじゃん」
「うーん、繋がりって言ってもいっぱいあるんじゃない?仕事の付き合いも繋がりっちゃ繋がりでしょ」
「まあそういう社会的?な繋がりがあるのはわかるけど、もうちょいなんか心理的な繋がりってあるやん」
「確かに」
「んでそういう繋がりって、私は、結局会わないとダメだと思うんよ」
「会わんとダメか」
「だってさ、zoomってあんま仲良くなれんやん」
「あーまあわかるな、あれって何でなんかね」
「私はあれは、肉体的な繋がりがないからだと思うんよね」
「触ったりとかってこと?」
「うん。手が触れるとか、相手の匂いとか、体温とか、呼吸音とかさ、そういう情報量がオンラインだと足りない気がする」
「触覚っていう話ではなくか」
「あ、そうそう。もっとさ、電波に乗らないアナログな感じのやつ」
「なるほどね、でもさ、今してるみたいな電話はなんか良くない?」
「う、確かに」
「これはデジタルやもんね」
「うーん確かに、わからんくなったわ。慣れとか?」
「なんかね、俺が思うに、人と人って見えてない方が繋がれると思うんだ」
「どういうこと?」
「うーん、あんまり上手く言えないんだけど、精神的な繋がりってなんだと思う?」
「離れていても分かり合える的な」
「あ、そうそう。でもさ、本当に相手のことが分かりきってるわけではないじゃん。でも、この人がこういう行動してたのは多分こういうことなんだろうな、とか想像できる。それって、相手のことを自分の中においておくってことなんだと思うんよね。」
「ほう」
「理解して、自分の中で再構築して、自分の中においておく、みたいな」
「あー、なんとなくはわかった」
「でも、多分相手があまりにも鮮明に見えている状態だと、その再構築ができない」
「あーーーうーん、なるほどね」
「知らんけど」
「いや割とわかった、なんか私がさっき言ってたのは、それでいうと理解がうまくできないのって話かも」
「あーなるほどね」
「じゃあ恋人にずっとベッタリっていうのはその自分の中においておくってことができてないってことか」
「あー、かもね、知らんけど」
「適当か」
「はあ疲れた」
「おいだるかった感出すな」
「あ、てか今度焼肉行きたい」
「あー前にも言ってたね初任給で奢ってあげるよ」
「やった、じゃあまた今度ね」
「うん、じゃあ」

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この文章は、「#いまコロナ禍の大学生は語る」企画に参加しています。
この企画は、2020年4月から2023年3月の間に大学生生活を経験した人びとが、「私にとっての『コロナ時代』と『大学生時代』」というテーマで自由に文章を書くものです。
企画詳細はこちら:https://note.com/gate_blue/n/n5133f739e708
あるいは、https://docs.google.com/document/d/1KVj7pA6xdy3dbi0XrLqfuxvezWXPg72DGNrzBqwZmWI/edit
ぜひ、皆さまもnoteをお寄せください。

また、これらの文章をもとにしたオンラインイベントも5月21日(日)に開催予定です。
イベント詳細はtwitterアカウント( @st_of_covid をご確認ください )
ご都合のつく方は、ぜひご参加ください。
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