自称コラム2 金持ちの方々へ

 私の知り合いにバーテンダーがいます。バーテンダーはいろいろ気を使う。といいますか、人間てのは気をつかうあります。職業に貴賤なしといいますが、本当にそうでありまして、本当にそうです。

嫌いな言葉があります。
「パートレベルの仕事」
なんだ、そのパートレベルの仕事ていう物言いは。一度でも工場に勤めてみればいい。会社の中で特化した技術をもっているのはだいたいパートのおばさんだ。別段技術があろうが、なかろうが、どうにかこうに生きてるだけでいいのだが、パートレベルの仕事という物言いをする人間のあほうと言いたいのだ。

 ま、しかし、自分はとてつもなく特別な人間だ、それは仕事ということに関してと言いたい人がたくさんいて、仕事てのはなにやらものすごいものだと言いたい人がいる。そりゃまあ、そうだろう、その人は仕事を物差しにしないと自分の偉大さを謳えないのだから。では自分が偉大だという事を謳うのは悪いかというと、それはそれでいいだろうともおのうだが。

 ここで知り合いのバーテンダーの話し。あらゆる仕事には楽しくない部分がつきものですが、バーテンダーにももちろんありまして、つまらん人間の話を聞かねばならん、ということです。で、そのバーテンダーのお話。とある会社の社長、歳の頃なら30そこそこの社長がビールを飲みながらこういったそうだ。
「1億は誰だって稼げるんですよ、問題は10億稼げるかどうかですね」
ですね、ときたもんだ。そんな言い方あるか。ま、そういう物言いをしている人がいるのだからこの世にあるのだが。一億稼いでいないバーテンダーを目の前にして1億は誰でも稼げるときた。ではそのバーテンダーはあなたの中では誰でもの中にはいっていない、と言ってるようなもんではないか。誰とは人であり、石でもなければ木工用ボンドではない。バーテンダーは木工用ボンドではない。
 しかしだ、自分はすごいということを言いたい人間であふれている。ま、それはいい。それはいいのだが、一杯500円のバーで1億円はだれでも稼げるなんて言われた日には、ま、それはいい、いいとして、せめてそのバーテンダーにビールをおごれ、さすればあんたの話しを聞いてやろう、という気にもなるが、なんだ、おい、おまえ、しぶちん、となる。なるのだ、俺は。

 誰の話を聞きたいか。音楽雑誌てのは不思議であります。その雑誌からは音楽は鳴りません。つまり、おおむねですが、おおむね、好きなミュージシャンのインタビューが読みたくて、音楽雑誌というのは売れるのです。もちろん、記事、レビューはありますが、1980年近辺に生まれた人間がロック誌を買っていた理由は好きなミュージシャンのインタビューを読みたい、というのがあったのだ。

 で、人は誰の話を聞きたいか、にもどる。どうも、人は金持ちの話しが好きだ。私はあまり好きではないが、私と同じ思いの人ばかりではないらしい。インターネットをみて見よう。
「なぜ私が月収1千万になったかお教えします」
とか
「簡単なことに気付いた私はレクサスを2台所有することになりました」
とか、そういうのであふれている。実際サーバーからあふれることはありませんが。
「なぜ私が月収1千万になったか、わりと自慢していんでここに書かしてもらっていいですが、もちろん命令でも強制でもございません」
というタイトルなら引くところは引いてる感じだが、そんな現実はない。だいたいが大金を手に入れた人間は
「俺の話しききたいやろう」
となる。

ユーチューブでダースレイダーさんとプチ鹿島さんの話を聞く。
これは実におもしろい。

関本ぶりき

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