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ノスタルジーと自分らしい人生

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生まれた土地や家族との思い出と、そこから離れざるを得なかった今の話。でも今の方が生きやすくてすがすがしい。
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実家に帰らない夏に思い出す、うどんとぼたもち

昨年末に「帰省したくないよ〜〜〜」とごねていたら、弟が「姉ちゃんもう帰らなくて良いよ。俺が適当にやっとくからさ」と言ってくれたので、ご厚意に甘えまくって今年のお盆は帰省していない。あまりにも快適。パートナーと猫たちと一緒に好き放題している。

カミングアウトをしてから3年が経つ。あんなにひどいことを言ったのと同じ口で「でもこれからも普通に帰ってきてよ」と言う母の言葉に従って、いやいやながら盆暮正月

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うつくしい歌の記憶と、意志を持つこと

うつくしい歌の記憶と、意志を持つこと

高架をくぐると花の匂いがした。どうやら近くの家の薔薇がここまで薫ってきたらしい。脳内に音楽がひらめく。見渡す限りの前方には人がいない。後ろからも足音は聞こえない。香りを吸い込んで、口を開く。

 童は見たり 野中のばら
 清らに咲ける その色愛でつ
 飽かず眺む くれない匂う 野中のばら

綺麗な歌詞。
私にとっては、祖母との思い出の歌だった。
歌が好きな祖母がコーラスグループで歌っていたその曲の

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はずれものとして生きる

はずれものとして生きる

 何代さかのぼっても、おそらく農家である。

 実家は兼業農家をしている。母方も父方も、祖父母は農家で祖父母も農家の出だ。
 実家の近所には「本家」とされる家があるが、そこも農家である。本家といっても特別広いわけでもお金持ちなわけでもない。敬われてもいない。所詮は小作農の家系だ。

 戯れに我が家の家系図を書いていて、気づいたことがあった。何代遡っても農家ではあるのだが、親戚たちは意外といろんな職

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