国家財政を考えてみよう その1 財政の決算

しばらく前、下記リンクの記事が目に留まった。

25年度の財政収支、赤字拡大へ
3.6兆円、税収減が響く
2020/1/16 13:41 (JST)
https://this.kiji.is/590367463566607457?c=113147194022725109

財政収支の赤字拡大という。では財政の赤字とは何か?

この財政というものについて、何回かに分けて書いてみたい。

普通の企業で「赤字」という場合、決算の損益計算書で利益がマイナス、つまり損失が計上されていることを「赤字」と言う。しかし上記の記事は決算ではなく予算、それも将来の予算の見込みの話をしている。その予算の赤字黒字の基準も、税収と歳出の差である。税収とは企業で言えば自己資金(純資産・資本の部)である。歳出は投資と経費の総額だ。

これ、おかしいですよね?企業の赤字・黒字は、売上と経費・投資の差です。自己資金との差ではない。

つまり、財政の赤字と言っているものは、企業(や家計)で赤字と言うものとは、根本的に違うものということだ。

では企業の決算に該当する国の決算はどうなっているのか?国家財政の決算で現在確定している最新のものは平成30年度決算(平成31年(2019年)3月締め)だ。

平 成 30 年度決算の説明 第1総説: 財務省
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2018/kessan_30_01.pdf

上記リンク3~4ページを参照して欲しい。

一般会計歳入予算額は当初・補正合わせて101兆3580憶円。
これに対し、収納決定済歳入額は105兆7152億円。
なんと予算より4兆3572億円も余分に収入があったことになる。

一般会計歳出予算は当初・補正合わせて101兆3580憶円。つまり歳入と歳出はぴったり同じが財政の基本であり、赤字でも黒字でもないのが目指す姿ということだ。これに対し、支出済み歳出額は98兆9746億円。予算額を使い切れていない。

その結果、翌年度繰越金5兆0766億円、不用額1兆6037億円が発生している。この翌年度繰越金と不用額合わせて6兆6803億円は、予算の段階ではゼロで良かったものである。予算では収支トントンで良かったはずが、決算してみると6兆6803億円余ってしまった、つまり決算は巨額の黒字になっているのだ。

見方を変えれば、予算の精度が低い粗いために、集めなくてもよかった税金、発行しなくても良かった国債を6兆6803億円余分に集め発行してしまったとも言える。極論すれば6兆6803億円減税しても、国家財政の決算はトントンになる。この6兆6803億円が減税されたら経済活性化にどれほど効果があるかを考えると、国が無駄に民間の経済活動を阻害しているともいえるのだ。

財政の赤字、黒字という言葉を使う時に、基礎的財政収支を指して赤字だ赤字だと騒ぎ立てるが、企業決算に相当する財政の決算は巨額の黒字であるという事実をまず認識しておきたい。

ということで今回はここまでにして、つづきは次回。

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