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書けないときに読むエッセイ

原稿提出の嵐は抜けられた?

書けない時ってほんとに書けなくてしんどいよね。

やれば終わるのは重々承知で、でも頭の中で考えがぐるぐるしてまとまらなくて、時間だけが過ぎるみたいな。

で、そんな書けない時にわたしが手に取るのは、石井好子『女ひとりの巴里ぐらし』。

初めて名前を知ったのが、下北沢のヴィレッジヴァンガード。いつ行っても『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』が平積みされていたのをよく覚えてる。

当時は忙しくて本を読む時間もなかったから、気になってから読むまでに10年以上経っていたかな。

その本をきっかけに、いま文庫で出ている本は大体読んだのだけれど、一番好きなのが『女ひとりの巴里ぐらし』。

海外旅行なんて夢のまた夢だった時代に、たったひとりパリのキャバレー「ナチュリスト」で、シャンソン歌手として毎日ステージに立っていた彼女の日常。

ステージに立つ人、オーナー、舞台裏を支える人、接客係、お客さんと、さまざまな立場の人たちが織りなす実話が、ドラマよりもドラマティックに感じたんだよね。

舞台に立つ人は、その一瞬を切り取られて「華やかでいいわね」って羨望の目で見つめられるけれど、この本を読めば読むほど、同じステージに立つ「女たち」が怖くて(笑)、よほどメンタルつよつよじゃないとやっていけないわ……と思ったりして。

でも、その「女たち」が強気になるのもそれぞれに事情があってさ。

絶対一緒に仕事したくないな、と思う気性の荒さが窺える人もいるけど、完全に嫌いにはなれないところに書き手の温もりを感じるのも好き。


この作品を手に取るのは、どうしてもエッセイが書けない時で。

すらすらと読みやすく、臨場感たっぷりで、いつの間にか自分が「ナチュリスト」の舞台裏を覗いている気分になれるような。

なんか、飾らなくても素直に、(というかそれしかできないけれど)、ただ心をさらけ出す覚悟だけ持てばいいのかもしれない。

一冊まるっと読み終わる頃には、「じゃあ書いてみるかな」と思えるお守りのような作品です。

この本に対する返信→https://note.com/miyuru_kyoto/n/n65bab4894a2f

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