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赤羽末吉

昨日赤羽末吉氏の作品についての講演会をzoomにて聴く、講師は末吉氏の三男のお嫁さんである、赤羽茂乃さんだ。末吉氏の死後、数々の作品や文章などを整理され気がついたこと思ったこと、一緒に暮らす中で感じた末吉氏の人となりをたっぷり語ってくださった。主に初めての絵本である、『かさじそう』を読み解きながら。
末吉氏は、満洲で長く過ごした。大陸にいたから見えた日本の良いところを感じ、子どもの頃に見聞きし体験した、映画や落語など、好きで興味を持ち調べた影絵人形劇、紙芝居、郷土玩具の収集が、末吉氏の作品のベースになっていた。加えて、初山滋の『コドモノクニ』や、茂田井武『セロひきのゴーシュ』が末吉氏を刺激して子どもの為に絵本を書きたいと思わせた。そして『かさじぞう』がこの世に登場した。
茂乃さんは、『かさじぞう』を一場面ごとに、解説をしてくださった。そこで終始一貫していたのが、本物の雪を描く、貧しいじいさん、ばあさんの暮らしと心根をありのままに描くことだった。末吉氏は、福島に何度も取材して、雪を暮らしをスケッチして写真を撮っている。そして、扇面が雪の白さを強調したり、絵に奥行きを持たせたと、述べられた。まさにその通りだと改めて感じた。
おはなしは、末吉氏の他の絵本にもおよんだが、絵本は、子どもだましではいけない、子どもを心から喜ばせるものでなければならない。生きるもの全てが持っている残酷さや醜さも、よく知ることで心を豊かにする、など、大切な言葉を沢山貰った。また、日本人として中国に対しての自責の念から、日本と中国の架け橋になりたいと思い、『スーホの白い馬』が誕生したとのこと。
私生活では、規則正しく暮らし、構想ができあがれば一気にかきあげたり、お孫さんに出来た絵を見せたりといった、微笑ましいエピソードも聞けた。
おはなしを聞いて、直ぐに『かさじぞう』を手にして読みたくなった。このような機会は、本物に幸せな時間だ、作者のこと絵本のことを深く知れて、今まで以上にその作家や絵本が好きになる。

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