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佐藤信/職業はさすらいの七転八倒夫/転んだらただ起きるだけね。膝、擦りむいたけど、唾、…

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佐藤信/職業はさすらいの七転八倒夫/転んだらただ起きるだけね。膝、擦りむいたけど、唾、塗っといた。

最近の記事

時の函

一、 封じる つつましい日々のために あからさまな「今日」を封じる あかりを消して夜を招く 夢見る誘いから身をそらし なつかしい「明日」を封じる おぼろの月に微笑みを返して あふれるいのちの吐息をついて 見過ごした「昨日」を封じる 手を洗い 口をすすぐ 時を封じた女たちよ 千年のためらいのかたち とりどりの函に託して 二、 運ぶ 函を運ぶ 託された者の名を知らず 託すべき者の名も知らず 函に聞く 思いを届ける言葉を知らず 思いにこたえる言葉も知らず 函と歩む

    • 言葉への戦術

      ベルナール=マリ・コルテスの場合 なぜ なら それは ことば なの だから ことば の もつ 乖離 なの だから 耐え なければ ならない あるいは むしろ 耐える ために こそ ことば を 紡ぎ つづけ なければ 君(たち) とは 違う やり方 で ことば は 交換 の ための 通貨にも 似た 道具で あり その 道具 を 用いて 人びと は たがいの 隔たり に 架橋 する と 君(たち) は 考える だが はたして ことば はそれ ほど 自明 な もの だろう か 隔

      • 独断的演劇論断章

        見物が「見たい」芝居をつくるのではなく、「思ってもいなかった」芝居をつくりたい。不機嫌な見物席を恐れることなく。 * 滿ち足りた顔の見物たちが舞台に向かってひざまずく。劇場で出会うもっとも醜悪な光景。 * 多くの「演劇嫌い」は、たしかな目をもった「演劇愛好者」である。彼らを劇場に呼び戻すのは容易なことではない。 * 善良な芝居(劇場)好きの視線は未熟な才能を勇気づけ、経験ある才能を堕落させる。 * どんなに貶されていても批評文が面白い舞台は、大抵、面白い。どん

        • オペラ「天鼓」詞

          能「天鼓」による 序 ものがたりはいつも(合唱) はるか はるか むかし それとも 昨日 はるか はるか 遠く それとも ここで 物語はいつも 空に 海に 山に 森に 畑に 田に 里に まちに 星に 光に 風に 音の調(しらべ)に 物語はいつも いつも いつも いつも 1.ものがたりの始まり(語り) 都のはずれに、王伯と王母という名の仲のよい夫婦が暮らしていました。 ある夜王母は、天から太鼓が降りてきて自分のおなかに宿る夢を見ました。やがてひとりの男の子が生ま

        時の函

          舟もなく ──No Boat in Sight

          川をめぐる五つの断章 1 向こうの人びと 川の両側には異なった人びとが住んでいる 一方の岸に住む人びとは その場所で千年の時を生きている 彼らの毎日は そのほとんどが祈りと瞑想に捧げられている 一日六度 彼らは 川に来て泳浴し 祈り 瞑想する 夜明け 朝食後 真昼 午後 日没 真夜中 もう一方の岸に住む人びとはある季節だけ川のほとりにやって来る 彼らはふだん 川から離れて散り散りになって生活している 一年に一度 ある季節になると川のほとりに集まって

          舟もなく ──No Boat in Sight

          信の作業 NOTE

          佐藤信です 未公開テキスト(戯曲、歌詞、その他 いろいろ)を拾い集めます お暇なときのつれづれに 転用、引用、改作、拡散、ご遠慮なく ひと言ご連絡いただけれればなお嬉しい ☟ macoto@kamomeza.net

          信の作業 NOTE