#54 アートとサイエンスと三体問題と

「ストーリーとしての競争戦略」読み続き中。経営学って科学なのか、みたいな話を昨日書いたが、本書の前半の方を読むと「経営者はアーティスト」とはっきり書いてあって、経営戦略とはサイエンスではなくアートなのだと宣言していると読めた。

ビジネスって、サイエンスとアートとの間の葛藤である上に、マネーというもう一つの要素も絡む。だから結果的にカオスになる。

小説「三体」で描かれていた物理学の「三体問題」みたいだ。三つの天体の引力の影響を受ける惑星の動きは、ランダムで安定しない。小説の中の三体世界は、三つの太陽のうちどれかひとつとだけ距離が短くなると「恒紀」として運行が安定して文明が発展するが、二つ以上の太陽から引っ張られると「乱紀」として灼熱の温暖期や極寒の氷河期になって文明が死ぬ。

アートとサイエンスとマネーという三つの太陽の間で揺れ動くビジネスという惑星の軌道も、カオスになる。その惑星でうごめく人間の感情も不安定になる。

三体文明の人たちは「乱紀」になると自ら「脱水」してミイラ化して耐え忍んでいた。いまのコロナ禍みたいな時期は会社も「脱水」して凍結保存できればいいのにな。

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