あなたは、世界にどんなインターフェイスで触れていますか?
「気が合う」とか、「ウマが合う」とか言いますが、うまく会話がかみ合って楽しく話せる人っていますよね。
逆に、話していてどうも上滑りしたり、深まらなくてもどかしい思いをする人も。
これって、ものごとを理解したり表現したりする時のタイプが違うのかもしれない、とある時から思うようになりました。
そうして「この人はどんなタイプの人か」と観察していくと、人によって「世界への触れ方」が色々なことに気づきました。
例えば、私は何かを調べたり知る手段として本を選びます。つまり「活字」が世界に触れる主な手段になっています。表現手段もそうです。
本好きで知られる知人は、あるミュージシャンのことを知るのに、その人の音楽を聴くのではなく、関連本をひたすら読み込んで知識を得たそうです。そして、レコード会社の人を相手にその音楽を語り、「彼の音楽をここまで深く理解しているなんて!」と涙させたとか。
こういうエピソードを聞くと、言葉で理解して言葉で表現する「活字の人」なんだなあ、と思うわけです。
あるコピーライターのマネージャーは、こう嘆いていました。「うちのコピーライターは、人と話している時に表情や身振り手振りなどの情報を極力排除して、会話の言葉だけで判断しようとするの。表情や身振りからもたくさん読み取れるものがあるのにね」と。
これもコトバの人ならではのエピソードですね。
(こういう方は、言葉尻をめぐってのトラブルが発生しやすいので要注意、という側面も)
また、ある映像クリエイターは、「言葉よりも映像の方が、情報量が多いでしょう?」と言いました。
それを聞いて、「活字の方が短時間で情報を詰め込めるのでは?」と思ったのですが、どうやら彼が言いたかったのは、「言葉にならない(雰囲気や感覚などの)情報が多い」ということだったようです。それを情報と捉えるのは、映像の人ならではの感覚ですよね。
音楽関係の仕事をしている人は、きっと音が一番の情報源になっているはずで、選ぶ仕事というのはその帰結なのだなあ、ということを思うわけです。
そんなことを感じていた折、読んだ本で、こんなモデルが紹介されていました。
『彼女があのテレビを買ったワケ―男がわからなかった-女が商品を選ぶ本当の理由』(エクスナレッジ)
女性心理のマーケティングを提唱、実践するマーケターの方が書いた本です。
人によって<視覚><聴覚><身体感覚>のいずれかを優位に使うか分かれる、という話が載っています。VAKモデルというらしいです。
同モデルによる、各タイプの特徴が下記です。
<視覚>優位の人:
・絵や映像でものごとを理解する
・「話が見えない」「見比べる」「目を通す」などの視覚的な言葉をよく使う
<聴覚>優位の人:
・音や言葉で理解する
・「耳に入らない」「聞き覚えのある」「聞こえがよい」などの言葉をよく使う
<身体感覚>優位の人:
・味・香り・手触りなどの身体感覚で理解する
・「腑に落ちる」「しっくり来る」「頭に入る」などの言葉をよく使う
なるほど、使う言葉にもそういう違いが現れるのか、と興味を持ちました。
確かに周囲の人を思い浮かべると、イラストレーターの知人は完全に<視覚>優位タイプだし(色々なものをビジュアルで記憶している)、「腑に落ちる」「しっくり来る」を頻用するあの人は<身体感覚>優位だったのか・・・と、整理しやすい。
さて、それでは冒頭の言葉系の人たちは<聴覚>優位で、デザイナーや映像系の人たちは<視覚>優位なのか?
そう結論づけられればシンプルですが、引っかかったのは、例えば、あるコピーライター(冒頭とは別の方)の次のような言葉はどう理解するの?という疑問。
「読んだ時に映像が目に浮かぶのが、いいコピー」
このモデルだと、映像は<視覚>で、コピーは<聴覚>ですよね。
ならこの人は、どっちなの?
理論通りキレイに人間を分けるなんて無理なのだ!という結論もありだと思いますが、私は
インプットやアウトプットする時のタイプと、心の中で理解する時のタイプは人によって違うのではないか(2段構えになっている)、と考えています。
「読んだ時に映像が目に浮かぶのが、いいコピー」と言ったコピーライターの方は、こういうタイプだったのではないかと。
(インプット)とアウトプット→言葉
心の中での理解→映像
私自身も、言葉でインプットして言葉でアウトプットしていますが、心の中では映像的に見たり感覚的に捉えていることが多いです(話している時にオノマトペがよく出るのはだからだと思う)。
自分の中で取材して原稿を書くプロセスを考えてみると、話を聞いて、それをいったん自分の中で映像だったり構造みたいなものに置き換えて理解して、それをまた的確な伝わる言葉に直す、ということをしている気がするんです。その感覚をしっくり表せる言葉を探すのに時間がかかります。
もしかしたら、原稿を速く書けるタイプの人は、言葉で考えて言葉でアウトプットしているのではないか?と思ったり。
ただの遅筆の言い訳のような気もしてきましたが・・・。
現在進行形ですが、そんな風に人を理解する方法があるんじゃないでしょうか、という話でした。
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ちなみに、赤ちゃんは何でも口に入れて舐めたりかじったりします。口の中の触覚が一番繊細で鋭敏だから、と言われていますね。
ということは、赤ちゃんにとっては口の中の触覚がインターフェイスなんですね。だから目の前にあるモノをまず口に入れて、質感や味を確かめている。
こういう話で、面白いコラムがあるのでここで紹介させてください。赤ちゃんが世界をどう探索しているかについて、わかりやすく書かれています。
https://froggy.smbcnikko.co.jp/series-name/babysfeelings/
著者は赤ちゃん向けワークショップなどを企画している、ワークショップデザイナー(そういう仕事があるのですね!)の臼井隆志さん。
初回を読んで面白い!と思い、授乳中に少しずつ読み進めていました。
このコラム全体を通じて「赤ちゃんの遊びは予測と確認である」という話が出てきます。赤ちゃんは、あれこれ試して因果関係を検証しながら、世の中の仕組みを一つひとつ、理解していっているんですね。
読み終わると、一見意味がなさそうな赤ちゃんの行動も「きっと今こういうことを確かめているに違いない」と推測しながら観察して楽しめるようになるので、オススメです。
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