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南房総こてらんねぇ店 〜「レストラン伊せや」〜

伊せや。
鴨川のイオンの横にポツンと立っており、目立たない佇まいである。もしかしたら多くの人は店があることも分からず、通りすぎてしまうかもしれない。ただ店内に一歩踏み入れると、外観からは想像つかないカラフルな店内はどこかヨーロッパを感じ、オープンキッチンからは美味しそうな香りと心地よい調理している音が聞こえてくる。オープンキッチンの上の黒板には本日のお薦めメニューが並んでおり、思わずお腹の音が鳴る。そして、お腹一杯であなたがこの店から出てきた時、また来ようと必ず思い、そしてこの目立たない佇まいで良かったとまで思うかもしれない。

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この鴨川の地で、洗練された洋食、この味を食べられるとは正直思っていなかった。
伊せやの説明で僕が洋食という表現をしておきながらなんだが、洋食という表現が正直ピンと来ていない。ただ、イタリアンともフレンチとも表現しづらく、洋食という表現になってしまった。ただ、洋食という表現からは僕の勝手なイメージであるが、ハンバーグやエビフライ、メンチカツなどが想起されるが、並ぶメニューは、パテドカンパーニュやラタトュユ、パスタ、肉料理などが並んでいる。
そして、言えることは一つ。どのメニューも洗練されており、何より美味しい。
その中でもお薦めの料理を紹介しよう。

『いすみ豚のソテー』


1つ目は『いすみ豚のソテー アンチョビとケイパーのソース』である。主人の教郎さんがこの店における一番の看板メニューと言っていたので、ハードルは高めに設定。いざ目の前に運ばれた時に、すでに豚肉が輝いており、見た目から美味しさが伝わってくる。ただ、口に入れた瞬間、自分の想像、ハードルを容易に超えてくる。豚肉の甘みが舌の上を駆け巡り、絶妙な火加減により、上質ないすみ豚の肉質を感じ、うま味が口一杯に広がる。そして、アンチョビの塩気とケイパーの酸味と風味が絶妙なハーモニーを奏でる。豚肉の下にはマッシュされた滑らかなポテトがあり、いすみ豚のうま味と絶妙なソースが十二分に染み込んでおり、これまた絶品である。一つひとつの食材が調和しており、料理は1+1=2ではないということ再認識させられるまさに逸品である。

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『かずさ和牛のタリアータ』

2つ目は『かずさ和牛のタリアータ』。
「この店で、かずさ和牛が食べられるのか。」と思ったそこのあなた。絶対食べるべき一品である。かずさ和牛自体かなり希少価値が高く、なかなか口にできる機会がない日本の最高レベルの和牛の一つであり、上質な肉質と脂を堪能できる千葉が誇るブランド牛である。
伊せやのタリアータはランプやイチボといった上質な赤身を使用しており、その上質な肉質と脂を存分に感じられる。その極めつけは紹介した一品目と同様、絶妙な火加減によって生み出されている。
そもそもかずさ和牛を扱うようになったのは、お客さんの紹介で始まったとのこと。そのお客さんもこれらの料理を食し、教郎さんに是非調理して欲しいと思ったのであろう。

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伊せやで食事をしているとふつふつと疑問に思うことが浮かんできて、いっそのこと、思うがままに質問していくと、その答え一つひとつは点だが、それが時を経て線となり、今に至っていた。

夫婦の人柄が紡いだ『伊せや』

ご主人の教郎さんは元々、鴨川の長狭高校出身であり、実家が小湊で「伊勢屋」を営んでいた。旅館で育った反動からか、小学生の頃からフランス料理に興味を抱いていたようだ。叔父がフランス料理の料理人であり、日本大使館などで働いたことも、ある意味フランス料理を身近に感じていた要因なのかもしれない。そして、その叔父の紹介で右も左もわからない中で、麻布十番にある昔ながらのフランス料理を出す名店で8年間修業し、そこで基本をみっちり身に付けた。その基本が今の料理の根本になっており、現在の味に表れているのは間違いないだろう。
一方、笑顔が素敵で気さくな奥様の崇子さんは富山県出身。最近ではもっぱら手に入りにくい富山の銘酒『勝駒』が置いてある所以。もともと海外への憧れがある中で東京に上京し、OLとして働いていたとのこと。そして、思い切ってサンフランシスコに留学に。それが教郎さんにとっての転機にもなる。
留学前から二人は付き合っており、麻布十番のお店を辞めるタイミングで、教郎さんもサンフランシスコへ。日本人経営者のレストランで働きながら、そこで2年弱過ごす。サンフランシスコは言わずも知れたアメリカの大都市であり、多くの移民も住んでいる。その中で様々な国の料理を食べることで、感性が磨かれた。
その後、教郎さんは日本に戻り、自由が丘のカフェ、横浜のパンパシフィックホテル、勝浦のゴルフ場のレストラン、いすみのレストランで働いた。これらは全く共通点が無いように思えるが、どれも人に紹介されて働てるという一つの共通点がある。教郎さんの料理の技術は勿論こと、人柄がおそらくそうさせているのだろう。
そして、なぜこの地で、このような料理でといった僕の疑問は、森井夫婦の人柄が紡いだ結果の『伊せや』であるという答えを導き出してくれている。

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おそらく、このバックグラウンドを知って食べる『伊せや』の料理は、また一味違った料理に感じるかもしれない。そして、今後限りない人との出会いがある中で、どのような点を紡いで線をなしていくのかが楽しみでならない。

フレンチには最後必ずデザートがついているように、『伊せや』のデザートを楽しむ日が待ちきれないと思うのは僕だけであろうか。

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伊せや 公式Instagram:https://www.instagram.com/restaurant_iseya/?hl=ja

 担当:賢ちゃん









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