タイニーテーブルコンサート

Tiny Table Concert
タイニーテーブルコンサート企画書

概要:
演者は飲食店等のテーブルを囲む形で演奏する。
このテーブルはステージのように客席と対称となる場所ではなく、あくまでフロア内に配置する。
演者のテーブルには楽器やマイクのほか、飲み物・食べ物を置き、飲み食いしながら演奏する。

Tiny Table Concert 配置例

目的:
日常と音楽に敷居を作らないこと、非日常ではなく日常の音楽であること、演者と聴衆、音楽、空間が本質的に調和していること。

演者に求められる態度:
カッコつけてもよいが、気取らないこと。
その空間において、聴衆と同様の構成員のひとりであること。
聴衆に緊張を強いないこと。

聴衆に求められる態度:
緊張せず、リラックスしていること。
音楽に聴き入らないといけないと思わないこと。
その場を楽しむこと。

Tiny Desk Concertsというものがあり、これはアメリカのNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)というメディアが主催するミュージックビデオの企画である。
NPRのオフィス内(つまりDeskの周り)で演奏し、それをインターネット上で公開している。
新型コロナウイルス感染症流行に伴い生まれたような企画だが、初開催は2008年と、新型インフルエンザの流行よりも前である。

Tiny Desk Concertsは、その映像から所謂一発録りのライヴレコーディングにみえる。
Tiny Table Concertの最大の違いは、ライヴであると同時に、そこに聴衆がいること、Tableであるためにその上には飲み物食べ物が置かれていることである。

Tiny Table Concertのモデルは、実はTiny Desk Concertsではなく、アイリッシュ音楽の演奏スタイルである。
パブで催されるようなアイリッシュセッションでは、客席の中にあるテーブルを演者が囲み、酒を飲みながら演奏する。
あるアイリッシュ音楽の野外イベントでちょっと衝撃を受けたのが、客席や出店の奥に高いステージがあるというような配置ではなく、客席(というか芝生)や出店に囲まれた中央にテントがあり、その中のテーブルを囲んで演奏が行われていた。演者は客席の方ではなく、テーブルの中心に向かって演奏し、もちろんそのテーブルにはお酒や食べ物が置かれていた。
スピーカーは外側に向けられており、時折ラジオのようにMCをしていた。
テントの側には犬が寝そべっていた。

とここまで書いたところで、Tiny Table Concertなんて言ってるけど、要するにアイリッシュセッションじゃん、と自分でも思った。
が、私がやりたい音楽のスタイルはジャズ基盤なので、これをジャズ、それもセッションや、セッションに近いジャズの中でも特に即興性の高い形で行いたい。

Bill Evans TrioによるWaltz for Debby(1961, Riverside Records)は、それはもう素晴らしい演奏なのだが、よく聞くと客席のざわざわや食器同士が当たるカチャカチャ音が入っており、曲の終わりには演奏と直接関係ないであろうお客の笑い声が入っている。もちろん演奏はステージ上で行われていたものであろうが、このテイクは単に演奏が素晴らしいというだけでなく、ある日のニューヨークという街のVillage Vanguardという空間・時間であり、この夜あった日常そのものであるという点において、至上の音源であると私は思っている。

聴衆は聴いていても聴いてなくてもよいのである。
その音や人の動きが流れる空間で、食事なりおしゃべりなりを楽しんでくれればよいのである。もちろん音楽を楽しんでもらえばいいし、音楽がなされているからこそ食事やおしゃべりがより楽しければそれ以上のことはないわけである。

飲食店以外にも、ショッピングモールの広場の中や通路でもいいし、商店街の往来のなかというのもよいだろう。
とにかく、日常の流れのなかで、日常のひとつとして音楽をしたいのである。

今日の時点でこれは構想であり、企画書という形を取ったが、近いうちの実現と継続のために、ゆるく仲間(演者でも聴衆でも空間の持ち主でも)を募るものである。


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