そろそろ投資先について教えてください~REIT(リート)ってなんですか?~
当連載では、これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。
“潤いのある生活”を目指して投資をする際に知っておいていただきたいポイントとして、投資対象について理解していきましょう。前回は「株式」を取り上げましたが、今回は「REIT(リート)」がテーマです。
REIT(リート)とは、「大家」として空室リスクなどを負う代わりに、家賃収入を受け取れる仕組み
REITは家を持たなくても大家さんになれる仕組みで、不動産の投資信託です。「不動産の開発・所有している不動産会社の株式を持つこととどう違うか」を知ることで、投資家としてのREITの意味が理解できると思います。
不動産を開発・所有する会社は、例えば、その家賃収入を3割などは株主に配当しても、残りの7割は業容拡大のための不動産購入(投資)に使います。一方、REITは、原則として、家賃収入を運用者が勝手に投資にまわすことはできません。投資家から見ると、不動産会社の株式は、経営者の裁量に任せる部分が増える分、成長期待もリスクもどちらも大きくなります。REITは、普通の不動産保有と同じで基本的に家賃収入からコストを差し引いた利益がおおむね分配されます。つまり不動産そのものを保有することに近いので、不動産会社の株式を持つよりも一般的にリスクが低く、成長期待も低くなります。
「大家さん」にとって、大きなリスクは空室リスクです。ただし、REITの運営では、オフィスビルであれば、ロビーを改装したりすることで不動産の魅力を高めるための努力をしてくれます。REITでも資産を拡大させたい場合に増資をすることもありますが、調達した資金で新たに収益性の高い物件を取得する場合が多く、株式の増資に比べると希釈化リスク*が低い傾向にあります。 *増資等で新株が発行されることで、発行済株式数が増加し、1株あたり利益が減少すること。
REIT(リート)のリスクとリターンは株式と債券の中間。“潤いのある生活”を目指すためには画期的なシステム
リスクと期待するリターンの関係で言えば、REITは株式と債券の間くらいにあります。株式では経営者の裁量に成長を任せますから、専門家(経営者)が良い成長機会を見つけてくれるかもしれない一方で、事業環境の変化などのリスクも負います。REITは、基本的に不動産を保有することに近いので、空室期間が長くなるリスクがある一方、運用担当者が保有物件の魅力を増す努力をしてくれます。そのため、家賃収入からの安定的な分配(リターン)が期待できる一方で、リスクは仕組みとして株式より限定的です。 債券のように金利を約束するものと比べると、空室などで家賃が入らないと分配が減りますので、リスクは高くなります。
また、REITの価格は、市場での取引なので金利や需給の影響を受けてボラティリティが高く見えることもありますが、実際に不動産を購入するには多額の資金が必要となる上に、入居者を探さなくてはいけなかったり、古くなった部分を修繕したり、大変な運営の手間がかかります。REITであれば、そのような手間や多額の資金がなくても、少額で不動産投資を行うことができ、しかもワンルームマンション投資のように一部屋だけ持つのではなく、運用担当者が幅広く分散投資してくれるのが普通です。個人の投資家にとって、REITはとても貴重な投資機会なのです。
投資の中心である株式の次に、安定した収入が期待できるREIT(リート)を。債券も組み合わせて調整を。
資産形成世代にとっては、引退後の“潤いのある生活”のための投資には、株式を中心に、分散投資の観点からREITも含めた長期投資を行いましょう。また、REITは安定した分配を受けることができるのが特徴です。資産形成をしている期間でも、資産にこういう「部分(安定した分配)」がほしいことがあるかもしれません。
引退世代になると、資産を取り崩しながら、残った部分をさらに将来のために投資しておきたいところです。REITは、仕組みとして、同じ条件の株式よりも高い分配(原則として利益を次の投資に使えない)が期待でき、同じ条件の企業の社債に比べれば空室リスクなどあるものの、決まった金利の約束がない分高いリターンが期待できるのです。引退後の“潤いのある生活”を送る際に、キャッシュフローをデザインするためのツールとしてちょうどよく、引退世代は考慮しておきたい投資対象です。また、引退世代も債券でしっかり元本保全する部分もあるかもしれません。REITは株式と債券の中間にあって、適度なリスクとリターンの期待を与えてくれます。
まとめ
REIT(リート)は、少額で不動産への分散投資ができ、「大家」として安定した分配が期待できる仕組み。株式と債券の中間の投資対象として、資産運用に活用しよう。