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ご質問にお答えします(4)

第6章(3)からどうぞ)

Q.投資において政治リスクをどう考えたらいいでしょうか?

 政治リスクを経済面から考えるということは、経済政策の実行能力を考えることです。

一般に政権が支持率を失う、選挙で負けるなどすると、指導力を失います。重要な政策(例えば景気悪化時の財政拡大かもしれないし、少子高齢化に対応する働き方改革かもしれません)が掲げられても実行できないのであれば、リスク資産の長期的な価値を減らす恐れがあります。リスクも高まるし、人々の努力が報われにくくなります。一般には、適切な政策を掲げた政権が強い実行力を持つほどリスクが少なく、良い成果が早く出ると評価されます。

目先の選挙結果などに一喜一憂して投資のスタンスを変えたりポートフォリオを変えたりすることは、潤いのある引退生活を目指す投資にはあまり関係ありません。サイクルに関わる政策が長期的に投資行動に大きな影響を与え続けることは、めったにありません。トレンドに影響を与える重要政策については、そう簡単に成果が分かるわけではないので、よほど大きな地政学的問題(クーデターや内戦など)等がない限り、長期投資の意思決定に影響を与えないことが多いです。

新興国を見る場合のひとつの観点をお示ししておきます。
民主主義がいきわたっていなかったり、財産権が十分に保障されていなかったりすることが多い新興国で、政権がより多くの人々の福祉を考えているか、それとも一部の部族やグループだけを良い目に合わせようとしているのかを見ていくことは役に立ちそうです。もし一部だけを優遇することを当然視していれば、その国は長期的に発展しにくいと思われます。もしより幅広く人々の暮らしを良くしようと言う意志が見える政権であれば、未来はより良くなることになりそうです。

しかし、くれぐれも専門家が常にモニターし動向を判断することが望ましく、新聞などでさらっとみて考えることでは十分とは思いません。

Q.中央銀行の政策と投資戦略との関係を教えてください。

中央銀行の政策には金利を上げることと金利を下げること(ここでは金利がゼロになって量的緩和をすることも含めておきます)があります。さらにもうひとつが「引き締め的」か「緩和的」かの違いがあります。

金利を引き上げる時が引き締め的だろうと思うかもしれませんが、それほど単純ではありません。期待インフレ率が上昇し、すでに債券の利回りが上がっているときに中央銀行が追随して金利を上げるときは緩和姿勢を続けていることも多いからです。市場の期待以上に金利を引き上げる時に初めて、投資の観点から「真の引き締め」的になってきます。この区別は大事です。

つまり金利を上げるかどうかよりも、中央銀行のスタンスが景気の過熱を警戒して積極的に引き締めようとしているのか、あるいは緩和的なのかの違いが重要です。概念的には引き締め的な金利引き下げ(遅すぎる引き下げ)もありえます(あまり聞いたことがないですがデフレ期の日本がそうだったと考える人もいます)。

金利上昇時でも、中央銀行が緩和的なままであれば、景気回復と緩やかな金利上昇を背景に株価は上昇、債券は(クーポンもあるのでマイナスのリターンとはならないまでも)価格は下落傾向という組み合わせとなります。良い金利上昇の中では、株式投資に魅力があるでしょう。

一方、市場が思うより急激な利上げで中央銀行が引き締め的となっている場合、リスク資産投資の観点ではしばらく良くない状態になりやすく、悪い金利上昇となります。インフレ懸念が強まり、株価も債券価格も低迷しやすくなります。中央銀行のスタンスが投資のタイミング決定には重要です。

タイミングに関わる問題ですから、潤いのあるコアの投資を考える時には中央銀行の政策をあまり詳細に考える必要はないと思います。長期的には政策が金利水準を変えると言うよりも、経済全体が変えるはずだからです。

大きなトレンドとして経済が回復しているとか、さらに人間の努力が世界経済を良くしていくと言う信頼があれば、中央銀行の政策も(過熱を防ぐことも含め)やるべきことをやるはずという信頼の中に入れておいて良いと思います。

第6章(5)に続きます)


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