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そろそろ投資先について教えてください~株式ってなんですか?~

当連載では、これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。
今回からは、いよいよ投資対象がテーマです。しかし、詳しくなる必要はありません。大事なポイントは、それぞれの投資対象が「なぜ価値を生み出すのか」を知っておくことです。潤いのある生活を目指して投資をする際に知っておいていただきたいポイントに絞って話を進めていきます。まずは、「株式」から始めましょう!

株式とは、経営者に事業を任せる代わりに、利益や成長の恩恵を受け取れる仕組み
投資家にとって株式は、事業の稼ぎを分けてもらう仕組みです。少し歴史の話をしますが、中世のヨーロッパでは、コショウは「天国の種子」と呼ばれ、金と同じ価値で交換されていたと言われるほど貴重で高価なものでした。ベネチアの商人たちは、お金を出し合って船を仕立て、ベネチアからコショウの原産地であるインドまで行き、コショウを買って帰ってきました。そして、そのコショウの交易で得た利益を、船にお金を出し合った人たちで分けたのです。つまり、利益を分けてもらう権利が株式というわけです。預金や債券など約束した金利をもらうのとは違い、利益を分け合う仕組みになっていることが大事なポイントです。会社が努力と工夫で稼いでくれれば、その会社の株主はより多くの配当を受け取ることができます。もちろん事業がうまく行かないときには利益が減り分配も減りますが、長期でさまざまな会社に幅広く投資すれば高いリターンが期待できます。


株式は「潤いのある生活」を目指すための投資の中心
この連載のはじめに「将来の“潤いのある生活”を目指す投資」というお話をしました。“潤いのある生活”のためには、債券や預金など元本を保全しようとするだけでは足りません。例えば、今100万円持っているとしましょう。インフレ率*が10%であれば、現在100万円で買えるモノは1年後に110万円になります。インフレ率と金利は密接な関係にあるため、この場合金利も10%くらいだとすると、10%の金利で預金しておけば1年後に110万円になるので、いま100万円の商品(1年後には110万円)を買えるのですが、同じモノを買うに過ぎないので生活水準が上がるわけではないですね。これは“潤い”を生むための投資ではないわけです。“潤い”は、「人々の努力と工夫の成果である事業の利益の分配」つまり株式への投資から受け取るのがよいのです。*物価の上昇率のこと。

株式が価値を生み出すメカニズム~利益の配当と未来の利益への期待
株式は値上がりする仕組みを持っています。株式はもともと利益を分けてもらう権利を持っている人に利益を「配当」で分配する仕組みです。しかし、先ほどのベネチア商人ならインドから戻ってきた船の利益を使って、さらに船を増やしたりしたいですよね。そのほうが多くのコショウを運ぶことができます。株式会社では、利益を全部配当せずに、一部を留保して次の成長の資金にします。例えばその企業の得意分野をさらに伸ばすために使ってもいいですし、新しい事業に進出してもよいでしょう。このように利益を取っておいて、経営者や従業員がさらに利益を増やしてくれることが期待できます。株価が長期的に上がる仕組みは、利益を取っておいて成長分野に投じる株式会社の仕組みそのものです。

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※上図はイメージです。

世界の株式市場に分散して投資。さらには債券やREITとも組み合わせよう
株式は仕組みとしては価値が増えるようにできています。しかし特定の事業だけ、特定の国や地域だけなどとしてしまうと事業環境によっては大きなリスクになります。世界全体にできるだけ幅広く投資して、個別の問題が起きても全体の中では小さくしておく一方、世界の人々の努力と工夫をリターンの源にしておきましょう。もちろん債券やREIT(不動産投資信託)*との組み合わせも考えてよいです。REITは不動産の家賃を分配する仕組みですから、家賃収入が入らなくなる「空室リスク」を取る分、少し高めのリターンを期待できますが、利益の留保ができない分リスクは株式より低めです。債券は工夫すれば追加リターンがあるのですが、一般的には元本を守りたい部分の資金を置いておくのがよいと思います。REIT、債券についてもまた次回以降でお話ししていきます。

*REIT(不動産投資信託)とは、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資し、その賃貸収入などの利益を投資家に分配する投資信託です。

まとめ
株式は「利益を分けてもらう権利」。利益の配当や将来の成長を期待し、“潤いのある生活”のための投資の中心に。

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