【読書感想】読書好きの成人男性が今月読んだ本からオススメ本を紹介する(10月編)

もう早いもので11月ですね。(半分も来てしましました)
2021年もあと1ヶ月半です。流行語大賞の候補も出て(個人的にはゴン攻め/ビッタビタを推しています)、僕の所属する読書会でも「今年の一冊」を選書する企画がスタートしました。
こういう企画が始まると、年の瀬が近づいてきた感じがしますよね。
さて、月も変わったということで、先月から始めたオススメ本紹介の企画です。
10月もいろいろ読んだので、簡単に紹介しつつ、特にこれ!というものについては、読書感想を書いていきたいと思います。
秋を感じにくい気候ですが、読書の秋もラストスパート。気になった本があれば、手に取ってみてくださいね。


(10月に読んだ本リスト)

儚い羊たちの祝宴

 バベルの会をリンクとする短編集。最後の一文で世界観が固定する、作者の魅力が溢れる。

・地下鉄道

 黒人差別を描きながら、あらゆる差別に通じる普遍的な描写が秀逸。

・追想五断章

 今月2作目の米澤穂信。ラストの収束感はさすがの一言。再読したくなる1冊。

・すばらしい新世界

 ディストピア小説の源流の1つ。人間に幸せを強制できるのか。他のディストピア作品に対する解像度が上がる1冊。

・悪道日記

 読書会の課題本。登場人物の言動をどう読み取るか。人と語りたくなる1冊。

・オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

 一緒に暮らすのは家族、恋人だけでなくてもいいはず。こんな選択肢もあっていいかも。

・ふたりの証拠

 悪道日記の続編。双子のその後は?そしてこれからどうなるのか?気になって一気読み。

・第三の嘘

 悪道日記三部作の完結。この物語をどう読み解くか。3部作まとめて読書会したい!

・横浜駅SF

 工事の続く横浜駅が日本全土に広がる?!とんでも設定と思いきや、しっかりSFで面白い。

・阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

 阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ本。仕事もプライベートも一緒な2人の適度な距離感が心地良い。

・おしどり探偵

 クリスティといえばポアロ?マープル?トミー&タペンスも是非!ミステリ好きな夫婦の冒険譚。

・継続捜査ゼミ

元警官の教授と女子大生がゼミで未解決事件を捜査。こんなゼミに入りたかった。ライトで読みやすく、ミステリ初心者にもオススメ。

・馬の首風雲

 戦争は悲惨?最中にいる人にとって、本当にそれだけなの?戦争のすべてがこの1冊に。

(10月のオススメ本:この一冊!)

「悪童日記」 アゴタ・クリストフ(著)早川書房epi文庫

1986年(僕と同い年!)に出版された著者のデビュー作です。
戦争の時代を生き抜く双子の少年の姿が、双子が書いた文章という日記形式で描かれます。
この作品では、固有名詞は全くと言っていいほど出てきません。双子の名前や住んでいる町の名前も「僕ら」や「大きな町」という言葉で表されます。そしてその文章も作中で双子が「日記には事実しか書いてはいけない」と決めたとおり、主観的な表現は一切なく、事実のみが表現されています。
このことに読み手にどのような影響があるかというと、読み手によって解釈が大きく分かれるんですよね。人間は相手の行動から感情を読み取りますが、その読み取りには必ずその人固有の認知というフィルターが経由されます。
例えば、道を歩いている友人に対して「おはよう」と声をかけたが、相手から何も返事がなく通り過ぎてしまった、という出来事を考えてみましょう。もし、あなたが「おはよう」と言った側だとしたら、どのように思うでしょうか。「あいつは僕が嫌いなんだ!」と思った方は、相手に対してネガティブな感情が生まれるでしょう。「辛いことでもあって落ち込んでるのかな?」と思った方は、相手を心配する感情が生まれるかもしれません。このように、事実(起きた現象)をどのように「認知」するかで、人の感情やその後に続く行動は変化します。
この作品も、主観が排除され、客観的な行動によって登場人物たちの姿が描かれるので、読み手である僕らの認知フィルターを経由して、感情が生まれます。もちろん、通常の読書体験でもそうだと思うんですが、この作品はいつも以上に、作品の感想が読み手の思考に影響を受けるんですね。「悪童日記」を課題本にした時には、同じシーンにも関わらず、ある人は「愛に飢えた双子の姿が愛おしくなった」と話し、ある人は「双子が自分のやりたいことを邪魔されて苛立っているように思った」と話し、全然違う感想を持ってたことがわかりました。なかなかこんな体験は珍しいですよね。
この本だからできる読書体験でしたので、是非多くの皆さんにも読んでもらって、本を読んで感じたことや登場人物の行動の背景にある思考についても話してみたい作品でした。

(まとめ)

10月も色々と面白い本を読むことができました。共同生活や戦争をテーマにした本が多かったかなーという印象です。気になったものをランダムに読んでいるようで、まとめて見える化してみると、その当時の自分の興味・関心が見えてきて面白いですよね。
興味があるものがあったら是非読んでみて、感想を教えてくださいね。

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