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日本とお米の深イイ話!神道が伝える稲作の神秘

稲穂が青々と揺れ、日本の夏の原風景を感じられる季節になりました。

私たち日本人にとって「食のふるさと」とも言える、愛すべき「お米」。
ふっくらとした、炊きたてのご飯を目の前にした時の幸福感は、特別なものがありますよね!

ですが、日本人が古くからお米を大切にしてきたのは、単純に「美味しいから」というだけの理由ではありません。
実は、日本の神様や神道の祭祀とも、大変に深い関わりがあるのです!

今回は、日本の国における「稲作」の大切さと、神様とお米の関係についてお伝えしたいと思います。


日本における稲作の歴史

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日本の稲作には、約3000年近くもの歴史があると言われており、今日に至るまで大切に受け継がれて来ました。

日本は気候が米作りに適していたことも幸いし、人々が集まって互いに協力しながら各地で稲作が行われるようになります。

こうして私たちのご先祖様は保存のきく稲を作ることで、それまでの狩猟・採集を中心とした生活に比べて、ある程度安定してまとまった食料を得られるようになっていきました。

それにつれて人口も急激に増え、日本の国は豊かに繁栄していったと伝えられています。

やがてこの国がひとつにまとまり、発展してゆくためにも、「お米」の力は切っても切り離せないものであったわけです。

そして神道の文化では、年間を通じて「稲作」に関わるさまざまな「祭祀」が、大切に執り行われています。
では、なぜここまで「神道」とお米は、密接に繋がっているのでしょうか?


お米は神様からの授かりもの

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「お米」は神様からの授かりものとして、神道においても重要な位置づけであることが、神話によって次のように伝えられています。

昔、「高天原(たかまのはら)」という天界を治めていた、日本の総氏神「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」という太陽の女神様がいました。
天照大御神様は、地上の世界である「葦原中国(あしはらのなかつくに)」を平和に治めるために、自分の孫にあたる「邇邇芸命(ににぎのみこと)」という神様を遣わすことにしました。
このときに「天照大御神」が「邇邇芸命」に授け、三種の神器と共に持たせたものが「稲穂」です。

これは「天孫降臨(てんそんこうりん)」という、神話の中にあるエピソードのひとつ。

そのため、日本の国のことは「豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)」とも呼ばれています。
これは、「瑞々しい稲穂が豊かに実る国」という意味の名前。

つまり、お米は「日本という国の成り立ち」にも関わる、大きな役割を持っていたのですね。


稲作に関わるさまざまな祭祀

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現在も、宮中では天皇陛下を中心として「稲作」にまつわる祭祀が行われています。

特に毎年11月23日には、その年に収穫したばかりのお米を一番に神様にお供えし、国家の安寧と国民の幸福を祈り、自然の恵みに感謝を伝える「新嘗祭(にいなめさい)」という重要なお祀りがあります。
(※一代の天皇陛下に一度、最初の新嘗祭は「大嘗祭(だいじょうさい)」となります)

天皇陛下は、稲を授けた天照大御神様や、この国を治めた邇邇芸命様の子孫にあたりますので、国民を代表して神様に祈りを届けてくださっているのですね。

それだけでなく、天皇陛下自ら「御田植」や「稲刈り」を行い、お米を育てる儀式を行っています。

これほどまでに、「米作り」とは日本の国にとって神聖な行いで、私たちは日々その大切な恵みをいただいているのですね。

各地の神社でも「新嘗祭」の他に「祈年祭」「御田植祭」など、春には豊作を祈り、秋には恵みに感謝を捧げる目的のお祀りが、さまざまな形で受け継がれています。

ちなみに、神社でお供えされている御神饌も、米・酒・餅など、神様にとって重要なお米に関係するものが真ん中に来るように並べられています。


お米で「御神氣」を授かりましょう

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昔の人はよく、親や先生から「お米一粒には7柱の神様がいる」と言われて育ったと言います。
だから、たった一粒でも残してしまったり、粗末に扱ったりすることは御法度だったわけですね。

「米」という漢字も、米作りには八十八回もの作業の手間がかけられているということから生まれたと言います。

それに、元気や勇気などの「気」という言葉も、元々中が「米」の「氣」という文字を使っていました。

人間が持つ「氣」を元通りにすることが、まさに「元氣」の語源。
お米を口にすることによって、神様の「御神氣(ごしんき=神様の氣)」をいただき、氣を補充できるということを表現しています。

ですから、お米を食べることは、神社で神氣を補充するのと同じくらいの意味があるのです!


くらしの中でも食への感謝を

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日本人のくらしや文化と密接に関わってきた、お米――。

私たちが生きることを支えてくれる食に対して、神様への感謝と祈りの習慣は、私たちの身近な場所でも実践できるものです。

たとえば、食事前の「いただきます」の言葉に、感謝の気持ちを込めること。

また、ご自宅の神棚やお祀りしている御札の前に、御神饌(ごしんせん=神様へのお供え物)として、米や米から作られた酒などを捧げることもそのひとつですね。

現代の日本は「飽食の時代」とも言われるほど、多くの食べ物に恵まれています。

しかし、どれほど豊富な食べ物に囲まれていたとしても、私たちはくらしの中で神様や自然からいただいた「恵み」について忘れずにいたいものです。

美味しいお米を食べるたびに、心のどこかでこのお話を思い出し、神様へ感謝の気持ちを思い出していただけたら幸いです。


文/巫女ライター・紺野うみ


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