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自分でできる祓い清め「祓詞(はらえことば)」の意味と役割

モヤモヤしている気持ちを、切り替えたい。
不安なことがあって、その想いを払拭したい。
恐怖を感じる出来事があり、祓い清めをしたい。

――そんなときに、目には見えないけれど心身に悪い影響をもたらす「善くないもの」から、自分の力でも「祓い清め」ができれば心強いですよね。

神道が伝える「祓い清め」にも、たとえば神社で行う手水の作法や、お塩を使った浄めの方法まで、実にさまざまなものがあります。

その中でも今回は、覚えておいて損はない「祓詞(はらえことば)」について、その意味や役割をご紹介したいと思います。


祓詞(はらえことば)とは?

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祓詞とは、神社の神主が御神前で神事を行う際に、一番初めに唱える「祝詞(のりと=神様に申し上げる言葉)」のひとつ。

これは「一番初めに唱える」というところが重要で、これから神様の前で大切な祭祀を行う前に、あらゆるものの罪穢れを「祓い清め」ることができる言霊なのです。

「罪穢れ」とは、私たちが生きて生活する中で、自覚の有無に関わらず背負ってしまう「善くないもの」のこと。
清浄を好む神様の前では特に、まず祓詞を唱えて心身を清らかな状態にしてから、神聖な祭祀に臨むという大切な意味があるわけですね。

神職だけでなく一般の方であっても、神社に参拝する際や神棚にお詣りをする際、この「祓詞」を唱えることで、神様のお力をお借りして祓い清めが行えます。

さらには御神前だけにとどまらず、日常の中で気持ちが優れないときや不安があるときにも、この言霊の力で心を整えることができることでしょう。
あまり長くない祝詞ですから、覚えて暗唱できるようにしていただけたら、困ったときに唱えられるようになって心強いと思います。


祓詞の全文・読み方

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それでは、祓詞の全文と読み方について、さっそくご紹介しましょう!

※御神前で唱える場合は、まず二拝(二度深くお辞儀を)します。

掛けまくも畏き伊邪那岐大神
(かけまくもかしこきいざなぎのおほかみ)
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に
(つくしのひむかのたちばなのをどのあはぎはらに)
御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等
(みそぎはらへたまひしときになりませるはらへどのおほかみたち)
諸諸の禍事罪穢有らむをば
(もろもろのまがごとつみけがれあらむをば)
祓へ給ひ清め給へと白す事を聞こし召せと
(はらへたまひきよめたまへとまをすことをきこしめせと)
恐み恐みも白す
(かしこみかしこみもまをす)

※唱え終わったら、再び二拝二拍手して、最後に一拝です。


祓詞が持つ言葉の意味

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祝詞の言葉は昔の言い回しなので、難しく聞こえますよね。

でも、意味を理解していただくと、そこまで難しいことを言っているわけではないと思えるはずです。
祓詞の中身は、どのような内容なのでしょうか?


掛けまくも畏き伊邪那岐大神
《口に出してお名前を申し上げるのも恐れ多い伊邪那岐大神様が》
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に
《筑紫(九州)の日向の橘の小戸の阿波岐原という場所で》
御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等
《禊祓いをなされた時にお生まれになった祓戸の大神達よ》
諸諸の禍事罪穢有らむをば
《さまざまな災厄・罪・穢れがございましたら》
祓へ給ひ清め給へと白す事を聞こし召せと
《それらを祓い清めてくださいと申し上げることをお聞き届けくださいと》
恐み恐みも白す
《畏れ多くも申し上げます》

……いかがでしょうか?
祓詞とは、このようなことを、神様に祈り伝える言葉なのです。

神話の古事記で伝えられている通り、多くの神々を生んだ伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)という神様が黄泉(死者)の国から帰ってきた後、穢れを落とすために身体を水で浄めたというお話があります。

その際に、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)という立派な神々が生まれました。さらに同じときに、「祓戸大神」たちという、次の4柱の神様も誕生したとされています。

・瀬織津比売神(せおりつひめ)
・速開都比売神(はやあきつひめ)
・気吹戸主神(いぶきどぬし)
・速佐須良比売神(はやさすらひめ)

この神々は「大祓詞(おおはらえのことば)」にも登場しますが、「祓を司る神々」なので、私たちの背負った罪穢れや災厄も祓い清めてくださるお力があるのです。

言葉の意味を理解していると、その神様たちに向かって「どうか祓い清めてください」と祈る気持ちも、より真摯に込められるような気がしますね。


簡略化したものが略祓詞(りゃくはらえことば)

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この「祓詞」を、さらに短く簡略化したものが、次の「略祓詞」です。

祓へ給へ 清め給へ
(はらへたまへ きよめたまへ)

祓詞の中でも最も重要な、神様への「祓い清めてください」という願いの部分になりますね。

「祓詞」の全文が覚えられていないときや、短く唱えたいときなどは、こちらをお使いいただければと思います。


覚えて唱えてみましょう

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このような祝詞を覚えておくと、それはまさに心の中に持ち続ける「御守り」のようなものになるはずです。

なんとなく嫌な感じがしたとき、怖い想いをしたとき、不安な気持ちになったとき――。あなたも、神様に「助けてください」と祈る気持ちで、この言葉を唱えてみてください。

目には見えないかもしれませんが、そこに宿った言霊の力と祈りの心が神様に届いて、きっと善くないものから守り助けてくださることでしょう。

いつでもどこでも誰にでも、日常の中で気軽に実践できる身近な「祓い清め」のひとつですから、ぜひ試してみてくださいね。

もちろん、神社や神棚へのお詣りをするときにも唱えれば、それは神様にお会いする前に心身を整え「正装」をするようなもの。
きっと神様も、よろこんでくださるはずですよ!

文/巫女ライター・紺野うみ


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