冗談みたいに黄色いセーターを買った話

冗談みたいに黄色い服が欲しいんだよねって思いながらしばらく暮らしていて、ようやく見つけた冗談みたいに黄色いセーターを買った。
着てたらセサミストリートのでかいやつみたいとか言われたけど結構気に入っていて、これだよこれこれ、と思いながら黄色い姿で街を歩いてる。

冗談みたいに黄色い服が着たかったのにはいくつか理由があるのだけど、一番はなんていうか自分の属性に飽きたのだよね。文化系地味細身眼鏡男子に飽きたし疲れた。文化系地味細身眼鏡男子が小説書いたり製本したりしてる感じ、その優しい味もういいわってなってきて、なんかタバスコかけたくなった次第です。

今までけっこう服のことあんまり考えずに済むように生きてきた感じがあって、黒とグレーとネイビーばっかり纏ってたところがあるので、冗談みたいに黄色いセーターって僕にとっては人生単位の差し色って感じ。もしこの冗談みたいに黄色いセーターが毛玉だらけになって捨てたとして、そしてまた元のダークトーンコーデの生き方に戻っとしても、冗談みたいに黄色いセーターを着た冬があったことを何年経っても思い出す。あったわそんな冬って。あのセーターは冗談みたいに黄色かったわって。合わせたパンツに黄色い繊維がたくさんひっついてヒヨコと遊んだみたいになってたなって。

メンズ服で冗談みたいに黄色いやつ探すとほんとになくて、カーキっぽいのやオレンジっぽいのやプリント入ったのは結構見つかるんだけど、どうしたって黄色としか言えないような黄色はなかなか見つからない。レディースではたくさん見かけて、レディースの方が服楽しそうって、これはいつも思ってることなんだけど改めて思ったよね。
見つからないとなると余計に欲しくなって、結構がんばって探した。探しながら、なんか衝動的なものに思えていたこの冗談黄色欲は、もしかしたらずっと前からあったんじゃないかって思い始めたりもした。
本当は長いこと、冗談みたいに黄色いセーターを着たい気持ちに蓋をしてたのかもしれない。そういえば小さな頃、小学校に上がるより前のこと、好きな色を聞かれたら「きいろ」と答えていた。当時通っていた保育園ではなぜか「黄色の風船はすぐ割れる」という定説があって（ほんと何この説）、なんとなく黄色が好きだということをあまり保育園では口にしなくなった記憶がある。
好きな色なんて大人になるにつれ聞かれなくなるから、新しく好きな色を意識するようになったのはここ最近、紙ものの制作を始めてから。
今となっては推測することしかできないけれど、もしかしたらずっとずっと黄色が好きだったりしたのかな。それともそんなの都合よすぎるのかな。
意識していなかったことを後になって考えても、どうとでも言えすぎて結局いつも結論はなんだかきなくさい。だからできるだけ今に対する感度が高くありたいよねって、それは割といつも思っている。
だからこの冬は、冗談みたいに黄色いセーターを着ている自分の気持ちをよくよく観察したい。
きっと、この先もずっと思い出すことだから。

きいろーい