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フランス書院文庫

●ジャンルの幅は広くない…むしろ狭くて偏りもしているが、読書が趣味だと臆面もなく言ってしまえるほどには、自分は本を読む奴だと思っている。
ここ10年ほどは、国内作家による所謂【日常の謎】系ミステリか、北欧・ヨーロッパ系ミステリ(警察もの)を主流に読んでいる。
前者は似鳥鶏、大崎梢、近藤史恵、市井豊、米澤穂信、北森鴻など。
後者はR.D.ウイングフィールド、アーナルデュル・インドリダソン、ネレ・ノイハウス、M.ヨート&H.ローセンフェルト、ヘニング・マンケルなど。
勿論、ミステリだけではなく、SFやラノベなども読んだりするが、恋愛ものや純文学などにはあまり食指が動かない。
 
●高卒で就職して、30年以上同じ業界には居るものの、会社は今勤めているところで4つめ。
まあこんな性格だから、昼休みに文庫本読み耽ってることもしょっちゅう。俺の場合、本を買う時には必ず紙カバーをかけてもらう(読み終えたら外す。ちょっと儀式めいてるが)ので、他人からは何を読んでるかはわからないことが多い。
で、過去渡ってきた会社すべてで、同僚なり先輩なりに、同じイジり方をされてきた。

曰く、
『お、何読みよるんや。フランス書院か?』
 
つまり、『昼間っからえろいの読んでるのかこのスケベ♪』と、他愛ないからかいなわけだ。当人にすれば。
で、俺は決まってこう返してきた。

「あー、読みます?色々あるから貸しますよ」
 
こう返しただけで、しょうもないこと言ってきた連中は、もごもご言いながら退散してく。
 
…いや貸すのに。
 

●人並みかそれ以上にはスケベなので、フランス書院もマドンナメイトもあれこれ読んできた。
当然不埒な目的で読むわけだし、その為のジャンルであるのだから、あまりおおっぴらに読んでますアピールをするのもどうかとは思うが、それでも【本】のいちジャンルに過ぎないのも事実だ。
当然ながら、そういうものを目にしたくない、話題にもしたくないという人もいるのだから、そこは気をつけないといけない。マナーというか、エチケットだろう。
ただ、話題を振られたからには普通に返すよ。そこから話を続けられないのであれば、しょうもないイジりはしない方がよろしかろう。
 
●小説の中の性描写で、初めて興奮したのは、夢枕獏【幻獣少年キマイラ】だったのではなかったか。
あとがきで作者はこう書いていた。
『(ティーン向けだからと言って)セックス描写に手を抜かない』
これは、性行為のプロセスをこと細かに描写する、ということではなく、それが必要であるシーンならば、照れず遠慮せず、セックスが行われた事実を書く、ということだろう。

●さすがに中学高校時代だと、恥ずかしさの方が勝つ訳で、書店で見かけても横目でチラ見するのがやっとだった【官能小説】。そして気になる黒いカバーと、【フランス書院文庫】という名前。
初めて購入したのはいつだっけ。最初に勤めた会社で、東京に出張に行った時だっけ。何買ったっけ。覚えてないなあ、もう。
 
●でも、一度買うと慣れるのか開き直るのか、普通に買えるようになるわけで。
よく、レジに持ってくの恥ずかしいから、雑誌とか抱き合わせでごまかしながら買う、っての聞くけど、やったことない。もう、普通に。当たり前の顔して。
だって当たり前だもの。
 
●ただ、フランス書院文庫のメインストリームは、陵辱もの、SMものなので、いまいち趣味に合わない。
次いで所謂寝盗り寝盗られもの、ハレムもの、という路線。
そういうのがなんとなくわかりだした頃に出会ったのが、館 淳一先生の作品。
 
●館淳一作品は面白い。官能描写としては、SM、調教、倒錯が主流だけれど、物語としての完成度がとにかく高い。つまり、“面白い”。
 
館淳一作品の特徴として、【巧みに織り込まれるメディアやネットワークツール】【怪しげな会員制サークル(クラブ)】【倒錯だが純愛】【唐突に出てくる悪党と、その破滅】というのがある。勿論全ての作品にその要素が散りばめられている訳ではないけれど、頻度は高い。
  
●titleは忘れてしまったけれど、ありきたりの風俗に飽きた男が、ある会員制風俗を知る。プレイ内容は、女の子(その店の風俗嬢)を町で尾行するところから始まり、女の子の自宅に見立てたマンションなりアパートなりに着くと部屋に侵入。女の子をレイプするプレイを楽しむ、というもの。部屋は店が借りているもので、【リアルなレイププレイ】が売りの風俗だった。男はそれにハマり、何度も利用する。
しかし、その店やシステムが無許可なものだったため、店のオーナーは逮捕。店はなくなり、男の楽しみはなくなってしまう。
男はその風俗のプレイが忘れられず、ある夜、お気に入りの姫に似た女性を見かけ、つい尾行してしまう。そのまま、あの風俗店のプレイのように、女性の部屋に押し入り…という結末。
あほな男のあほな結末だけれど、だからこそ面白かった。

こんな具合に、館淳一作品は、先に挙げたファクターが絡みあい、物語を面白くする(他人を意のままに操る超能力をもつ少年が出る作品もある!)。
主人公を窮地に追い込む悪党もよく登場するが、決まって破滅する(ので、後味は悪くない)。
 
●最近はフランス書院から離れ、新作も上梓されていない館淳一先生だが、やはり俺にとって官能小説家と言えば館淳一先生であり、その作品と出会えたフランス書院文庫は特別であると言える(かもしれない)。
 
●さて、長々と書いてきたけれど、まあそういう訳で、フランス書院文庫、というブランドにはそれなりに思うところがあるわけで。
実は今年の5月、今年一回目の【フランス書院文庫官能小説大賞】に、拙作を応募したのですよ。
Twitterで締め切り間近だと知り、一昨年某小説投稿サイトに投稿して、完結させていた作品を投げた次第。
投稿サイト掲載の作品でも、URLを送れば応募できるということだったので、勢いで。
素人の作品だし、陵辱でもSMでもないので、入賞はないだろうけれど、何か印象に残せたらいいなとは思っている。
 
●可能ならば、こちらでも何か書ければ…とか考えたりもするのだけど、どうなりますやら。
勿論、官能で。




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