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『塔の上のラプンツェル』をノベライズでちょろっと紹介!

◆どんなストーリー?
 塔のなかの世界しか知らないラプンツェルが、ある日、自分の部屋に忍びこんできたハンサムな盗賊——フリン・ライダーと運命的な出逢いを果たす。
 毎年、自分の誕生日に上がる天灯をじかに見てみたいラプンツェルは、フリンと塔を抜けだし、その願いを叶えようとする。
 その道中、ラプンツェルはいろんな人達と触れあい、フリンに恋をし、天灯が上がる理由と自分の出生の秘密を知り、愛の奇跡を起こすストーリー。

主要人物
ラプンツェル……国王と王妃の娘
フリン・ライダー(ユージーン)……ハンサムな盗賊
ゴーテル……ラプンツェルの育ての母
マキシマス……衛兵隊長を乗せる白毛の馬
スタビントン兄弟……フリンに怨みをもつ盗賊仲間

不自由なラプンツェルと自由奔放な盗賊

 蔓草の垂れさがった天蓋をくぐると岩穴がみえる。その暗い通りすすんでいくと、大きな断崖にかこまれた——なんとも神秘的でしずかな緑地が顔をだす。その奥の崖からは滝が流れており、それは小川となって緑地の渇きを癒していた。
 その中央ともいうべき場所——小川近くに一本の尖塔が建っている。十メートル以上の高さがり、石造りの円筒表面にも蔓草が走っていた……
「ラプンツェ——ル!」
 塔の下から女性の呼び声がした。ラプンツェル——襟ぐりの広い長そでワンピースはピンク色で、美しい金髪がとんでもなくながい美少女——の大きな瞳がさらに大きくなり、胸が高鳴った。
「髪みを下ろして!」すこし苛立った声になる。「早くして、年を取ってしまう」
「今、下すわ。ママ」つきでた窓枠の天井についているフックに、ラプンツェルは二十一メートルもある長い髪みをひっかけ、垂れおとす。
 下で待っている四十代くらいの母——ゴーテルがその髪みをつかむと、ラプンツェルがロープのように自分の髪みをひっぱって昇らせる。
 アーチ型の両開き窓から入ってきたゴーテル——ワイン色のチュニックの上にフード付きの黒いローブをまとっている——は、すこし待たされたことを皮肉り、すぐさまローブを脱ぎ捨て、部屋の大きな姿見のまえへ歩いた。
「お母様……」畏まったようすで言う。「明日はとても大切な——」
「鏡をみて」さえぎったゴーテル。ラプンツェルを隣りに抱き寄せた。「映ってるわ。力強く、自身に満ちた美しい女性の姿が」
 なんだか嬉しくなったラプンツェル。
「あら、あなもいたの?」ゴーテルは高笑いした。「ほんの冗談よ」また、ラプンツェルの言いかけた言葉をさえぎり、自分の小ジワをチェックした。「すこし疲れたわ。歌ってよ、話しはそのあと」
 悲しげな顔だったのがすぐに明るくなり、ラプンツェルは急いで歌ってみせた。「黄金に輝く花〜どうか戻して〜♪」少女の長い髪みが——頭部から先端へと光りだす。「傷ついた者をかつての姿にもどして〜♪」
 すると、一瞬、パァッとその場が閃いた!
 ゴーテルのウェーブ・パーマのような黒い髪みから白髪がすべて消失した。彼女が気にしていた目尻のシワもみごとに消えた。ゴーテルは、いっきに十歳くらい若返った。
 ラプンツェルのテンションの高さに、ゴーテルは不審におもう。
「お母様、明日は大切な日なの!」シングル・チェアに座らせたゴーテルに、ラプンツェルは言い寄った。「だって、私しのお誕生日よ! チャラ〜♪」
「それが何だっていうの?」抱きつかれた娘の腕をかるく払いのけた。
「明日で私しは一八歳になるわ」その場で正座をした。「お願いがあるの……ずっと望んでいたことが……」
「モゴモゴ言わないでハッキリとおっしゃい」
 自分の長い髪みをさすりながら、キャビネットの隅っこに隠れている友達のパスカル——通常は緑色で環境に擬態することができる小さなカメレオン——に視線をやった。愛くるしいほど大きなお目目をしているパスカルは、「今がチャンスだよ」と、三本指の前足でつたえた。
「空に浮かぶ光りが見たい!」両拳をギュっと握りしめ、ラプンツェルが言った。
「アハ……何ですって?」手すりのついた階段前で聞き返した。
 ラプンツェルは暖炉の上に掛かっている大きなドレープ・カーテンを開いた。「連れていってほしいの。毎年、お誕生日に現れる光りのところへ」自分の描いた絵をみながら続ける。「きっと私しのための光じゃ——」
 それは、夜空にキラキラと浮かんでいるたくさんの光りを、緑りの丘にならぶ木の上から自分が眺めている絵だった。
「あの光が何か知りたい」切なげにお願いした。
「外へ行きたいの?」ゴーテルは、外の光りが入っているアーチ型の窓をしめた。そして、外の世界がどんなに恐ろしいところなのかを、これみよがしに諭した。「いい? ラプンツェル」娘の両肩に手をおいた。
「はい」母を見上げた。
「“塔を出たい”なんて、二度と言わないで。わかった?」
「……はい、お母様……」
「はぁ……大好きよ。かわいい娘」ラプンツェルの額にキスをした。
「私しもお母様が好きよ……」
 竹籠を腕にぶらさげ、ゴーテルはふたたび塔のしたへと下りていく。「すぐ戻るわ、私しの“お花”」
「ここで待ってるわ……」弱々しい小さな声でつぶやき、ラプンツェルはゆっくりと自分の髪みを下ろしていった。まるで主人の帰りを待つ、伏せをした子犬のように……。

 高台にそびえたつ大きな宮殿をかまえた王国から少し離れた森のなか、木漏れ日の射している大木の面に、ある指名手配書が貼ってあった。

“お尋ね者 フリン・ライダー
“同じく スタビントン兄弟

 大柄の野蛮そうな双子の兄弟が走ってきた。そのあとを追うように、標準体型の仲間の男が現れた。三人は息を切らし、一息つこうと、その大木のところで、ぜぇはぁ…している。
「……はぁ……!?……っは!」標準体型のフリン・ライダーが大木の手配書を二度見した。青いチュニック型のベストをワイシャツの上に着ている二十六歳の彼れは、無口で武骨そうなスタンビントン兄弟とちがって、どこか貴族風を感じさせる清潔感があり、乙女たちを誘惑する甘いマスクをしている。
「ウソだろ!? 最悪だよ」目の前で、まだ、ぜぇはぁ…している兄弟にその紙をみせた。「僕の鼻はこんなんじゃない!」
 フリンの美しい鼻筋が、やけにゴツく描かれていた。
「知るかよ」刀剣を背中に差している兄のほうが言った。アゴが顔の半分近くあり、一卵性双生児のため、兄弟の見た目はそっくり。区別するとしたら、兄は頬髭を生やしており、弟は左目に眼帯を巻いている。
 突然、近くで馬のいななき声が聞こえたかと思うと、王国から駆けつけてきた衛兵隊が現れた。彼れらは窪んだ土地から見上げている三人の指名手配犯を見下ろしている。また、白毛の馬がいななき、雄々しく前足を浮かせてみせた。衛兵の騎馬隊たちは三人のいる窪地へと下りていく。
 フリンとスタビントン兄弟は慌てて逃げだした。また、息を切らしながら走っていくと、三人は高地の側壁にぶちあたり、立ち止まった。
「僕が最初に上がって、お前たちを引っ張るよ」側壁に手を当て、フリンが言った。
 兄が弟にいちべつした。「先にその鞄をよこせ」
「なに? 僕を信用しないのか?」
 兄弟とも、嘘つきを見るような目をしている。
「わかったよ」しぶしぶ、フリンはショルダー・バッグを渡した。
 すると、弟が兄をかつぎ、フリンがその兄の顔を踏み台にして、ようやく側壁をあがりきる。
「俺れをひっぱれ」兄が手をのばした。
「ごめん」フリンは盗んだ鞄をみせつけた。「手が一杯で」すぐにその場から走り去った。
「なに!?」身につけていた鞄が無くなっていることに兄は気づく。そして、憤怒の叫び声をあげた。
「ライダ——————ッ!!!!」
 しめたしめたと思っていたら、兄弟を捕らえた衛兵隊がまたすぐに駆けつけてきた!
「かならず鞄を取り戻せ!」トサカのような兜飾りをつけた隊長が言った。彼れは先頭を突っ切っている白毛の馬——マキシマスに乗っている。後ろを付いてきてる他の衛兵たちは栗毛の馬。彼れらは騎乗から、三十メートルほど手前にいるフリンを目掛けてボーガンの矢を放った。
 フリンは目の前に倒れている大木の下にすべり込んだ。すると、さきほど放たれた矢の数々が大木の面に突き刺さった。運良く矢を避けたフリンは、また、慌てて入り組んだ森のなかを全速力で走りつづける。フリンの後ろから大木を飛びこえた衛兵たちが追いかけてやってくる。
「逃がすな! マキシマス」
 隊長の言葉に白毛のマキシマスの目が鋭くなり、さらにスピードが上がった。
 すぐに追いつかれると思ったフリンは、大木から垂れている紐状の蔓をつかんで、その大木を一周する。すぐさま、衛兵隊長の背後をつき、彼れは遠心力をつかってマキシマスから蹴り落とした。代わりに自分がマキシマスに乗り、後ろの衛兵たちから逃れようとする。
「やあ——ッ!」手綱を両手で下にたたいた。
 しかし、すぐに主人が代わったことに気づいたマキシマスは急停止した。首をよじって、フリンを睨みつけた。
「どうした、走れ!」踵で拍車をかけた。
 マキシマスはフリンのぶら下げている鞄に着目し、その鞄をうばい返そうと暴れだした。大きな口で鞄をくわえると、フリンと激しく引っ張り合う。反動で鞄が勢いよく吹っ飛び、断崖に植っている木の枝に引っかかった。
 マキシマスと一瞬、お互いに目を合わせたフリン……。僕が先だと言わんばかりに急いで馬から降り、木の枝に引っかかった鞄をつかみとる。
「っは!」マキシマスにドヤ顔をした。
 しかし、いくら太い木の枝でも、マキシマスの体重までは支えきれなかったようだ。ピキッという枝の折れる音と同時に、フリンとマキシマスは高い崖の上から落ちていった。崖下には、突きでた岩があり、折れた枝がさらに中心で折れた。二人はその反動で別々に飛ばされた。
 地面に着地したマキシマスが起きあがる。緑地に残っているフリンの匂いをクンクン…クンクン…とたどりながら、森のなかを歩いていった。
 マキシマスが通り過ぎたあと、フリンが顔を出した。岩の影にかくれていたのだ。マキシマスが戻ってこないか目で追いかけながら、彼は崖下まで垂れさがってる蔓草の天蓋に手を当てた。
「うぉッ!」フリンは驚いた。崖下に人が通れる空洞があったのだ。マキシマスのいななきが近くで聞こえたため、彼れはその蔓草の天蓋をくぐりぬけた。
 マキシマスの影が蔓草から浮かんだ。あたりをキョロキョロ見渡すと、また鼻をつかって森道を歩いていった。
 洞窟の岩に身をひそめていたフリンは、ホッとした。大事そうに抱えているカバンを見て、ニヤリとした。

 目的の品を無事に盗むことができたフリンは洞窟の道を進んでいき、断崖にかこまれた緑地にたどりつく。そのあまりの美しさに目をうばわれているようだ。力強くながれている生き生きとした滝の音……せせらぐように流れている優しそうな小川の音……なによりも目立つ、一本の高い尖塔……。
 これは、まさに運命——
 ついに二人が出逢うのだ。
 塔に囚われたラプンツェル——
 ハンサムな盗賊のフリン・ライダー……


 ——おわり。

 なんとこの映画の制作費、2.6億ドルもかかっているようです。
 再生時間が100分なので、一分あたり260万ドルということですね。
 なんか、めっちゃ得した気分っ!

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