なぜ岸田文雄首相は嫌われたのか?(前編)
今回は、長くなると思うので、(前編)(中編)(後編)に分けて書きたいと思う。
「なぜ岸田文雄首相はこんなに嫌われたのでしょうか?」
コメント欄に、こんな質問を受けた。なかなか返事ができなかった。なぜなら、自分は「好き嫌い」で政治を観ていないからだ。
ご存じの方もいるだろうが、私は政治にかかわる人は、左から右まで、すべてリスペクトしている。こんな面倒なことを引き受けてくれるだけで、ありがたいことだと思うのだ。
個人の思想信条というのは、その人の生まれ育ちや、出会い、経験で作られていく。近頃は「親ガチャ」という言葉があるようだが、誰もがどんな家に生まれるかを自分で決めることができない。運命である。
一方、恵まれた家に生まれようと、貧しい家に生まれようと、それぞれ悩みがある。
だから、私は思想信条の違いで、政治家を好いたり嫌ったりしない。少なくとも、学者としてはそうだ。もっとも、選挙の前には、すべての政党を等しく批判する「全方位批判」をするのが恒例である。だから、左から右まで嫌われる(笑)。
でも、共産党、立憲民主党から公明党、自民党、そして右翼まで、とても親しい、信頼できる友人がいる(笑)。
そういうことなので、「なぜ岸田首相は嫌われたのか」と聞かれても難しい(笑)。
ただし、私は岸田首相が就任する前から、「岸田文雄に首相の資質なし」と主張してきた。いくつかの理由があるのだが、それを紹介して質問への答えとしたいと思う。
あえて最初に結論から言う。岸田首相は、何代も続く政治家の家系に生まれなければ、首相はおろか、政治家にすらなれなかっただろう。その程度の資質の人物だということが、国民に見えすぎた。それが、国民をイライラさせたんじゃないかと思う。
もちろん、政治家の家系に生まれなければ、政治家にすらなれなかっただろうというのは、岸田氏だけじゃない。多くの世襲議員がそうだ。安倍晋三元首相、麻生太郎元首相もそうだと思う。
ただ、安倍元首相や麻生元首相には、よくも悪くもお坊ちゃまらしい「やんちゃさ」があって、それが、政治家としての資質を伸ばすことにつながったと思う。これは、いい悪いではなく、好き嫌いでもないですよ。淡々とみて、そうだと思うだけです。
一方、岸田首相には、その「やんちゃさ」はない。どちらかといえば、愚鈍、鈍感さが目につくのだ。
なによりまず、「河井案里選挙違反事件」への対応があり得なかった。
2019年7月、参議院議員選挙の広島選挙区で、立候補していた自民党の河井案里を当選させるために、その夫であり衆院議員であった河井克行が、案里と共謀して大規模な買収行為を行った。その結果、案里は当選した。
一方、選挙前の現職だった溝手顕正(自民党)は落選した。溝手氏は、当時党政調会長だった岸田氏の側近だった。
元々、広島は岸田氏の地元だ。自民党広島県連は、溝手氏が所属する岸田派が多数を占めていた。ところが、安倍首相(当時)、菅義偉官房長官が河井氏を応援し、当選させるために、党本部から1億5000万円を入金した。それに対して、溝手氏への入金は河井氏の10分の1のわずか1500万円だった。
河井克行氏は、2019年3月下旬から8月上旬に広島県議や広島市議、地元首長ら計94人に案里への投票や票の取りまとめを依頼し、総額約2,570万円を提供したという。また、河井案里氏は、このうち5人に対する計170万円について夫の克行と共謀したという。
後に二人は、公職選挙法違反で逮捕された。
河井夫妻が問題なのは言うまでもない。だが、私は、買収された広島県議、広島市議、地元首長らは、元々誰の支持者だったのかということが問題だと思う。
そのほとんどが、岸田首相の地元支持者に他ならないからだ。
私は、地元支持者が他の陣営に買収されることも防げない、側近の落選すら防げない、地元にすら軽く見られている人物に、首相が務まるわけがないと、当時思った。
そのような人物が、バイデン、プーチン、習近平、モディ、エルドアン。。。魑魅魍魎、百鬼夜行の国際社会で、日本の国益を守れるわけがないからだ。
私は、あの時、岸田文雄氏に首相の資質なしと断じました。
(中編)に続きます。