見出し画像

エーラス・ダンロス症候群に起因する眠気症状は過眠症(特に特発性過眠症)の誤診を受ける

原因不明の眠気や疲れの症状が出た場合、一番最初に疑うべき疾患は特発性過眠症やナルコレプシーではなく、一番最初に行うべきテストは反復睡眠潜時検査MSLT(=健常者の一般人口の約22〜30%/3〜5人に1人が過眠症の診断が陽性になる検査)ではありません。


下記のビデオの患者さん眠気の症状があり病院を受診した際、特発性過眠症の診断を受ける前に「結合組織疾患」の診断を受けていました。

日本国内では眠気を訴える患者に十分な除外診断を行わないまま特発性過眠症の診断を受けてしまう傾向にあるため、特発性過眠症の診断を受ける前に結合組織疾患の診断を受けたという状況はほぼ起こり得ないです。

エーラス・ダンロス症候群は、コラーゲン分子又はコラーゲン成熟過程に関与する酵素の遺伝子変異に基づく、皮膚、関節、血管など全身的な結合組織の脆弱性に基づく遺伝性結合組織疾患です。

エーラス・ダンロス症候群は、免疫に関する疾患を発症しやすいので、特発性過眠症以外にもナルコレプシー1型やクライネ・レビン症候群の方に多くいらっしゃいます。

エーラス・ダンロス症候群の第一の特徴は皮膚や関節が柔らかいことです。訓練を受けていないのに生まれつきバレエのポーズができたり、皮膚が普通の人よりも伸びたり、手や腕や足の関節が反対側に反り返る度合いが広い人です。
※皮膚の伸展や関節の柔らかさはエーラス・ダンロス症候群の診断の必須条件ではありません。エーラス・ダンロス症候群の患者さんの中には皮膚の伸展は普通くらいで体が硬い方もいます。


現在、過剰診断がされている過眠症と対照的にエーラス・ダンロス症候群は過小診断がされている疾患です。

エーラス・ダンロス症候群は医療関係者の方にも認知度が低い疾患です。そして、例え認知をされていた場合であっても、医療関係者の方がその症状や病態に関する大きな勘違いをされているため、多くの患者さんが診断にたどり着けないでいる疾患です。

私が最近お話をした患者さんにも睡眠専門医さんに「エーラス・ダンロス症候群で過眠の症状は起きない」と否定をされたという方がいらっしゃいました。

下記にエーラス・ダンロス症候群と過眠症についての関連性に関する論拠となる情報を記載していきます。


エーラス・ダンロス症候群は「眠気を引き起こす疾患のリスト」「過眠症と誤診を受けやすい除外診断をするべき疾患のリスト」として過眠症の世界で二つしかない過眠症の研究啓発団体の両方のサイトに記載されています。

https://www.hypersomnolenceaustralia.org.au/single-post/2017/12/25/daytime-sleepiness-finding-the-cause

https://www.hypersomniafoundation.org/related-disorders/

従いまして、「エーラス・ダンロス症候群は眠気を引き起こさない」というのは完全に間違えであると断言ができます。

過眠症で世界で最も権威のある上記2つの団体の両者がHPで取り上げているわけですから、過眠症(特発性過眠症)のような眠気の症状を呈している患者さんに除外診断として問診や検査を行うべき疾患であるということです。
ちなみに特発性過眠症に関して、世界的に有名な団体は上記の二つ以外に存在しません。



エーラス・ダンロス症候群の専門の団体のサイトにも「睡眠障害」や「眠気の症状」が取り上げられています。


世界のエーラス・ダンロス症候群の専用団体のサイトに取り上げられているということは睡眠障害や眠気の問題がエーラス・ダンロス症候群に典型的な症状であるということです。

https://www.ehlers-danlos.org/information/managing-fatigue-sleeping-problems-and-brain-fog/

上記以外にもエーラス・ダンロス症候群と眠気との関連を示唆する論文や発表が多くあります。

The most common presenting symptoms for children seen at our sleep clinic were daytime fatigue (73.8%), daytime sleepiness (67.2%),
The most common diagnoses included behavioral insomnia (32.8%), periodic limb movement disorder (24.6%), primary hypersomnia or narcolepsy (21.3%),

There is evidence of a high frequency of sleep problems in adults with Ehlers-Danlos syndrome (EDS)

​Patients with Ehlers-Danlos syndrome can be affected by sleep disorders,


Non-restorative sleep in EDS



Main features of HSD/hEDS2  Hypersomnia

https://alanspanosmd.com/wp-content/uploads/2022/03/Medical-Care-of-Patients-with-a-Hypermobility-Disorder.pdf


It’s common for patients with hypermobile EDS to experience sleep disorders, which may be present in other types of EDS as well. However, because those types are rare, no research studies have been conducted on their effects on sleep.

ナルコレプシーとエーラス・ダンロス症候群の関連性を示唆する論文がいくつか存在します。

下記の論文では1535人のエーラス・ダンロス症候群の患者さんのうち41人がナルコレプシーである(有病率1:37)と言う統計データが発表されています。
Although sleep disorders have been well described in Ehlers-Danlos syndrome, the observation of an increased prevalence of narcolepsy has not been reported.
Our EDS cohort of 41 out of 1535 points to a prevalence of about 1:37 in this population.

ナルコレプシーとエーラス・ダンロス症候群はその他にも複数論文が発表されています。

Ehlers Danlos syndrome (EDS) is a collagenic disease that has often been associated with different types of sleep disorders ranging from insomnia to obstructive sleep apnea (OSA). EDS usually has associated fatigue and excessive daytime sleepiness (ES), thus narcolepsy should be excluded as a cause. Literature review suggests a high prevalence of hypersomnia disorders in this population.

https://openaccesspub.org/sleep-and-sleep-disorder-research/article/1003

it shows a suspected association between sleep disorders and autonomic dysfunction in patients with EDS.



①世界一の過眠症の二つの団体がエーラス・ダンロス症候群を除外診断リストとして公表していること。

②世界一のエーラス・ダンロス症候群の団体が眠気をエーラス・ダンロス症候群の症状としてリストしていること。

③エーラス・ダンロス症候群と過眠症に関する論文や発表がたくさん存在すること。

この3つ以上に議論をする必要はないと思います。


また

④エーラス・ダンロス症候群は発達障害との関連が広く知られております。

例えば下記に17-18歳の関節型エーラス・ダンロス症候群の46%がADHDであるという研究があります。
In the age group 15– 16 years, 35% of those with hEDS had ADHD and, among those aged 17– 18 years, ADHD was present in 46%.

https://www.dovepress.com/prevalence-of-adhd-and-autism-spectrum-disorder-in-children-with-hyper-peer-reviewed-fulltext-article-NDT

⑤エーラス・ダンロス症候群は免疫異常との関連が示唆されています。ワクチンや感染症後の体調不良/慢性疲労症候群/コロナ後遺症などの症状との関連も示唆されています。

上記の④⑤に関して論文が大量に存在しますので全ての論文の掲載は控えました。
※英文で検索をするとすぐに見つかります。


発達障害と免疫異常は睡眠障害を引き起こすことが知られているので、
④⑤により間接的にエーラスダンロス症候群と睡眠障害の関連を証明することもできます。


⑥個人的なことになりますが、過去に英語圏のFacebookグループでエーラス・ダンロス症候群の患者さん483名に向けたアンケートを行ったとき「睡眠障害がある」と回答した人が70%以上でした。


少し前まで、特発性過眠症が10万人に数人という説を信じていらっしゃる方が多くいらっしゃいました。そして「特発性過眠症の有病率は10万人に数人」という見解は様々な医療機関の公式文献にも記載されていたのでした。しかし、今現在、その統計が間違えていることを多くの方が知っています。


エーラス・ダンロス症候群もこの特発性過眠症の有病率と同じような状況です。

今現在厚生労働省などから発表されているエーラス・ダンロス症候群の有病率(5千人に1人)は間違えている可能性が高く、実際の有病率はその10倍(もしくはそれ以上である)ことが様々な文献に記載されています。
https://ehlersdanlosjapan.wixsite.com/info/prevalence

私が今までお会いしてきたエーラス・ダンロス症候群の診断を受けている患者さんのケースは診断までに15年以上の年月がかかってしまったという方が多いです。
現在当団体が実際に接している患者さんや医療関係者の間でエーラス・ダンロス症候群がこれほど認知を受けておらず、診断が受けずらい疾患なのであれば、現在公表されている有病率は実際の患者数を反映していないものであると思います。


私たちは200名ほどの過眠症の診断を受けてきた患者様と接してきました。
現在、過眠症(特に特発性過眠症)の診断を受ける患者さんの約7人に1人くらいの方がエーラス・ダンロス症候群に起因する眠気の症状であると感じています。7人に1人という数字に関しては当団体の独自見解なのですが、数字や割合がどうであれ、現在、エーラス・ダンロス症候群に起因する眠気症状に悩んでいらっしゃる患者さんは多くいらっしゃいます。

現在、日本国内の医療機関では物理的な症例が重度である症例(内出血で輸血が必要、脱臼するのでサポーターが必要、指が180度逆に曲がる)のみがエーラス・ダンロス症候群であると認識をされているため、そのような重度の症状がない患者さんがエーラス・ダンロス症候群であるということを医療関係者に伝えても診断を否定される方が多いです。

当団体に連絡を取られている過眠症を併発されているエーラス・ダンロス症候群の患者さん達には明らかに異常な結合組織に関する症状を発症されています。
しかし、今のエーラス・ダンロス症候群の患者さんは明らかな症状があっても「脱臼も内出血もしないならあなたはエーラス・ダンロス症候群ではない」と医療関係者から否定をされることがあります。そういった認識は完全に間違えていますが、それが今の医療現場の現状です。

エーラス・ダンロス症候群は遺伝子検査とその他で診断を受けるので、客観的に診断できるものですが、遺伝子検査で確定診断を受けている私自身もそうでしたし、他の患者さんもそのように間違えた知識を持った医療関係者から自信満々に否定を受けています。

例えば、軽症のコロナ感染症の患者さんに対して「TVで放送しているのはコロナ感染症で命を落としてしまったり、後遺症が残ったり、入院して人工呼吸が必要な重症例だけだ!あなたの軽症の風邪のような症状はコロナではない!」と言い切るのは間違えであることはご理解いただけるでしょう。

ナルコレプシーに関しても「ナルコレプシー1型の眠気は他人との会話中に眠ってしまうものだからあなたの眠気はナルコレプシーではない!」「T Vで放送された症状と違うならあなたは違う!」と医療関係者が否定してくることがあります。
しかし、実際、他人との会話中に寝落ちするナルコレプシー1型の患者さんは少数派です。


現在、ナルコレプシーの患者さんは他人との会話の途中で寝落ちをするような重度の眠気の症状がなくても、脱力発作と入眠幻覚がありナルコレプシーの検査が陽性であれば診断を受けています。

現在のエーラス・ダンロス症候群の状況は過去の発達障害に似ています。
例えば、20年前、発達障害は障害児学級に通うような方のみの症状であり、現在のように普通学級に通い普通に生活をしている普通の人が患っている疾患であるという認識はありませんでした。
今現在は国立大卒の有名人の方が発達障害を自称していたりします。
発達障害の概念や診断基準は過去20年間で大きく変化しました。

現在、エーラス・ダンロス症候群も過去の発達障害と同様で一部の重症例のみが診断を受け、それ以外の症例が医療関係者に診断を否定されています。しかし、エーラス・ダンロス症候群も今後の20年間で過去の発達障害と同様に診断基準が大きく変化するものであると予想しています。

当団体はエーラス・ダンロス症候群を発達障害やナルコレプシーのように医療関係者に正しい知識が普及できるように活動を行いたいと思います。

現在でも、エーラス・ダンロス症候群は現在皮膚の進展症状やその他の症状がテレビで取り上げられるほど顕著でなくてもその他の全ての症状に合致し、且つ検査が陽性であれば診断を受けられる可能性があります。
(※エーラス・ダンロス症候群は病院ごとに診断基準が違うのでこの限りではないです。)

お近くにエーラス・ダンロス症候群の専門医さんがいらっしゃらない場合、起立性調節障害や思春期の不登校の患者さんを診察されている病院のお医者様にご存知の方がいらっしゃる場合があります。
(※しかしその数はあまり多くないのが現状です。)

過去に過眠症の診断を受けている患者さんがエーラス・ダンロス症候群の専門医さんとお話をすると過眠症以外の身体症状に関しても「この症状はこの疾患のせいだったのか!」と合点、納得がいく患者さんが多くいらっしゃいます。

そして、エーラス・ダンロス症候群の患者さんに共通して効き目がある治療法が効きやすい方が多いです。

当団体もエーラス・ダンロス症候群と過眠の症状の関連を理解してくださる医療機関様に患者様をご紹介してきたことがありますが、過眠症(特に特発性過眠症)で今まで社会福祉が何も受けられなかった患者さんが正しい診断名がついたことで難病指定が取得できたケースがあります。
脱臼などの物理的な身体症状のある方では身体手帳を取得することも可能なケースもあります。

現在の過眠症は診断基準に大きな問題があり、誤診の多い疾患です。健常者の一般人口でも約3〜5人に1人が診断を受けてしまう現在の診断基準を持って難病指定の申請をするのは不可能であると思います。


しかし、エーラス・ダンロス症候群は遺伝子検査その他でより客観的に診断ができるものです。


当団体ではエーラス・ダンロス症候群に起因する過眠の症状でお困りの患者さんが正しい診断や治療が受けられる医療制度を構築していきたいと考えています。

下記の記事もぜひ読んでみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?