紹介したいnote記事「140字恋愛小説『恋人たち』」
冬月剣太郎 猫詩人🐈さんの「140字恋愛小説『恋人たち』」という記事を紹介します。
140字という短い小説です。詩よりも小説の方が理解しやすいだろうと思ったのですが、一目見ただけでは理解出来ませんでした。
この小説は3段階に分けられます。まずは最初の3行です。
「絶対に出逢ってはならなかった青年と少女。二人とも純粋すぎた。青年は学業を放棄して、まだ未成年だった少女と結ばれた」
次に4行目の一文。
「妊娠した少女は十六歳の誕生日に手首を切り、青年は発狂した」
そして最後の2行。
「世界で一番不幸な恋人たちは、世界で一番幸福な恋人たちだったかもしれない。愛の純粋さと強さにおいて」
最初の3行には「青年と少女が結ばれた」とありますから、喜ばしい事柄が書かれています。
真ん中の一文には「少女は手首を切り、青年は発狂した」とありますので、幸せの絶頂から不幸のどん底に落ちてしまいます。
前の2つは起きた事柄であり、最後に書かれているのは作者の感想です。この部分がとても難解で、作者は何故こう書いたのかが今回の冬月さんからの挑戦状です。
140字にしたのは、ツイッターで投稿する際の文字制限が理由だと思います。140字しかありませんので、省略された部分は推理するしかありません。
まず最初に、青年と少女は「絶対に出逢ってはならなかった」と書いてあります。理由は謎ですが「出逢って恋に落ちた二人が結ばれてしまっては、絶対に不幸になる」はずだと、作者には最初からわかっていたのでしょう。
例えば、二人は父親が違うか、母親が違う義兄妹だったのかも知れません。そうとは知らずに出会い、恋に落ちてしまった。妊娠した少女は、16歳になったから青年と結婚出来ると思った事でしょう。
その時に戸籍を調べて、初めて二人が義兄妹だと気づいたのではないでしょうか。そして窓口で「お二人は結婚出来ません」と告げられたとしたら、どんなにショックでしょうか。
青年は学業を放棄して、生活のために働き始めたのでしょう。そして少女は妊娠しています。普通、愛する人の子どもを妊娠する事は喜ばしいはずです。しかし、兄妹の性的関係は近親相姦であり禁忌です。そして法律でも結婚は認められていません。
人生を悲観した少女は自殺を試み、それを見た青年は発狂します。そして最後の2行に続きます。「世界で一番不幸な恋人たちは、世界で一番幸福な恋人たちだったかもしれない」と。
「世界一不幸」と「世界一幸福」は相反しているはずなのに、二人はそうだったかも知れないと作者は言い、それは「愛の純粋さと強さにおいて」であると付け加えています。
世間では父娘間、あるいは兄妹間においての性的関係が少なからずあります。大抵の場合は、性暴力の加害者被害者になると思いますが。
時には、兄妹の相思相愛で関係を持つ事もあるでしょう。しかしそういう場合は、二人だけの秘密にするなどして、自殺するまで思い詰めたりはしないのではないでしょうか。
しかしこの二人は「あまりに純粋すぎた」とあります。二人だけの秘め事ではなく、周囲に祝福されて一緒になりたかったのです。「それが無理ならいっそ死んでしまおう」と少女は思い、「彼女のいない人生は意味がない」と彼は発狂してしまった。
それが「愛の純粋さであり、強さ」なのかなと思いました。
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