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君のクイズ

さて、本日紹介するのは、小川哲先生の「君のクイズ」です――。

これはとんでもない作品です!!
さすが日本推理作家協会賞受賞作品!!

あらすじ

何が、そんなに凄いのかは、あらすじを読んで頂ければ分かると思います。
生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」に出場したクイズプレイヤーの三島怜央。優勝者が決まる最終問題で、対戦相手の本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれていないうちに回答ボタンを押し、正解してしまう。
本庄絆の優勝でQ-1グランプリは幕を閉じるのだが、不可解な状況により、ヤラセ疑惑が浮上し、炎上してしまう。
だが、実際に本庄絆と対戦した三島怜央は、あのクイズをヤラセだと断言できずにいた。だが、だとしたら、どうして一文字も問題が読まれていないにも関わらず、本庄絆はクイズに回答することが出来たのか?
真相を解明しようと、本庄絆のことを調べ始めた三島怜央は、やがて自らの過去とも向き合うことになっていくのだが……。

感想

本庄絆は、どうして問題が読まれる前にクイズに回答することが出来たのか?
予め答えを知っていたのか?
だが、だとしたら、わざわざ0文字回答をして、疑われるような真似をする必要はなかった。

提示される謎は魅力的で、読み手の好奇心をどうしようもなく揺さぶり、一気に作品世界に引き込んでいきます。

クイズを通して、過去の記憶と対面していくという展開は、アカデミー賞を受賞した映画「スラムドッグ$ミリオネア」を彷彿とさせる。

しかし、本作は「スラムドッグ$ミリオネア」とは異なり、クイズを一つの<競技>として描くことで、独自の世界観が展開されます。
(「スラムドッグ$ミリオネア」は、出題者と回答者の一対一でしたが、本作では回答者が二人の対戦です)

クイズが競技? と思う方もいるかもしれません。私も、そう思っていました。
しかし、本作を読めば、その考えは根底から覆されるはず。
私自身これまで何となく眺めていただけのクイズ番組の見方が、ガラッと変わりました。

なるほど――クイズは、確かに競技なのです。

序盤の対戦シーンなどは、スポーツの試合を観戦しているかのような、緊迫感と熱に溢れていて、手に汗握ってしまいました。

そして、クイズが競技だからこそ、多くの人がヤラセだと声を上げる中、実際に対戦した三島怜央だけは、フラットな視点で物事を捉え、真相を探ろうとするのです。

単にミステリの設定として、クイズを取り込んだのではなく、必然生を生み出しているのが、本当に凄い!!

物語が進むにつれ、本庄絆のことを追いかけていたはずの三島怜央が、自分自身と向き合っていくことになる展開も、素晴らしく、あまりの面白さにページを捲る手が止まりませんでした。

やがて、三島怜央が辿り着いた真実とは??

結末は是非、皆さんの目で確かめて下さい!!

補足

「スラムドッグ$ミリオネア」
「ぼくと1ルピーの神様」を原作とした2008年のイギリス映画。
スラム街に育った青年が、全問正解したことで不正を疑われるが、潔白を証明する過程で、彼がクイズに正解出来た理由と、その人生とが浮き彫りになっていく。


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