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不安しか感じない夜に安眠する私


新しいことをする時に,なぜまだ何も始まってもいないのにプラスもマイナスも右も左もわからないのに,マイナスのイメージばかりが先行する生き物なんだろうね,人間てやつは.

今週末,東京に戻る.
遠距離の彼氏の家には2週間近く滞在し,遠距離生活になってからの滞在日数を更新した.
イツエの告白を流しながら書こうか.
次に私がここに来る時は,婚姻届を提出しに来る時だ.
祝福と裏腹に感じている不安や焦り,もとより"生き急いでいる"と言われる私の人生はまあ色々あって鬱だの突発性難聴だの自律神経がおかしいだのパニック発作を起こすだの何かと生き辛いとこの3年くらいで痛感した.
高校の頃の抑鬱は嘘のように大学での卒業制作,院試,語学試験,アルバイト,本当に無茶なくらい多忙なことをした.
留学直後,日本に戻ってきてからすぐのことだったし.

案の定体調を崩して生きる意味すら見出せず,復学するかどうか家族会議をしては母に「退学するの?これからハロワにでも行って仕事探す?まだ働ける体じゃないでしょう」と言われ,海外赴任の決まっていた父を説得して「大学院を卒業して修士号とる,でも電車に乗るのは嫌だから下宿したい」ということで大学の近くで下宿して復学した.起こしてくれる人がいなくなった代わりに,リハビリ生活として夏休みからラボに通ってとりあえず何かしていた.
後期になって,授業も始まって,留学して1年落ちていた私は休学で更に1年落ち,学部入学時の2つ下の代の子と同期になった.皆優しくて楽しかった.大学院入学時の同期はM2になっていて,それでも一人で研究室にいた日は夜ご飯一緒にどうっすかって誘ってくれた.

始まりの言葉は,ご飯だった.
そして私は貴方と出会った.
他愛もない,どうでもいいような,そんな話をして,「今ドクターストップだから酒飲めないのー」とか言いながら,貴方が注いでくれたウォッカを飲んでたりして,今日は流星群の極大だと曇り空の下で寒いと身を寄せ合って煙草に火を灯しながら「どうするの,ねえ」って.
「暇?煙草買いに行こ!」も「今いい?(煙草)行かない?」も「今時間ある?買い物に付き合ってよ」も全部我儘だった.

「アヲイさんとは,少しずつ仲良くなりたいです」

その時に感じた,「あ,コイツ何かあるぞ」感は嘘じゃなかった.年に一度発動するかしないかくらいの私の中の鈍い女の勘.
そして早朝に帰った日のラインでその日に初デートすることになって,二日後に付き合って,四半世紀生きて初めて彼氏というものができた.

「君は愛情を知らなさすぎる,私が教えてあげる」
「じゃあ愛情ってやつを俺に教えてくれ,それまで死ぬな」

当時自傷行為をしていた私への貴方の答え.
一度久しぶりに酷いODをして,20時間以上目覚めなかった私をみて,貴方は泣いた.
こんな奴のために泣くなんてと思った.

「本当に死んだら,このまま目が覚めなかったらどうしようかと思った」

私は貴方を傷付けた.
ねえ,この時まで気付かなかったんだよ,馬鹿だねえ,私って.
自傷行為って自分じゃなくて,貴方の心を傷付けていたんだね.
自分勝手だと怒ったね,私に.
そして二人で禁煙もしたね,お酒の量も減った.
私は約束どおりドクターストップということで禁酒して1年以上になる.

貴方はもう社会人.
私は,肩書きとしてはまだ学生.
いわゆる学生結婚だよ.
私に収入がない,貴方はまだ一年目の新入社員.
両家の両親の理解には感謝しているけれど,全てが全て幸せトントン拍子なんてそんなことはなかった.
去年の夏,貴方の内定と共に遠距離は確定したし私の院試合格によって確実になり,今年の4月の研修で配属された貴方の所在地は二人で前から想像していた所よりも更に遠い所だった.
故郷からも都心からも離れた所に一人身を置いて働く貴方と,後輩にまだいるのかと思われながらカウンセリングをして研究しては論文執筆をする私.
生活費や考えなければいけないことは山ほどあるけれど,結婚を前提として付き合っていたし,私は20歳になったら死ぬと決めていた人生を7年も生き永らえ,そろそろ私を必要だと言ってくれた人と協力して新しい道を歩くというイベントを自分にプレゼントしてあげたい.

昨日どうにかするしかない,と腹をくくった後で,貴方が言ったことは今にも泣きそうなくらいに鮮明に覚えている.

「アヲイのために仕事ができることが嬉しい,自分のために仕事をしていたらきっと精神的に持たなかったと思う」

いつも何か特別なことはしなくていい,いてくれるだけでいいと言う貴方にこんなことを言われて私は自惚れてもいいよね,と自問したくらいだ.
母に不安を何度もぶちまけた.
それでも母も不安なんてあって当然,ないほうが困りものと言うくらいなのだから不安なんて皆感じていて,その中でどうにかして生活してるんだ.
皆生きるのに必死なんだ.
だからやるしかない.
私の我儘を受け入れてくれた皆,ありがとう.

私の存在を受け入れてくれてありがとう.
不安は不安,先が見えないからこそ楽しめる気がするの,貴方となら.
冒険の様な人生を,散歩の様にマイペースに,車に抜かされたって気にしないで手を繋いで歩いてたまに寄り道をして行こうね.
道草を食った分だけ私たちは何かを発見できる.議論できる.協力できる.

私に生きてと言ってくれる人がいることを,高校生の時の私は知らないだろう.
人生何が起こるかわからないから.
おはよう,行ってらっしゃい,おかえり,いただきます,おやすみ.
毎日一緒にいられる私たちじゃないから嬉しい言葉たちは案外シンプルなのかもしれない.
好きだよ,愛してる.
ありきたりの言葉だけど私たちにとっては何年後に一緒に住めるかわからないくらいだから,なんでもない日常が一番尊い.
平和であること,貴方が生きていることが嬉しい.

これからも二人で一緒に,ジジババになっても笑いながら手を繋いで歩いて行こうね

それはこれから先もどうぞよろしくと引き換えに誓った言葉でもあるし,私を孤独から救った貴方の言葉.
どうぞこれからも,ずっとよろしくね.

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